キヤノン「EOS 60D」は、1800万画素CMOSを備えたデジタル一眼レフ機だ。一昨年に発売した「EOS 50D」の後継機にあたり、シリーズ中では初めてバリアングル液晶を採用したほか、画像にエフェクトを加えるアートフィルターやカメラ内RAW現像機能を新搭載。そのレビューをお伝えする。

外装を変更してボディを小型軽量化

EOS 60Dを試用してまず気に入った点は、ボディが適度に小さくて軽いこと。これまでのEOSの中級機は、2004年に発売した「EOS 20D」の本体重量685gが最も軽く、続く後継モデルでは700gオーバーが当たり前になっていた。これに対してEOS 60Dは675g。さらにコンパクトな初級機「EOS Kiss」シリーズという選択肢もあるが、EOS Kissにはないツインダイヤルの操作系や、プリズム製ファインダーを備えた中級機でありながら、比較的小型軽量にまとめたことがありがたい。

「EOS 60D・EF-S18-135 ISレンズキット」

小型軽量化を図るために、従来機EOS 50Dではマグネシウム合金製だった外装は、EOS 60Dでは樹脂製に改められた。新旧2台を並べると質感や剛性感が低下した印象はあるものの、チープというほどではない。また、記録メディアはコンパクトフラッシュカードからSD/SDHC/SDXCカードに変更になった。この点については賛否が分かれる。

外装にはABS樹脂およびポリカーボネート樹脂、特殊導電性繊維入りポリカーボネート樹脂を採用する

記録メディアにはSD/SDHC/SDXCカードを、電源にはリチウムイオン充電池「LP-E6」を使用する

最大の特徴であるバリアングル液晶の採用は、撮影の自由度を広げる進化といえる。液晶可動のデジタル一眼といえば、オリンパスやソニー、ニコン、パナソニックなどがすでに実現していて特に目新しさはないが、EOSユーザーにとっては待望だろう。液晶の左側にヒンジを備え、左右に180度、上下に270度まで回転する。ライブビューは、背面ボタンのワンタッチで表示でき、その視認性は良好なレベルだ。

背面の「ライブビュー撮影/動画撮影ボタン」を押すと、液晶モニターにライブビューが表示される

ライブビューの撮影メニューでは、AFモードやグリッド表示、アスペクト比、静音撮影などを設定できる

ライブビュー時のAFは、従来のEOSシリーズと同じく、コントラストAFが働く「ライブモード」と「顔優先ライブモード」、位相差検出AFが働く「クイックモード」の計3種類から選べる。ただし、コントラストAFの測距スピードはこれまでと同じく遅く、静止した被写体以外ではあまり実用的とはいえない。人物やスポーツなどの動体撮影では、クイックモードまたは光学ファインダーを選ぶようにしたい。

ライブビュー撮影時の機能としては、レリーズ時の作動音を抑える「静音撮影」や格子線を表示する「グリッド」機能を継承しつつ、新たにアスペクト比切り替えに対応。通常の3:2のほか、4:3、16:9、1:1を選べる。……つづきを読む