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もはや5ナンバーのエンジン車に乗る意味なし? ヒョンデ「インスター」の圧倒的な完成度

APR. 23, 2025 08:00
Text : 御堀直嗣
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ヒョンデ(Hyundai=現代自動車)の最新電気自動車(EV)である「インスター」(INSTER)が発売になった。日本での販売開始は4月10日で、すでに300台を超える先行予約を獲得しているという。価格は284.9万円から357.5万円だ。

  • ヒョンデ「インスター」

    ヒョンデ「インスター」に試乗!

日本では「アイオニック5」(IONIQ5)、「コナ」(KONA)に続くヒョンデのEV第3弾となるインスター。その実力は? さっそく試乗してきた。

待望の5ナンバーEVが韓国から登場

日本にとって待望のEVだ。5ナンバー車であること、人気のSUVであること、そして300万円を切る価格からの販売であることなど、魅力が満載である。

グレードは3種類。「カジュアル」(Casual)が284.9万円、「ヴォヤージュ」(Voyage)が335.5万円、「ラウンジ」(Lounge)が357.5万円だ。今回は最上級のラウンジに試乗した。

結論としてインスターは、もはやエンジン車に乗る意味を失わせる5ナンバー車だった。

  • ヒョンデ「インスター」

    ヒョンデ「インスター」は、5ナンバー車に乗りたい人にはぜひ注目してほしいクルマだ

日本特有の車格設定である「5ナンバー車」の市場占有率は、ヒョンデの説明によると1990年頃のバブル期に89%ほどであったのが、現在は30%ほどに縮小しているという。しかしそれでも、約1/3の消費者は5ナンバー車を愛用しているのである。

それにもかかわらず、これまで5ナンバー車のEVが積極的に開発されてこなかった。日本で手に入る5ナンバーEVには例えばフィアット「500e」があるが、その価格は577万円だ。同じくらいの支出でトヨタ自動車「RAV4」のプラグインハイブリッド車(PHEV)が買えてしまう値段である。

インスターの競合車に見えるBYD「ドルフィン」は小型ハッチバック車で、価格は299.2万円から374万円となっている。競争力はインスターに近いが、実はドルフィンは車幅が1.7mを超える3ナンバー車だ。税制などの面で差がないとはいえ、自宅の車庫はもちろん、月極駐車場や時間貸し駐車場での取り回し、住宅密集地の路地での取り扱いなどで、その差を実感するかもしれない。

ちなみに、最小回転半径はインスターが5.3mであるのに対しドルフィンは5.2mで、小回り性能にそれほど大きな差はない。とはいえ実際には、前後バンパーの角が道路脇の塀に触れるか触れないかといった違いはあるだろう。最小回転半径がドルフィンより10cm大きいインスターだが、車体全長はインスターが3,830mm、ドルフィンが4,290mmとかなりの違いがある。

  • ヒョンデ「インスター」

    こちらはBYD「ドルフィン」。「インスター」のライバルと言えそうだが、こちらは車幅が1.7mを超える3ナンバー車だ

インスターはヒョンデが世界で販売するグローバルEVだが、日本市場への導入に際しては日本の道路環境や交通事情にあった調整を実施したという。そのひとつとして、電動パワーステアリングには、ハンドル操作量が多くなりがちな路地などでの小回りをよくするため、軽くて操作しやすくなるようなチューニングを施しつつ、高速道路での安定性も損なわないよな調整を行っている。また、都市高速道路のカーブで安心できるような姿勢づくりのための微調整にも取り組んだそうだ。

  • ヒョンデ「インスター」
  • ヒョンデ「インスター」
  • ヒョンデ「インスター」
  • 「インスター」のボディサイズは全長3,830mm、全幅1,610mm、全高1,615mm、ホイールベースは2,580mm。車両重量は最も重い「ラウンジ」で1,400kg。写真のボディカラーは「トムボーイカーキ」

ほかには、路面の継ぎ目などを通過する際の衝撃を緩和する対応もなされている。

日本は地震国なので、都市高速を含め、高架や橋などでは舗装道路に金属の継ぎ目が設けられている。そこを通過するとき、どうしても上下の衝撃が起きてしまう。地震が少ない、あるいは地震が滅多に起こらないような国の道路には、そのような継ぎ目がなく、ずっと滑らかな舗装が続くので、日本のような上下振動が起きにくい。

ヒョンデにとって日本は、他の地域に比べて必ずしも販売台数の多い市場ではないにも関わらず、クルマの導入に際して丁寧なローカライズを行う姿勢には感銘を受けた。

5ナンバーなのに車内は広くて快適

試乗したインスターの「ラウンジ」は、ほかのグレードに比べタイヤ寸法がより偏平で、太い接地面を持つ。1.6m以上と背の高いSUVのスタイルは、5ナンバー車で車幅に制限があることを感じさせない堂々とした佇まいだ。

  • ヒョンデ「インスター」
  • ヒョンデ「インスター」
  • モーター出力は「ラウンジ」「ヴォヤージュ」が最高出力115PS、最大トルク147Nm、「カジュアル」が97PS、147Nm

ヒョンデが「ピクセルデザイン」と呼ぶ独特の意匠が目立つターンシグナルランプと丸いヘッドライトの組み合わせは、街中で見てもかなりの存在感がある。写真で見るより全体の造形の調和がよく、親しみやすい雰囲気だ。

  • ヒョンデ「インスター」
  • ヒョンデ「インスター」
  • デザインは独特で目立つ

運転席からの視界はやや高めで、見通しは良好。ダッシュボードのメーターとナビゲーション画面はともに10.25インチの横長で、いずれも視認性がいい。

メーターとナビゲーションに同じ寸法の液晶画面を用いることは原価低減に通じるだろうが、安易に同じ部品を流用しているというガッカリ感はない。むしろ、精緻に作り込まれたダッシュボードという印象だ。そのあたりの調和というか調整の具合に、ヒョンデの手慣れた技を感じた。

  • ヒョンデ「インスター」
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  • ヒョンデ「インスター」
  • 精緻に作り込まれた印象のダッシュボード

  • ヒョンデ「インスター」
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  • ヒョンデ「インスター」
  • メーターとナビ画面は10.25インチ

座席は十分な寸法があり、座り心地や体の支えも十分だ。「ラウンジ」は合成皮革表皮の座席なので、夏場などには熱がこもって蒸れるのではと思いがちなのだが、シートベンチレーション機能が付いているので心配なし。春に乗った感想としては、風量を上げると涼しすぎるほどだった。当然、冬のためのシートヒーターも装備している。(ただし、廉価車種の「カジュアル」にはベンチレーションもヒーターも付かない)。

  • ヒョンデ「インスター」
  • ヒョンデ「インスター」
  • ヒョンデ「インスター」
  • 日本国内の平均乗車人数を考慮し、乗車定員は4人にしたとのこと

  • ヒョンデ「インスター」
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  • 後席の広さと座席の座り心地も良好。背もたれの傾きを調節できるのが嬉しい

  • ヒョンデ「インスター」

    全てのシートをぱたりと前に倒せば広くてフラットな空間が出現する

「ラウンジ」と「ヴォヤージュ」の駆動用バッテリー容量は49kWhで、一充電走行距離は458km(WLTCモード)となっている。400kmを超えていれば、ほぼ充電残量を気にせず使えるだろう。遠出もそれほど不安はないはずだ。

ドライブモードはエコ/ノーマル/スポーツ/スノーの4種類。エコは発進からの出力の出方がやや抑え気味とはいえ、いわれなければ気づかないほど普通に発進できる。スポーツは、そこからのアクセルペダルの踏み込みでやや勢いがよいと感じるが、それほど猛然たる加速をするわけではない。結果、普段はエコモードで運転して何ら不足はないと思う。

  • ヒョンデ「インスター」
  • ヒョンデ「インスター」
  • ヒョンデ「インスター」
  • ドライブモードを変えるとメーターパネルの表示も変わる。好きな表示を選んで固定しておくことも可能だ

回生はハンドル裏のパドルを使って4段階の切り替えが可能。回生ゼロからワンペダル走行が可能な「i-Pedal」まで、かなりきめ細かく調節できる。さらに、右側のパドルを1秒間長押しすると「回生オートモード」となり、前を走るクルマとの車間距離をみながら回生量を自動調整してくれる。前のクルマが止まれば停止までするオートモードは珍しい。

  • ヒョンデ「インスター」
  • ヒョンデ「インスター」
  • ハンドル裏のペダルを引いて回生の強弱を調整する

EVを運転するならワンペダルがおすすめだ。走りながら、より多くの電力を回収できるからだ。ただ、インスターの場合は回生オートモードも魅力的である。前方不注意で前のクルマが目前に迫るような場面でも、クルマが車間距離を調節し、状況に応じて停止までしてくれるので、運転に不慣れな人も安心できる。

乗り心地は、とてもいい。日本市場向けにサスペンションを調整したとのことだが、成果を実感できた。静粛性も高い。

5ナンバー車の中では格が違う

インスターは一般的な5ナンバー車との明らかな車格の違いを感じさせるEVだった。5ナンバー車を買う場合、もはやエンジン車を選ぶ意味がなくなるほどだ。日本には5ナンバー車を切望する声が今なお多い。そういう人たちにEVのよさを存分に実感させるクルマになると思う。

  • ヒョンデ「インスター」

    5ナンバーEVの、あるいは5ナンバー車の決定版と言えるクルマかもしれない

ヒョンデは「ファミリーマート」の一部店舗でインスターの試乗会を実施中。近くのファミマにインスターがやってきたら、ぜひ、その機会に乗ってみるべきだ。

ちなみに「インスター」という車名は、「Innovate」(革新する)と「Intimate」(親密)を掛け合わせた造語であるという。確かにインスターは、21世紀の革新に出会えて親しみも感じさせるEVだった。

  • ヒョンデ「インスター」
  • ヒョンデ「インスター」
  • ヒョンデ「インスター」
  • ボディカラーは全5色、インテリアはブラックとベージュの2色展開

  • ヒョンデ「インスター」
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