今回はXC90の最上位グレード「Ultra T8 AWD plug-in hybrid」に乗って、完成度を確かめた。
見た目と使い勝手を大幅に向上
「XC90」は初代モデルが2002年に登場したボルボのフラッグシップSUV。現行型は2014年に登場(日本には2016年に導入)した2世代目だ。ボルボというとステーションワゴンのイメージが強いが、今ではSUVの方が売れ筋になっているという。
マイナーチェンジで大きく変わったのがフロントフェイスだ。「トールハンマー」を模したT字型のヘッドライトデザインがシャープで精悍な印象を与えている。このマトリックスLEDライトテクノロジーは左右に幅広く伸びていて、外からの視認性も抜群。遠くにいてもクルマを認識できるばかりか、すぐにボルボだと判別できるほどアイコニックな部分になっている。フロントグリルも若干大きくなって存在感が増し、高級車らしい顔つきにブラッシュアップされた。
ユーザーエクスペリエンスの向上が図られている点も、XC90の魅力をさらに高めている。センターディスプレイは9インチから11.2インチに大型化し、視認性が向上した。ドライブモードを変更する場合、これまでは何度かタッチ操作をしないと変えられなかったのだが、改良モデルではワンタッチで変更可能となっている。
Google搭載のインフォテインメントシステムは使いやすい。GoogleマップやGoogleアシスタントなど、使い慣れたアプリがクルマでも使える。音声認識はスマホの使用感とほぼ一緒。道路情報はいつでも最新だ。Googleマップは地下に入ってしまうと現在地を見失ってしまうというデメリットはあるが、システム全体の操作性のよさは大いに評価できる。直感的かつシームレスな操作が可能だ。
PHEVは最良の選択肢?
エンジンを始動して走り出すと、大きいながらも運転がしやすいことに驚いた。インパネ越しにクルマの厚みを感じたが、特に左前方の視認性がそれほど悪くはない。おそらく、水平基調のフロントガラスと太すぎないピラーのバランスがとれているのだと思う。着座位置もそれなりに高いため、視認性のよさにつながっている。
マイナーチェンジ前のPHEVモデルの場合、わずかな勾配の坂道でも、アクセルを踏むとすぐにエンジンがかかっていた。しかし新型は、できるだけエンジンがかからないように見直されているそうだ。ドライブモードは「Hybrid」「Power」「Pure」「Off-road」「AWD」から選べるが、Hybridでの走行中、高速道路に合流するためアクセルを踏み込んでもエンジンはかからず、電気の力で一瞬にして100km/hまで加速できた。もちろん「Power」にすれば、心地よいエンジンサウンドとともにパワフルな加速も体感できる。
電気自動車(EV)が失速しているといわれて久しいが、排出ガスを抑えられる、給油しなくてもいい、電気ならではの加速感が得られるなど、EVにはさまざまなメリットがあって、一概にダメとは言い切れない。ただ、ガソリン燃料を一切使用しない完全なEVに、今すぐ乗り換えることには抵抗があるというオーナーも多いはずだ。
そうした不安を抱えるオーナーにこそ、PHEVがオススメできる。市街地や短時間のドライブであれば電気のみで走行できるうえ、長距離ドライブなど必要に応じてガソリンでも走行できる。つまりPHEVは、EVの入門的なモデルであると同時に、ガソリンと電気の両方の魅力を兼ね備えたモデルともいえる。XC90のPHEVはEV航続距離(電気だけで走れる距離)が73km、エンジンも組み合わせた航続距離は900km以上だ。
万が一事故に遭っても、バッテリーから発火しないような安全対策が施されているという。EVの懸念点を可能な限り払拭しているというわけだ。
自宅でクルマを充電できるのであれば、現時点のクルマ選びで最良の選択肢はPHEVだと断言したい。PHEVは今後、市場の覇権を握っていく存在になるかもしれない。最新ボルボに乗ってそう感じた。