新型コロナウイルス感染拡大防止のため、大手企業からスタートアップ企業まで導入が広がった「テレワーク」。

今後も在宅での仕事が推奨される現代において、私たちの働き方は、業務内容・雇用形態・オフィス環境などのさまざまな要素が「ニューノーマル(新常態)」へシフトしつつあります。

しかし社内体制整備やシステム構築コストなどの問題で、導入・運用がうまくいっていない企業が多いのも事実。そんな中、社内ニーズからコミュニケーションサービスを自社で開発し、成果を挙げている企業がありました。

大手電機メーカー「シャープ」の子会社「AIoTクラウドです。

数多のコミュニケーションサービスがある中で、同社はなぜ自社開発に踏み切ったのか。そこには、シャープグループに根づく“シャープ魂”がありました。

ビジネスチャットとビデオ会議がシームレスに融合!「LINC Biz (リンクビズ)」とは

今回お話をうかがったのは、ビジネスコミュニケーションサービス「LINC Bizのエンジニアである荻野さんと井上さん。荻野さんはシャープのスマホ初号機も手がけたベテランで、井上さんは入社2年目の期待のホープです。

  • クラウドソリューション事業部 クラウド開発部に所属する荻野正徳さん(右)と井上慶隆さん(中央)。取材もLINC Bizで行いました。

  • リモートでの取材だったので、オフィスでのお2人の様子も写真で撮って送ってもらいました。

そんな2人が開発に携わるLINC Biz最大の特徴は、ビジネスチャットとビデオ会議がシームレスに融合している点。チャット中にワンクリックでビデオ会議を始められる手軽さや、会議中に画面共有される資料に直接書き込める利便性などが大きな魅力となっています。

  • LINC Biz chat(左)とLINC Biz meeting(右)の会議画面

元々は社内のニーズを背景に誕生したというLINC Bizですが、そのきっかけはエンジニアたちの日常の“ある困り事”にありました

「LINC Biz」開発のきっかけは?情報共有の活性化とコストメリットに貢献

エンジニアにとっては“あるある”だと思いますが、 携帯電話やスマホを開発していた頃は、ビルドエラー通知やチェック依頼のメールが1日に100通以上届いていたんです。

メール返信作業の負荷をどうにか減らせないものか?と考えていました。

なんとか業務改善を図らなければならない――。そんな状況下で導入されたのが外部のビジネスチャットツールでした。

コミュニケーションのスタイルを変更したことで、返信にかかる工数は大幅に軽減。しかし、すぐに新たな課題に直面したといいます。

チャット利用の増加に伴い、フリープランの上限に達してしまったんです。

それに加え、社内システムとの連携がスムーズにいかないことや、チャットとビデオ会議で議論が分断されることにも使い勝手の悪さを感じていました。

たとえ1アカウントあたり数百円の出費とはいえ、企業規模が大きければ、そこにかかるコストは膨大。また、それだけの費用をかけて業務効率化が思うように進まなければ本末転倒になってしまいます。

コストを抑えつつ、仕事のパフォーマンスを上げるツールは無いものか……。そう思考を巡らせ荻野さんたちが辿り着いたのが、自社開発という選択でした。

幸い当社には大規模なクラウド型サービスを扱えるサーバーの設備がありました。コストの問題をクリアするのであれば、これを使わない手はないと考えたんです。

新サービスの開発ということで成功するか不安はありましたが、それに挑戦できると思うと胸が熱くなりました

他社と差別化した独自のコミュニケーションサービスを開発すべく、機能面ではビジネスチャットとビデオ会議をシームレスに融合させることに。

社内展開に向け、情報セキュリティポリシーの順守や、社内IT管理担当者との折衝や調整など、技術面以外の苦労もあったと荻野さんは振り返ります。

ただ、当社には新しいものをどんどん取り入れていこうという雰囲気がありました。変化を恐れない柔軟な風土が根付いているので、常に建設的な議論ができたのは良かったですね。

情報セキュリティポリシーに抵触しない範囲で運用ルールを変更してもらったり、反対にソフトを修正したりして、開発を進めていきました。

まさに全社一体。荻野さんは「社内は実験台」と例えますが、社内からの要望を吸い上げ、それらを真摯に反映することでLINC Bizは改良を重ねていきました。

その結果、社内では部門横断コミュニケーションとフラットな情報共有が活性化。積極的なビデオ会議の活用で拠点間移動の削減にも成功するなど、LINC Bizはコストメリットでも見事貢献を果たしたのでした。

待望の製品化!シャープ入社1年目のエンジニアが奮闘

昨年11月、満を持して外部へもリリースされたLINC Biz。開発当初から製品化は視野に入れられていたそうで、井上さんも当時入社1年目ながら即戦力として関わっていました

お客さまに安定したサービスを提供するためにLINC Bizでは最新のコンテナ技術を活用しています。これは、データセンター内の物理的なサーバー上に仮想サーバーを立てていく技術です。

一から勉強しないといけない分野だったので、大変でした。

  • 共有資料に直接書き込めるホワイトボード機能を使いながら井上さんが説明してくれました

手取り足取り教えてくれるわけではない。けれど、相談すれば誰かが手を差し伸べてくれる環境だったと井上さんは言います。

技術面で相談したいことをチャットに投稿すると、顔も知らない先輩たちでもアドバイスをくれたりしました。フラットにコミュニケーションがとれるので、とてもありがたかったです。

「入社歴が浅いから」「若いから」といった理由で否定されることもなく、自分の意見を真摯に受け止めてもらえたので、リリースに向けて前向きに取り組めました。

「コミュニケーションに積極的ではなかった」と自身を省みる井上さんですが、トップダウンではなく、何がベストか現場の“シャープ人”たちが知恵を絞る姿勢に感化されたことで自主性が育まれたのかもしれません。

目指すは日本全体の生産性向上!「LINC Biz」をオンリーワンのサービスに

荻野さんや井上さんたちの努力によって進化を続けるLINC Bizは、奈良市教育委員会が採用。新型コロナウイルス感染防止対策として休校が余儀なくされる中、市立学校において先生と児童・保護者のコミュニケーションツールとして活用されました。

  • オンライン授業の様子(左)とビデオ会議画面イメージ(右)

さらに、3密を避けるため、LINC Bizによってオンラインのポスターセッションを開催した学会もあったそうです。

お客様には出張費や輸送費、会場使用料などを削減できるオンラインのメリットを感じていただけています。ビジネスシーンはもちろん、学会や教育現場にもアピールしていきたいですね。

  • ポスターセッションでの活用イメージ(左:大会要旨チャンネル、右:発表チャンネル)

生まれたばかりのコミュニケーションサービスで、まだまだ知名度は低い――。それでも前を向くのは自信の表れでしょう。

まずは使い勝手の良さを実感してもらいたいです。もっと機能面を充実させて、他社には負けないオンリーワンのサービスにします

今、LINC Bizは、コミュニケーションツールに留まらずそのサービスをさらに進化させています。その事業の幅は、企業におけるAndroidスマートフォンの安全な運用をサポートする「LINC Biz emm」、業務用車両の位置情報やドライバーの勤務状況を管理できる「LINC Biz mobility」、オフィス対応業務を補助する「LINC Biz bot」など非常に多岐にわたっており、将来的にはそれぞれのサービスを互いに連携することも予定されているそうです。

新型コロナの影響で当社もテレワークとなりましたが、LINC Bizのおかげでスムーズに在宅勤務ができたといった声が聞けて嬉しかったです。当社では、業務効率化が加速しています。

コミュニケーションサービスとしては後発ですが、いずれ他社を凌駕し、日本全体の生産性向上に寄与したいと考えています

「無いなら自分たちで作ればいい」。口で言うほど、体現するのは簡単なものではありませんが、LINC Biz誕生秘話には、長きにわたって創意工夫を実践してきたシャープの技術力と魂が詰まっていました。

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