以前から「早く日本に入ってこないかな!」の声が上がっていたスズキ「ジムニー」の5ドアバージョンが、ついにやってくる。日本発売は2025年4月3日。車名は「ジムニーノマド」(ノマド=NOMADE)となる。価格は5速MTが265.1万円、4速ATが275万円だ。どんなクルマなのか、実物を見てスズキに話を聞いてきた。
待ち望まれていた5ドアのジムニー
「ジムニー」は1970年に発売となったスズキのSUV。これまでに世界199の国と地域で累計349万台が売れている超人気モデルだ。現行型は2018年7月に発売となった4代目モデル。日本には軽自動車の「ジムニー」と小型車の「ジムニーシエラ」があり、海外では「ジムニーシエラ」を「ジムニー」の名前で販売している。
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「ジムニーノマド」(写真)の全長は「ジムニーシエラ」より340mm長い3,890mm、全幅はシエラと同じ1,645mm、全高はシエラより5mm低い1,725mmだ。インドのグルガオン工場で生産し、日本に輸入する形になる。シエラとの外観上の違いとして、ノマドはフロントグリルの「5スロット」がガンメタリック塗装となり、クロームメッキで縁取りされている
スズキは2023年1月の「Auto Expo 2023」(デリーモーターショー2023、インドで開催)で5ドアのジムニーを発表。同年から海外では販売を始めている。これを受けて日本でも、「ほしい!」「いつ日本に入ってくるの?」といった声が聞かれるようになっていた。もっといえば、スズキに聞くところによると、2代目ジムニー、3代目ジムニーの時代にも、「これの5ドアがあればいいのにね」といった声は届いていたという。ジムニーノマドは数十年越しの「待望の1台」ということになる。
「ノマド」(NOMADE)は「遊牧民」の意味。「多くの荷物を運び、移動に対する自由性を持つ」ということで命名した。初代「エスクード」のロングボディ5ドアモデル「エスクード ノマド」から名前を受け継いだという側面もあるそうだ。海外では単純にジムニーの「5ドア」と呼ばれていて、ノマドを名乗るのは日本市場のみだ
ジムニーは3ドア(車体左右に1枚ずつと車体後部に荷室用の1枚)のクルマとして歴史を重ねてきたが、現行モデル(4世代目)で史上初の5ドア(車体左右に2枚ずつと後部に1枚)モデルが登場した。リア(後席)に直接アクセスできるドアが増えることで、後席に乗る場合も荷物を置く場合も当然ながら使い勝手が大幅に向上する。スズキの表現を借りれば、「シエラは2+2シーター、ノマドは4シーター」というほどキャラが違う。
5ドアのノマドはジムニー/ジムニーシエラに比べ車内空間も荷室も広い。リアシートも厚みが増した5ドア専用で、座り心地が向上している。後席を使う頻度が高い人にジムニーをオススメするならノマド一択といった感じだ。
これらの特徴から、ノマドはジムニー/ジムニーシエラに比べ、より乗用車としての商品性が増し、間口の広い(乗る人を選ばない)クルマになっていると言えそうだ。スズキによれば、ジムニーシエラの開発ターゲットが「プロユーザーのお客様」であったのに対し、ノマドではプロユーザーに加え「ジムニーの性能を日常生活で必要とするお客様」もターゲットに含めたという。無理せず乗れそうなジムニーノマドには、これまで本格四駆に乗ったことのない人でも購入を検討できそうな身近さがある。
「ジムニーノマド」は「ジムニーシエラ」に比べて全長とホイールベースが340mm伸びて3,890mmとなっている。悪路走破性とデザインの観点から延長幅は必要最低限に抑えたとのこと。オフロード性能に関係する「3アングル」はシエラとほぼ同等。アプローチアングル36度とデパーチャーアングル47度はシエラと全く同じで、ランプブレークオーバーアングルはシエラが28度、ノマドは25度になっている。最低地上高はどちらも210mmだ
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「ジムニーノマド」の開発ではジムニーシリーズの特徴である「ラダーフレーム」を新作。「ジムニーシエラ」のオフロード性能を継承しつつ、車両全長拡大と重量増への対策を施してある。具体的には、ラダーフレームのセンターフレームを延長し、センタークロスメンバーを追加。オートマチックトランスミッション(AT)は各構成要素の強度を高めた。フロントブレーキには放熱効果の高いベンチレーテッドディスクを採用。プロペラシャフトは後部の長さと直径を拡大、サスペンションはフロントのコイルのばね定数を調整し、ショックアブソーバーの減衰特性を最適化した
後席と荷室の詳細を確認!
シエラに比べてノマドの後席は上級感や居住性が向上し、荷室は広さや使い勝手がグレードアップしている。
後席のリアウインドウ周辺はシエラがトリムレス(鉄板むき出し)だったのに対し、ノマドではクォータートリムを導入して快適性を向上させた。トリムを張ったことにより、車内の静粛性もレベルアップしている。
シエラはシートを倒すと荷室がフラットになる仕様なので、後席は小ぶりな作りだ。一方のノマドは後席の座り心地を考慮し、厚みの増したシートを採用している。後席は1段階だけだがリクライニングも可能。細かい話だが、通常時(リクライニングをしていないとき)でもシエラに比べシートバック(背もたれ)の角度を2度寝かせてあるとのことだった。
荷室の床はシエラが樹脂、ノマドがカーペット。床面はシエラのようにフラットにできないが、アクセサリーでノマドの荷室床面をフラットにできる「荷室ボックス」を用意するそうだ。
全長の延長幅は「リアドアが成立するギリギリ」のところで抑えたというのがスズキの説明だが、リアドアの乗降性にはかなりこだわったらしい。人が乗り降りする際にひざやふくらはぎがぶつかりがちな場所を面取りしたり、シートの角をそぎ落としたりすることで「足抜け」の改善を図ったという。
ジムニーの見た目やキャラは好きなんだけど、3ドアだと何かと不便そうだし、そもそも自分はジムニーに乗るほど「コアなクルマ好き」ではないし……。こんな風に思っている人でも、ジムニーノマドなら手が出しやすそうだ。ノマドなら、小型SUVのひとつとして多くのユーザーに訴求できるだろう。話を聞いたスズキ 商品企画本部 四輪デザイン部 デザイン企画課 主幹の松島久記さんは、ジムニーノマドが「ジムニーに興味はあるけど手を出しづらいと思っていたお客様にも訴求して、ジムニーの世界のすそ野を広げるような存在になれば」と話していた。