Googleの自動運転プロジェクトをルーツに持つ自動運転タクシーの「ウェイモ」が日本にやってきた。アメリカでは無人のタクシーが実際に客を乗せて走っているが、今後は日本でも乗れるようになるのか。日本上陸の狙いを探るべく、ウェイモ車両の実物を見に行ってきた。
ウェイモってどんな会社?
タクシー配車アプリでおなじみの「GO」、米Alphabet(アルファベット)傘下の自動運転タクシー大手「Waymo」(ウェイモ)、タクシー会社最大手の日本交通の3社は4月10日、東京都心で自動運転タクシーの実現可能性を探るテストに使用する「Waymo」車両を報道陣に公開した。
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高輪ゲートウェイ駅にほど近い「Gateway Park」で開催されたウェイモ車両の初公開イベント。右から東日本旅客鉄道の喜㔟陽一社長、日本交通取締役/GO会長の川鍋一朗氏、Waymo開発部門責任者のニコール・ガベル氏、日本交通の若林泰治社長、GOの中島宏社長
「Waymo」は2009年にGoogleがスタートさせた自動運転プロジェクトがルーツだ。独自開発したセルフドライビングカーや自動運転専用のトヨタ自動車「プリウス」などを使用して、ネバダ州やカリフォルニア州で公道走行実験を開始。2016年にはGoogleの持株会社であるAlphabetの子会社となり、“a new way forward in mobility”(モビリティの新たな進路)を略した「Waymo」に社名を改称し、アリゾナ州フェニックスなどで米国初の自動運転タクシー事業「Waymo One」を展開している。
公道走行とシミュレーションによる大量のテスト記録をAI計算プラットフォームと機械学習で分析・蓄積・開発した自動運転技術と、実際の車両に搭載したセンサーを活用したドライバーレスの完全自動運転ロボタクシーは、現在ではカリフォルニア州のサンフランシスコやロサンゼルス、テキサス州オースティンなどでサービスを実施中。500万回超の完全自動運転と週20万回を超える運行サービスを提供している。2026年にはフロリダ州マイアミやジョージア州アトランタでも運用を開始するそうだ。
現在稼働中のレベル4自動運転システムは第5世代の「Waymo Driver」だが、今後はさらに性能がアップし、厳しい環境でも正確なナビゲーションが行える第6世代に移行予定だという。
日本を走るウェイモ車両の詳細は?
日本で公開された車両は電気自動車(EV)のジャガー「I-PACE」をベースとするテストカー。ルーフトップに大型の360°LiDAR(ライダー)や長距離カメラを搭載するほか、フロントのグリルと左右フェンダー(右フェンダー用の小型バックミラーは日本独自のもの)、リアのセンターと左右フェンダーにライダーやレーダー、カメラなど各種センサー類を搭載している。米国以外でこの車両が走行するのは今回が初めてとなる。
来週から、日本交通の訓練されたドライバーが搭乗し、東京都内の港区、新宿区、渋谷区、千代田区、中央区、品川区、江東区の7つの区をステアリングを操作しながら走行し、日本ならではの交通ルールや走行パターン、標識などの道路状況を学習するとともに、詳細な地図データの獲得も行うという。現時点ではそこからのスタートとなり、実際の自動運転タクシー導入の時期については「未定」とのことだ。
日本の社会課題解決につながる?
日本交通取締役/GO会長の川鍋一朗氏は、「今から1年半ほど前の2023年8月に、米国ですごいものが走っていると聞いて、一応、その道のプロなので、どんなものかと思って乗ったのが初めてでした。呼び出して乗り込むと、運転席に誰もいないクルマがハンドルを動かして走りだして、もう3回も乗りました。“穴”を探しましたが全く見つからず、その瞬間に、これは絶対、日本の未来のため、少子高齢化や移動の足の確保になると確信しました。米国ではすでに、これが日常生活になっていますが、日本ではまず、絶対の安全性を持ってデータを取るところから始め、一歩一歩進んでまいります」と挨拶した。
また、Waymo開発部門責任者のニコール・ガベル氏は、「Waymoは世界で最も信頼されるドライバーになることを使命としており、2020年に世界で初めての完全自動運転有料乗車サービスを開始しました。日本での取り組み開始は社にとって歴史的第一歩で、次世代モビリティソリューションを受け入れる日本の先進性を示すものです」とコメントした。
自動運転タクシーが実現した時の利用環境を考えてみると、アプリでクルマを簡単に呼び出せたり、目的地をあれこれドライバーに伝える必要がなかったり、ドライバーがいない完全プライベート空間が楽しめたりというメリットは大きい。料金も通常のタクシーと変わりはないというので、公共交通網の衰退が伝えられる過疎地などでの利用についても期待大だ。
日本では法制度的な問題があるが、3社は関連省庁や警察、自治体などと進捗状況に合わせてきめ細かく連携し、開発を進めていくという。このためWaymoは、日本での自動運転技術の運用に向けた導入と検証を開始し、日本交通はWaymo車両の運用と整備、GOはプロジェクトの推進と社会受容性の向上をサポートしていくとした。