スマートフォンにプロジェクターを内蔵し、壁や天井に投影できる製品がいくつかのメーカーから販売されています。古くはサムスンが「Galaxy Beam」という名前で製品化したこともありますが、市場に出回っているプロジェクター内蔵スマートフォンはほとんどが中小メーカーの手によるものです。プロジェクターは日常的に使うものでもありませんから、コストのかかる製品を手掛けるメーカーはどうしても限られてしまうのでしょう。

  • プロジェクターを内蔵したスマートフォンが販売されている

それでもプロジェクタースマートフォンが便利な製品なら、コストがかかろうが今頃は各メーカーから製品が多数出回っているはずです。しかしわずかな数しか製品化されていないということは、プロジェクタースマートフォンはまだ実用的な製品ではないということかもしれません。

プロジェクタースマートフォンはスマートフォンの画面をそのまま投影できます。最大200型くらいの大型サイズに投影できる製品もありますが、実用的な投影サイズは70から100型程度でしょう。今やリビングルームに大型TVがある家庭が増えているとはいえ、自分の部屋にはなかなか大きいTVはおけません。しかしプロジェクタースマートフォンがあれば自室の壁や天井が大画面TVになるのです。

  • 投影すれば大画面TVのように使える

とはいえ大画面で見たいコンテンツとなると映画やTV番組でしょうから、まずはそれらをスマートフォンにダウンロードしておかなくてはなりません。しかし2時間の映画のダウンロードにはかなりの時間がかかります。また急に思い立ってみたいと思った映画を、わざわざスマートフォンに落としてまで見ようとは思わないでしょう。YouTubeやTikTokのように、いまやスマートフォンでアプリを開けば手軽な動画がすぐにみられる時代には、コンテンツをダウンロードしてから見るのは面倒なものです。

しかしここ数年で普及が進むストリーミング配信のコンテンツなら、スマートフォンにダウンロードする必要はありません。最近は海外でもTV番組のストリーミング放送は多く、スマートフォンの画面でTVを見ることもできます。それを即座に壁に投影すれば、まさしく大画面TVを見ているのと同じ感覚で視聴できるわけです。

  • スマホで視聴するTV番組を壁に投影するなんてこともできる

一方YouTubeでも高画質な動画が増えています。特にドローンを使った風景動画はスマートフォンの狭い画面で見るよりも、大画面TVで見たいものです。プロジェクターでの投影は画質の点でTVには劣りますが、それでも迫力ある映像を十分堪能できるでしょう。

では現在、プロジェクタースマートフォンはどのような製品が出ているのでしょうか? 実は日本でも入手できる製品があるのです。それはモトローラの「moto Z」シリーズ。スマートフォンにはプロジェクターは内蔵されていませんが、背面に合体できるモジュール「motomods」にプロジェクター内蔵製品があります。これを装着すると背面の横から壁に向かって映像を投影できるのです。最大投影サイズは70型。今のところ、日本で購入できるプロジェクタースマートフォンはこれだけとなっています。

  • Moto Zシリーズの背面にプロジェクターモジュールを装着できる

新興メーカーのMobiが海外で販売している「Moviphone」は本体上部にプロジェクターを内蔵した、単体でも使えるプロジェクタースマートフォンです。プロジェクターを使うときに本体を少しだけ斜め上部に持ち上げるスタンドが付属しています。机の上に置いただけでは投影された映像の一部が机上に映ってしまいますから、なにかしらの台が必要。Moviphoneはそのあたりをうまく考えています。

  • 普通のスマートフォンに見えるMobiのMobviphone

  • 付属のスタンド(本来は1つ付属)を取り付けられる

このほかにも、中国で防水スマートフォンなどを手掛けるBlackViewもプロジェクタースマートフォンを販売しています。メジャーメーカーが手掛けない製品を得意とする同社だけに、プロジェクタースマートフォンはハイエンド製品という扱いになっています。

  • BlackViewのプロジェクタースマートフォン

  • 本体上部にプロジェクターは各社同じ構造

またネットワーク機器を手掛けるTP-LINKも類似の製品を作っています。ただし市場ニーズが不明のため、展示会に出して来場者の反応を伺いつつ、製品化を考えているとのこと。

  • TP-LINKのNeffos P1は製品化を検討中

これらのプロジェクタースマートフォンを海外の展示会などで実際に触ってみました。展示会場は明るいために鮮明な映像の体験はできないものの、それなりに明るい映像を見ることができます。ただしストリーミング映像の場合は途中で映像が一時停止してしまうこともありましたし、YouTubeなら回線状態が悪くなると画質が低下してしまいます。細かい再生や早送り操作もテンポがずれることがあるため、操作性はいま一つと感じてしまいます。

  • 5Gが始まればこんな使い方も当たり前になるかもしれない

しかしこれから各国でサービスが始まる新しい通信規格、5Gが始まればプロジェクタースマートフォンもストレスなく使える製品になりそうです。5Gは今の4Gの10倍以上高速なギガビット通信が可能ですから、ストリーミング配信される映像の画質が劣化することはありません。また5Gは遅延速度も4Gの10分の1以下のため、動画のコントロールも画面をタッチすれば即座に反応してくれます。5Gが十分普及したころには、プロジェクタースマートフォンを使って高画質映像を自宅で楽しむことが当たり前になるかもしれません。