テスラが売れ筋のSUV型EV(電気自動車)「モデルY」を大幅に改良して日本で発売した。横一文字のヘッドライトを新たに採用した見た目も大きく変わっているが、実車を確認すると装備面もグッと進化しているようだ。具体的にどう変わったのかをレポートしたい。
モデルYはテスラで最も売れるクルマ?
モデルYは2019年の発売から5年が経過したクルマだ。2023年には世界で120万台を超える台数を販売し、ひとつの車種として世界一の販売台数を記録した。
こうした記録は、かつての例では1920年代のフォード「T型」、1950~1960年代のフォルクスワーゲン「ビートル」、そしてトヨタ自動車の歴代「カローラ」など「大衆車」と呼ばれる市販車が達成してきた歴史がある。テスラにおいても、「モデル3」から始まる量産車種投入戦略が名実ともに成果をあげたといえる。しかも、電気自動車(EV)としては初めてという快挙でもある。
ちなみに、テスラが日本市場に導入しているクルマで最も販売台数が多いのはモデルYだ。モデルYとモデル3で販売台数の大半を占めるという。
見た目の変化をじっくり確認
新しいモデルYの注目すべき点は以下の3つだ。
サイバーデザイン
コンフォート
エフィシェンシー
今回、日本市場で初公開となった新しいモデルYは、これまでと顔つきが全く異なる。後ろ姿も別ものだ。ただ、横から見ると、従来通りのモデルYであることを知ることができ、全てを一新した新型ではないことがわかる。それでも、クルマの前後の造形が新しくなったことで、街で見かけた際には新型車と見間違うかもしれない。
この外観をテスラは「サイバーデザイン」と呼ぶ。米国で販売している「サイバートラック」や2026年に発売予定の「サイバーキャブ」(これまではロボタクシーと紹介されてきた)に通じる、テスラの新たなデザインの方向性を反映した姿だ。
後ろ姿も新しい。従来とは異なり、リアゲートには横一文字のテールランプを装着。このライト、市販量産車としては初めて「拡散反射技術」を採用しているという。拡散反射とは、光源が表からは見えず、間接照明のような光り方をする技術。今回は昼間に実車を見たのでわかりにくかったが、夜間に見ると幻想的な雰囲気があるとのことだ。
横一文字のテールライトに合わせて、リアゲートの造形も滑らかになった。ナンバープレートはリアゲート下に取り付けることになるだろう。
そのほか、小さな変更だがドアミラーの外観形状が変わっている。
これらの新しい造形の導入により、空気抵抗が減り、空気抵抗係数は従来のCd0.23から0.22に改善。前後の揚力配分が変わり、後ろにより多くのダウンフォースを与えられるようになった。
空力改善の効果として、走行中の安定性が向上している。それに合わせてサスペンションを見直し、振動吸収を51%引き上げたことで、乗り心地に新たな価値をもたらしたそうだ。
さらには、走行中の静粛性も高まったとのこと。静粛性の向上には追加の遮音材のほか、形状を変更したドアミラーなど外観変更の効果もあるだろう。
操作性は変わった?
室内は、先にモデル3で導入し始めているアンビエントライトを採用したほか、フロントシートには夏季に着座しても涼しさを感じられる「ベンチレーション」を搭載。後席は座面が1.5cm長くなり、より落ち着いて腰掛けられるようになったほか、電動のリクライニング機構も追加となった。
テスラ車の特徴である屋根のガラスは遮熱効果が26%向上。快適性向上と上空の景色の見晴らしとの両立が、さらに一歩前進した。
操作性の面では、モデル3と同じくシフトレバーが廃止となった。シフトチェンジはナビゲーション画面上のタッチ操作で行う。一方で、ウインカーレバーは残されたようだ。ちなみにモデル3では、ハンドルスポーク部のボタンスイッチでウインカーを操作する。
それから、後席側のコンソールボックス後端には8インチのタッチスクリーンを新設した。
荷室についてはフロントトランク(テスラではフランクと呼ぶ)に水抜きの栓を設けることで、水気を含んだ物を置いても排水できるよう改良した。これで用途が広がるだろう。床の樹脂に新設された凹凸には仕切り板をはめこむことができる。そうすると荷物の仕分けが容易になる。
安全性に関してはフロントバンパー下にブラインドスポットモニターの役割を果たすカメラが追加となった。
価格は後輪駆動の「RWD」が595万円、4輪駆動で一充電走行距離の長い「ロングレンジ」が683.9万円。新しいモデルYは2月1日まで「テスラ新宿」で展示中だ。受注は1月10日に始まっている。
今回は「フルモデルチェンジ」ではないが、見た目が大きく変わり、機能を含め内容も進化を遂げている。これまでのモデルYから乗り換える上でも十分な魅力を備えていると感じた。
余談だが、テスラはこれまでのモデルYの在庫車購入に際し、スーパーチャージャーによる急速充電を5年間無料とするキャンペーンを実施している。今回、このキャンペーンの対象にモデル3も加えるという発表があった。
テスラは「充電インフラも車両性能の一部である」としている。充電性能や充電のしやすさなど、使い勝手でなおEV界の先頭にあるテスラにとって、充電インフラは重要な商品性のひとつだ。