米トランプ大統領の就任、日銀のさらなる追加利上げの予想など、金利上昇の機運が高まる昨今。住宅ローン金利の上昇も見込まれ、一般層向け中古マンション価格は"天井"の様相を呈しています。一方活気があるのが湾岸タワーマンションの市場、物件価格の上昇は収まる気配がありません。
一般向け中古マンション価格は天井
東京都23区内の大部分を占める9000万円以下の中古マンション(一般所得層向けマンション)の成約坪単価の推移は、2024年以降横ばいもしくは下降傾向が見られます。このことは、高騰し過ぎた中古マンション価格が、消費者にとって既に限界に達していることを示しています。
さらにここにきて、住宅ローン金利が上昇すれば、その分家計負担も大きくなり、購入需要が減少するため、今後はマンション価格を下げざるを得なくなるでしょう。
いまだ高騰し続ける富裕層向けマンション
一方、9000万円以上の中古マンション価格は、9000万円以下の中古マンションとは対照的に、右肩上がりで上昇しています。9000万円以上の物件を購入できる、いわゆる富裕層は、住宅ローン金利上昇の影響を考えても、まだまだ購入に対する余力があるように思えます。
異常な様相を呈している湾岸タワーマンション
さらに異常な様相を呈しているのが、湾岸タワーマンションです。
2023年1月~2024年11月の期間、湾岸タワーマンションと東京23区内の9000万円以上・中古マンションの平均成約坪単価を比較してみました。すると、東京23区のマンションは価格推移が比較的なだらかなのに対し、湾岸タワーマンションの成約坪単価は急激に高騰していることがわかります。
2023年1月に400万円台だったのが2024年7月には700万円台に達する勢いで上昇、2024年11月には600万円弱まで下がりますが、それでも異常な高騰ぶりと言えるでしょう。
成約単価は都心5区超えに
さらに2024年6月以降は、東京都23区内でも最も価格が高騰している都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)の中古マンションよりも、湾岸エリアの中古タワーマンションの方が成約坪単価が高くなっています。湾岸タワーマンションは高額かついまだに大きく高騰しているのです。
投機市場化する湾岸タワーマンション
マンションの価格は通常、直近の成約価格に現行のトレンドを加味することで決まってきます。しかし、具体例として代表的な湾岸タワーマンション「パークタワー晴海」の成約坪単価の推移をプロットしてみると、2022年後半以降、通常の価格上昇の流れを逸脱し、大きく上に振れる形で高騰していました。通常の価格決定方法のセオリーを逸脱しても、高額で取引ができるという期待感によって生じた現象でしょう。
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「パークタワー晴海:各居室成約坪単価」通常は、赤い点線で示した近似曲線周辺に成約坪単価がプロットされていくが、パークタワー晴海では、2022年後半以降近似曲線より大きく上に振れる形でプロットされている。
この期待感を持った取引が頻発することで、短期で差益を稼ぐという投機的行動が誘発されていると思われます。昨今、湾岸エリアでは今回具体例として挙げた「パークタワー晴海」のようなタワーマンションが散見されるようになり、湾岸タワーマンションは投機市場化の様相を呈していると言えます。