2025年2月には銀座の東急プラザビルを香港系ファンドが購入するなど、海外の企業や投資家、富裕層による日本の不動産購入が盛んになっている昨今。いまや彼らの注目する地域は、価格高騰により割安感が薄れている"東京"以外にも広がっているようで……?
今回は海外富裕層に国内不動産の仲介などを手がけているProperty Access株式会社・風戸裕樹社長へインタビュー。海外、特に同社の顧客の多くを占めるアジア圏富裕層が、日本の不動産に感じている魅力、好みの地域・物件の特徴などをお聞きしました。
日本の不動産、購入理由は"有事の際の資産逃避目的"も
――海外富裕層による国内不動産が話題になることが多くなりました。御社は主にアジアの富裕層に国内不動産の購入仲介などを手掛けていますが、実際にどのような国の方が日本の不動産を購入しているのでしょうか?
当社は日本・韓国・フィリピン・シンガポールに拠点を置き事業を展開しています。中国人の国内不動産投資が話題となることもありますが、当社は拠点の関係もあり中国人向けの斡旋はほとんど手掛けていません。当社の顧客は韓国とフィリピンが各4割、残りがシンガポールや台湾を含む東南アジアの方々です。
――アジアの富裕層はどのような目的で日本の不動産を購入するのでしょうか?
国によって異なります。フィリピンなどの富裕層は、セカンドホームとして購入する方が多いです。特に新興国から見ると日本は"憧れの国"なので、ある種スーパーカーを所有するようなイメージで不動産を購入します。
一方で他の国の方は投資目的が多いです。ただし台湾の方は、有事の際の資産逃避目的で日本の不動産を購入するケースが非常に多く、また過去はほとんどが投資目的だった韓国の方も政変後は同様の傾向が若干見られます。
"富士山ブランド"は不動産でも強み
――具体的にはどの地域の物件を購入されるのでしょうか?
やはり東京です。5割が東京、3割が近畿(京都、大阪)、2割が九州(福岡・熊本)というイメージです。ただし近年の国内不動産価格の上昇もあり、東京の比率は徐々に下がっており、それに呼応する形で大阪が増えています。また購入物件はマンションが多いものの、戸建てもあります。
東京の人気エリアはいわゆる「3A」(青山、麻布、赤坂)、そして六本木。インターナショナルスクールもありますし、英語が通じやすく、外国人にとってなじみのあるエリアです。
それ以外ですと銀座に近く再開発も進む「築地」、代々木公園に近い「代々木上原」が人気です。
地方に移ると、例えば大阪では、西成の物件に人気があります。難波へのアクセスの良さの割に、利回りのよい物件が多いからです。また近畿では、京都の町屋物件が人気です。今や町屋の物件のほとんどが外国人の所有ではないでしょうか。
九州では特に韓国の方が、地理的な近さもあり福岡の物件を買われます。
TSMCの進出にともない、熊本も急速に注目を集めましたが、最近は少し下火となりつつあります。
――今後注目のエリアはありますか?
一つは「妙高高原」です。不動産投資ファンド「ペイシャンス・キャピタル・グループ」のCEOで、投資家のケン・チャン氏による大型開発が進められており、ここに個人投資家も流れ込む、という構図になります。"第二の白馬"とも言えるでしょう。
もう一つは、河口湖や山中湖など、富士山を眺めることのできるエリアです。スキーだけが日本の資産ではありません。やっぱり、富士山ブランドは強いんですよ。ここに別荘を持ちたいというニーズが増えてくると思いますし、既に河口湖の物件価格はかなり上がってきていますね。
また「那須高原」も注目しています。避暑地として有名な「軽井沢」と比べると割安感があるうえに、天皇陛下の御用邸がありエリアのイメージも良い。別荘地なので、民泊できる物件も多く、人気となっています。
風戸裕樹 / Property Access株式会社 代表取締役 創業者
不動産投資ファンド等の経験を経て2010年不動産仲介透明化フォーラム(FCT社)設立。米国型エージェントサービス「売却のミカタ」を開始し全国展開。2014年不動産テック企業であるソニー不動産(現SREホールディングス/東証プライム)を共同創業しFCT社を売却。ソニー不動産執行役員として不動産部門の責任者を務めながら、ヤフーとの業務資本提携や個人間売買プラットフォーム「おうちダイレクト」の開発を行った。退任後はクロスボーダー不動産ビジネスに興味を持ちシンガポールに移住し当社をシーラ・ベイロンと創業。不動産ビジネス分野(投資、取引、テクノロジー)に幅広い経験と実績を持つ。個人のミッションは「次世代のために不動産取引を透明化してクリーンでクールな業界にする」。早稲田大学商学部卒。
著書
「なぜ富裕層は海外不動産に投資するのか 本気で資産を増やしたい人の最終手段」
「失敗しない海外不動産投資 富裕層がフィリピンに注目する理由」
「不動産売却の教科書」ほか