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BYD「シーライオン7」はテスラに「勝った」のか - 試乗で確認

APR. 15, 2025 11:00
Text : 御堀直嗣
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電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)を合わせた「電動車」の販売でテスラを抜いた中国のBYD(比亜迪)が、日本導入第4弾となる新型車「シーライオン7」(SEALION 7)を発売した。どんなクルマなのか、さっそく試乗してきた。

いろいろと大変そうなテスラの苦境を受けて、BYDは知名度と販売台数を伸ばすチャンスを迎えている。新型車「シーライオン7」はテスラの売れ筋モデル「モデルY」に近い車種なので、かなり気になる存在だ。

  • BYD「シーライオン7」

    BYD「シーライオン7」に乗った!

テスラより数十万円は安い!

BYDが最初に日本で発売したのはSUVの「ATTO 3」だ。続いて小型車の「ドルフィン」、そして4ドアセダンの「シール」(SEAL=アザラシ)を投入し、第4弾として発売したのがシーライオン7(SEALION=アシカ)である。4ドアセダンのシールをベースに、更なる改良を施したミッドサイズSUVだ。

  • BYD「シーライオン7」

    「シーライオン7」のデザインはBYDデザイン部門の統括責任者であるウォルフガング・エッガー氏が担当。フロントには「海洋シリーズ」の特徴でもある「Ocean X Face」(オーシャン・エックス・フェイス)を採用

  • BYD「シーライオン7」

    「シーライオン7」のボディサイズは全長4,830mm、全幅1,925mm、全高1,620mm。フロントからリアにかけて走る「ダブル・ウエストライン」は「空と海の境界線」を表現している

  • BYD「シーライオン7」

    リアゲートにはダックテール型のリアスポイラーを組み込んだ

競合はずばりテスラといえる。シールはテスラ「モデル3」、シーライオン7は同「モデルY」と争うことになる。車体寸法を比べると、競合関係が明確にわかる。シーライオン7の試乗でも、モデルYとの関係性を思い浮かべないわけにはいかなかった。

  • こちらがテスラ「モデルY」A@BYDテスラ「モデルY」

  • BYDテスラ「モデルY」

    「モデルY」のボディサイズは4,800mm/1,980mm(ミラー格納時)1,625mm

試乗したのは4輪駆動(AWD)と後輪駆動(RWD)の2台だ。シーライオン7にグレードの別はなく、AWDかRWDかのみの選択となる。価格はAWDが572万円、RWDが495万円。モデルYと比較するとAWDが75.6万円安く、RWDは63.7万円安い設定だ。

BYDは2025年4月1日に既存車種の値下げを実行した。具体的に、ドルフィンでは363万円の既存グレードをラインアップから削除し、新たに299.2万円のグレードを追加。航続距離の長い「Long Range」というグレードでは33万円の値引きを実施し、374万円という新価格を設定した。ATTO 3では32万円の値下げを実施している。補助金に頼らなくてもお買い得感のあるEVをそろえようという考え方が、シーライオン7の価格にも表れている。ちなみにシーライオン7を購入する際には、35万円のCEV補助金が受けられる。

十分すぎる走行距離と上質な内外装

シーライオン7の実車と対面し、まず感じたのはカッコいいということだ。単なるSUVというよりも、クロスオーバー的で洗練されたスタイルである。ことに、クーペのような屋根の処理をした車体後方の造形が、カッコよさをいっそう実感させるのだろう。

  • BYD「シーライオン7」
  • BYD「シーライオン7」
  • BYD「シーライオン7」
  • BYD「シーライオン7」

    なんといってもカッコよさは重要だ

外板の精緻な作り込みからは上質さを感じた。BYDは15年前から、群馬県にある日本の金型製造会社をグループに加え、職人技を活用してきた。その技術はシーライオン7からも見て取れる。

室内は4ドアセダンのシールとほぼ共通だ。内装色の選択肢は「タウマスブラック」と名付けられた黒系1色である。

  • BYD「シーライオン7」

    15.6インチの回転式マルチタッチスクリーンをメインに据えたインターフェイス

  • BYD「シーライオン7」

    内装は「タウマスブラック」1色のみ

  • BYD「シーライオン7」

一充電走行距離(WLTCモード)はAWDが540km、RWDが590km。一般に300kmほど走れればほぼ実用の範囲にあるので、500km以上走れるならゆとりある距離といえる。もはや、充電残量を気にしてメーターを見ることはほぼないだろう。この点においてもモデルYと同等の水準か、RWDではそれ以上の能力を備える。

車体寸法(車格)とEVとしての移動距離という点で、シーライオン7は業界を牽引するテスラのモデルYに追い付いているといえる。

シーライオン7はEVらしい走りが楽しめるSUV

いよいよ試運転だ。フロントウィンドウとフロントサイドウィンドウに防音ガラスを採用しているというシーライオン7は静粛性に優れる。上級車種として十分な室内環境だ。

発進からの加速はアクセルペダルの操作に的確で、よどみなく速度を上げていく。これがEV最大の魅力だ。いくら応答性がよいといっても、もはやエンジン車の比ではない。ハイブリッド車もモーター発進は可能だが、走りだすと間もなくエンジンが始動することになり、静粛性が破られる。静かで的確な加速は、一度経験すればやめられないEV最大の特徴といえる。

EVではエンジン音を楽しめないという人もいる。しかしそれも、よほどの性能を持ったスポーツカーと比べた場合の話なのではないだろうか。近年のエンジンは、いずれも燃費向上のため熱効率を重視するので、音色がよいとはいい難い。

シーライオン7はECO/ノーマル/スポーツ/スノー(雪)からドライブモードを選べるが、ECOモードで十分な応答と加速を得られる。AWDなら前輪もモーターで駆動してくれる。RWDは発進直後にやや遅れを覚えさせるところがあるが、ノーマルモードならなんら不足はない。スポーツモードは、アクセルペダルを踏み込んでからさらに踏み増すような場面で、よりすばやく加速を立ち上げる。だが、日常的にはほぼ使う機会はないだろう。

  • BYD「シーライオン7」
  • BYD「シーライオン7」
  • BYD「シーライオン7」

    普段の運転はECOモードで十分

EVらしい特徴として、シーライオン7はアクセルペダルを戻す際に回生が働いて減速度がかかるのだが、BYDは車種を問わず回生効果を抑え気味にしている。シーライオン7も同様だ。将来的にユーザーがEVに慣れてくれば、アクセルのワンペダルで速度を調節し、停止までできる機能の充実に期待が高まるだろう。そこは、EV専業メーカーとして一日の長があるテスラが先んじている。

気になる点もあったが熟成に期待

シーライオン7で気になったのは、車体の揺れが収まりにくいことだ。舗装路の継ぎ目のような段差の乗り越えでは衝撃をいなすサスペンションの働きを感じたが、そのあと、一度揺れた車体の収まりがつきにくく、揺れが長く続く。

床下のリチウムイオンバッテリーケースをフレームと一体構造とする機構や、減衰力を可変で行うダンパーの採用、そして欧州で名の通ったメーカーのタイヤを装着するなど、技術は一流と肩を並べる先端にある。しかし、それらを組み合わせたときの調和、熟成に、まだ改善の余地があるようだ。そこは、これからの伸び代に期待したい。

  • BYD「シーライオン7」

    ボディカラーは4色展開。左から「コスモスブラック」「アトランティスグレー」「シャークグレー」「オーロラホワイト」

とはいえ、1995年にバッテリーメーカーとして創業し、2003年に自動車事業に参入してからまだ22年しか経たないBYDの新型車が、日・米・欧・韓の自動車メーカーのEVと肩を並べるか、あるいはそれらを上回るほどの商品性を備え、なおかつ上級車種として魅力ある仕上がりとなっている事実は、脅威としかいいようがない。このクルマを手の届く価格設定で発売できるのは、「ガラスとタイヤ以外はすべて自社で作れる」とさえ語るBYDの底力だろう。

時間が経てばシーライオン7の熟成も進むことだろう。そのとき、他社はBYDに追い付けるだろうか。テスラやヒョンデ、そしてメルセデス・ベンツ以外は、難しい気がする。

そのうえで、BYDがテスラより優れているのは、「VtoH」(ヴィークル・トゥ・ホーム)や「VtoL」(ヴィークル・トゥ・ロード=電気製品を使える)に対応していることだ。これこそ、EVを所有する大きな理由のひとつになる。

いずれにしても、印象深いシーライオン7の試乗体験であった。

  • BYD「シーライオン7」
  • BYD「シーライオン7」
  • BYD「シーライオン7」
  • BYD「シーライオン7」
  • BYD「シーライオン7」
  • BYD「シーライオン7」
  • BYD「シーライオン7」
  • BYD「シーライオン7」
  • BYD「シーライオン7」
  • BYD「シーライオン7」
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