DX（デジタルトランスフォーメーション）は、ビジネスや業務などにおいてデジタルによって変革を起こすことを意味します。単にITのシステムやツールを導入することがDXではなく、企業の変革こそがDXです。
しかし自社のリソースだけで推進しようとしても、ノウハウがなかったり人材がいなかったりとうまく進めることができないかもしれません。そこでDXをサポートする外部の企業を利用する方法があります。本記事では、推進の目的に合わせてDX支援のおすすめ企業を紹介します。
DXはそもそもどうやって進めるのか？
DXの定義
DX（デジタルトランスフォーメーション）とは、2004年にエリック・ストルターマン教授が提唱した用語です。また、2018年に経済産業省が発表した「DX推進ガイドライン」には、DXが以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
また、DXを提唱したエリック教授は、2022年に当初のDXの定義を改めて、企業のDXについて、
「企業がビジネスの目標やビジョンの達成に向けて、その価値、製品、サービスの提供の仕組みを変革する」
としました。
では、DXはどうやって実践するのでしょうか？
DX推進の全体の地図をイメージする
独立行政法人の情報処理推進機構（IPA）が提供しているDX実践手引書では、DXの全体像として、以下のようなDXフレームワーク図が示されています。
企業のDXは、一般的に、上図の左側のデジタル化の取り組みの「未着手」の状態から「デジタイゼーション」、「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」に向かって右側を目指して進行していきます。具体的には、「業務の効率よる生産性の向上」や「既存サービス・製品のデジタル化」、さらには「新規製品・サービスの創出」や「ビジネスモデルの抜本的な変革」「組織文化の変革」を目指していくことになるでしょう。
そのために、まずはDXを推進する組織や担当者が抜擢され、自社の課題を洗い出したり、自社が目指すビジョンの設定や、ビジョン実現に向けたロードマップを描き、実行していきます。
いかがでしょうか？ DX化に向けた全体像はイメージできましたか？
DXは外部のDX支援企業のサポートが不可欠
DXに向けた取り組みは、大抵数年に及び、プロジェクトも全社を巻き込むような大規模なものになるケースが大半です。また、デジタル化に向けて導入するサービスや技術の選定も重要です。このようなDXの取り組みや自社の変革を、自社だけで実行するのは、現実的ではないでしょう。
そこで頼りになるのが、さまざまなDX支援会社の存在です。実際、既にDXに取り組んでいる企業の多くが、外部のDX支援企業のサポートを得ながら進めています。
DX支援とは？DX支援企業は何を支援してくれる？
DX支援企業の種類
DX支援といってもさまざまなタイプのサポートがあります。
独立行政法人情報処理推進機構（IPA）では、「DX実践手引書」の中でDXを推進するデジタル産業の企業を4つの類型としてまとめています。
本記事ではその4つの類型に加えて、DX領域の人材育成支援企業をあわせた5つのDX支援企業のタイプについて、解説していきます。
1：DX人材育成を支援してくれる「DX人材育成支援企業」
1つ目のDX支援企業が、DX人材の育成をサポートする、DX・IT・AIセミナーベンダーです。
【主な支援内容】
- DX推進の人材育成
- DXに関するIT技術や組織づくりの研修
- DXを推進できるプロジェクト担当者の育成
- IT技術や先進テクノロジーに関する研修
2：DX推進と企業変革をリードしてくれる「DX推進支援企業」
２つ目のDX支援企業は、DX推進と企業変革をリードしてくれるDX支援コンサル企業です。
【主な支援内容】
- 現状の課題把握から、戦略立案、システムの選定・実装まで一気通貫で支援
- レガシーシステム刷新を含めたDXに向けた変革の支援
- 新たなビジネスモデルを顧客と共に立案
- DX成功事例の紹介やDXによる企業変革に必要な知見や技術の共有
- 組織の意識改革、再編、運用、保守を統合的にサポート
- 顧客とのDX専門会社を設立
3：DXに必要な技術を提供してくれる「DXテクノロジー企業」
３つ目のDX支援企業は、DXに必要な技術を提供するDXテクノロジー企業です。主に、SIerやAIテクノロジー企業、SaaS企業などです。
【主な支援内容】
- 業務の効率化・自動化のためのDX支援ツールの導入支援
- DX実現のためのシステム開発・データ連携支援
- トップノッチ技術者（最先端のIT技術など、特定ドメインに深い経験・ノウハウ・技術を有する）の供給
- デジタルの方向性、DXの専門家として、技術や外部リソースの組み合わせの提案
- 内製化志向の企業へアジャイルケイパビリティ習得を支援
- アジャイル開発支援、コーチング、組織変革をメニュー提供
4：共通プラットフォームの提供企業「プラットフォーム企業」
４つ目のDX支援企業は、DX実現のためのシステム面の基盤や、サービスの基盤となるようなプラットフォームを提供してくれる企業です。
【主な支援内容】
- 製造業や建設業など、特定の業界の企業の活動を支援するプラットフォームサービスの提供
- 高度なIT技術（システムの構築技術・構築プロセス）や人材を核としたサービス化・エコシステム形成
- 業界ごとや職種ごとに、共通する業務を標準化して各社が使えるサービスとして構築支援
5：新ビジネス・サービスの提供企業「DX＆新規事業支援企業」
５つ目のDX支援企業は、デジタルやテクノロジーを活かした、新たなサービスやビジネスモデルの創出を支援してくれる企業です。主に、DXコンサル企業や新規事業支援コンサル企業が支援してくれます。
【主な支援内容】
- 新ビジネス・サービスの立ち上げ支援や価値創出支援。
- 他社とのアライアンス支援や協業先の開拓支援
- オープンイノベーションの実行支援
- 自社のDXのために開発したデジタルソリューションの外販支援
おすすめの「DX人材育成支援企業」3社
前述した、5つのタイプのDX支援企業について、それぞれ、今注目すべきおすすめの企業を紹介します。まずは、DX人材育成支援企業から。
１：【伴奏支援型】STANDARD
株式会社STANDARDは、1日で終わるオンライン講座で、DXリテラシーの基本が身につく「DXリテラシー講座」を提供したり、3ヶ月でAIエンジニア不足を解決できる「AI研修サービス」を提供している企業です。
DX人材の育成だけでなく、DX推進のコンサルティングや、AI実装に向けた技術アドバイザリーサービスも行い、DX推進を一気通貫で支援してくれます。
２：【伴奏支援型】インターネットアカデミー
インターネット・アカデミー株式会社は、IT技術者の育成やITに関する企業教育全般の事業を手掛けています。
IT研修サービスとしてDX研修がラインナップされており、DXの基礎や潮流、技術的な知識の学習で企業のDX化の成功をサポートしています。
３：【伴奏支援型】SAMURAI
株式会社SAMURAIは、プログラミング学習サービス・法人IT研修・IT人材紹介サービスを主な事業として展開しています。
DX支援として、DXメンタリングサービスを提供し、このサービスは領域や段階に応じて最適なメンターをアサインして伴走型のサポートをしてくれるものです。
DXプロジェクトの推進に必要なノウハウや知見を提供し、自走できるようになるまで伴走支援します。必要に応じてアセスメントも実施し、現在の状況を明確にしながら目指すべき方向を提示し、次に着手すべき内容の提案までを行ってくれます。
おすすめの「DX推進支援コンサル企業」10社
１：【総合コンサル型】ベルテクス・パートナーズ
株式会社ベルテクス・パートナーズは、戦略策定・新規事業創出・テクノロジーや先進ソリューションの活用などのコンサルティングサービスを手掛けています。
組織変革のDXに強みを持つ点が特徴であり、組織変革を妨げる壁を企業の特性に応じて突破します。継続的な支援で、成果を創出し続けられるような仕組みを構築し、伴走型での解決を行います。
２：【IT系コンサル】クレアスバリュー
株式会社クレアスバリューは、DXやRPA導入支援サービスを手掛けています。
ITやシステムの課題について中立的な立場からサポートし、最適なソリューションを提供しています。DX推進サポートでは、課題のヒアリングからプロセスの見える化、改善運用までを伴走型でサポートしてくれるDX推進企業です。
３：【システム系コンサル】シグマクシス
株式会社シグマクシスは、企業のトランスフォーメーション支援のコンサルティングサービスの提供をしています。
デジタルの変革に限らない企業の3つの変革実現を目指します。「マネジメント・トランスフォーメーション（MX)」「デジタル・トランスフォーメーション（DX）」「サービス・トランスフォーメーション（SX）」の3つです。
専門ノウハウを活用したコンサルティングサービスを強みとしています。
４：【IT系コンサル】RIT
株式会社RITは、ビジネスコンサルティングや人材育成研修、Webサイトの制作などを手掛けています。
DXを「ITを利用して業務改善したり、新たなビジネスを生み出したりすること」と定めており、デジタル化をどの領域から進めるべきかをまずは診断して、改善の提案までを行います。
「バーチャルDX推進室」というサービスを提供しています。これは、多くの企業のDX化をサポートした経験豊富なコンサルタントが、どんな些細な相談でもチャットで回答してくれる質問し放題の定額サービスです。
５：【システム系コンサル】FPTソフトウェア
FPTソフトウェアジャパン株式会社は、ソフトウェア開発・システムコンサルティング・インテグレーションを手掛け、オフショアを活用したビジネスモデルの提供をしています。
デジタルテクノロジーの実装と適用におけるDX化のサポートです。
アウトソーシング・ITサービス導入などと合わせたコンサルティングも手掛けています。
DX推進では、人材不足をはじめとした問題の早期解決の実現をサポートしています。
６：【デザイン思考コンサル】NCDC
NCDC株式会社では、ビジネス・UI/UXコンサルティングや、SI・クラウドサービスの開発を手掛けています。
デザインと先端技術で企業のイノベーションの一元的なサポートをしています。
ビジネス戦略立案からシステム開発までのDX支援に必要なサービスを一気通貫で提供しているDX支援企業です。
幅広いサービスを提供を手掛けているため、業界を問わずに企業のDX支援ができるのが特徴です。
７：エル・ティー・エス
株式会社エル・ティー・エスは、コンサルティング・ビジネスプロセスマネジメント・デジタル活用サービスを手掛けています。
新システム構築、改修の支援事例が豊富です。DX業務関連でも幅広い領域をカバーし、要望や課題に合わせた柔軟な対応が可能であり、コンサルティングに加えて、システム開発・一部業務の委託の検討をしている企業向けです。
８：テックファーム
テックファーム株式会社は、業務支援向けのシステムソリューションの開発やコンサルティングサービスなどを手掛けています。
クライアントの現状分析から課題を把握し、IT技術の導入に限らず目標や業務改善に活用できるようサポートを行います。新規事業や新プロジェクトの立ち上げについてのDX推進が強みです。
９：アスタリスク
株式会社アスタリスクは、モバイルとモノ認識の分野で特に強みを持っています。
モノ認識は、人や情報などあらゆる物を認識する技術で、画像認識・バーコード・RFID・センサーなどのことです。スマートデバイスなどのモバイルとを組み合わせて活用して、さまざまな業態のDXを手掛けています。
スマートフォン向けのアプリ開発や、システム連携などのサービス提供し、大規模なシステム開発ではなく手元でできるような業務改善に強みがあります。
１０：ココペリ
株式会社ココペリは、金融機関と連携した全国の中小企業の活性化を目的としたDXを手掛けています。
経営支援プラットフォームの「Big Advance」や、AIの組み込みによる新しい視点の提供などの特に中小企業や個人事業主に対して生産性向上に貢献するシステム提供を得意とします。”
今注目すべき、おすすめの「DXテクノロジー企業」3社
１：【AIに強い】アルベルト
株式会社ALBERT（アルベルト）は、データソリューション事業を手掛け、特にAI分野に強みを持ちます。
顧客からの課題をデータ分析し、AIアルゴリズムの構築、実ビジネスへ展開するためのシステム開発までを手掛けます。
データの高度な分析力に強みを持ち、独自のソリューションでビジネス課題の最適解を導きます。
伴走型データドリブンDX支援の実績があり、データ活用で将来予測やビジネス上の新たな価値創出を実現したい要望に応えています。
２：【実績豊富】モンスターラボ
株式会社モンスターラボは、デジタルコンサルティングやソフトウェアの開発や販売などの事業を手掛けています。
デジタル領域の知見を活かした、DX推進戦略はビジネスの上流から開発までのあらゆる段階でサポートしています。
３：ヘッドウォータース
株式会社ヘッドウォータースは、AIをはじめとした高度なテクノロジーのソリューションやプロダクトを通じて、企業の経営課題を解決するコンサルティング会社です。
DX化推進のためのシステム開発も手掛け、AIやIoT技術に特に強みを持ちます。
おすすめの「DX＆新規事業支援企業」2社
１：【DX＆新規事業ハイブリッド型】Sun asterisk
株式会社Sun Asteriskは、新規事業・DX・プロダクト開発を成功に導くために、「クリエイティブ&エンジニアリング」「タレントプラットフォーム」の2種類のサービスラインの提供をしています。
クリエイティブ & エンジニアリングサービスではテック、デザイン、ビジネスの専門チームが、アイデア創出からビジネスデザイン、プロトタイプ開発、本開発、グロースまでをワンストップで支援。
多くの新規事業やDXの実績で培った、価値創造に特化した手法によってプロジェクトを成功に導くことが可能です。
タレントプラットフォームはDX推進において、立ち上げ期やグロース期などで必要な人材・チームが異なります。
人材ソリューションは、各フェーズに最適な採用戦略の策定や人材採用の実行をサポートいたします。
２：POINT EDGE
株式会社POINT EDGEは、ビジネスデザインコンサルティングや、WEB・ITシステム・スマートフォンアプリ開発などを手掛けています。
DX推進において現状のアセスメントから方針策定、コンセプトの作成、戦略の立案までを担当部署と伴奏しながらワンストップで支援を行っています。
DX支援企業を選ぶためにまずやることは？
DX支援企業の協力を仰ぐ際に重要なのは、まずは「自社の課題・現在地」を把握しておくことです。自社の課題を知ることで、自社に必要なサービスや、自社に最適なDX支援会社がイメージできるようになるからです。
そこで、是非活用して欲しいのが「DX推進指標」です。
DX推進指標とは、2019年に経済産業省が公開したもので、DXが自社でどのくらい進んでいるのかを判断するための基準であり、企業に対してDX推進を加速してもらうため策定した自己診断用の指標です。大きく以下の2種類から構成されます。
- DX推進のための経営の在り方、仕組みに関する指標
- DXを実現する上での基盤となるITシステム構築に関する指標
それぞれに1種類ずつ定性指標と定量指標があります。
以下のエクセル形式の自己診断シートで、DX推進指標の把握が可能です。
自己診断シート
https://www.jamdi.org/common/data/news_topics/20211006/20211006_01b.xlsx
自己評価で現状を正確に把握することが、適切なDX支援を受ける近道です。
政府のDX支援
DX補助金制度について
政府も、積極的にDX支援を提供しています。特に活用したいのが、さまざまな補助金制度です。
以下に挙げた補助金は2022年12月現在で、実施されているものです。
（募集がすでに終了している場合もあります）
- IT導入補助金
- 事業再構築補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
国だけでなく、都道府県が主体となっている補助金もあります。
IT導入補助金制度は中小企業が対象で、自社ニーズに合ったITツールの導入に必要な経費の一部を補助し、業務効率化や売上の向上をサポートするものです。
ものづくり商業サービス生産性向上促進補助金は、中小企業の生産性の向上が目的であり、新しいサービスの開発や生産プロセスの改善が支援の対象としています。
事業再構築補助金は、新型コロナウイルスで影響を受けた社会の変化に対応するために、新規事業の展開や事業転換などの支援をする制度です。
まとめ
本記事ではDX支援について解説しました。
DX推進は、単にITシステムやツールを自社導入するだけでなく、それらを活用しながらビジネスモデルの変革にまで全社を巻き込んで踏み込むことです。
DXを自社内の人材だけで進めるのが難しいと感じたら、外部の支援企業を利用しましょう。