さて、OS論も終わったことで次は何をしようか? と考えたのだが、にわかに思いつかない。そこで今回から暫く、これまで取材はしたものの、記事を書くタイミングを逸したネタからいくつかレポートを書いてみたいと思う。その1回目は、昨年11月28、29日に都内で開催されたRAMBUS社のRDF(Rambus Developer Forum)2007の中で発表されたTBI(Terabyte Bandwidth Initiative)である。
このTBI、直前まで内容は一切伏せられており、Harold Hughes氏(Photo01)の基調講演の最後で初めて登場した、いわばサプライズ。続くテクニカルセッションでもTBIに関するものは一切無かったのだが、報道関係者向けのプレスセッションでKevin Donnelly氏とSteven Woo氏(Photo02)がこのTBIの詳細の説明を行った。実はRDFにおいて、このプレスセッションの後でDonnelly氏とWoo氏に個別インタビューを行っており、TBIについてもう少し細かく内容を伺っている。そんなわけで、講演やプレスセッションの内容とインタビューを通じて、RAMBUS社のTBIについて紹介してみたいと思う。
Photo01:初日の基調講演のために来日した、米RAMBUS社長兼CEOのHarold Hughes氏。 |
Photo02:右がSenior Vice President, EngeneeringのKevin Donnelly氏、左がTBIのアーキテクトを勤める、Technical DirectorのSteven Woo博士。 |
○基調講演より
まず基調講演の内容から紹介したい。RAMBUSは従来からゲームコンソール向けメモリとして、一定のシェアを確保している。このゲームコンソール向けのメモリの場合、世代毎に転送速度が1桁づつ上がっており(Photo03)、2011年ころのゲームコンソールは1TB/secもの帯域が必要と考えられる。これを実現するためのRAMBUSの提案がTBIという事になる(Photo04)。このTBIの根幹を成すのは、32倍速のデータレート(Photo05)、完全差動信号(Photo06)、FlexLink C/A(Photo07)の3つの技術である。これにより、新世代のゲームコンソールに必要な帯域を確保することが出来る、というのが基調講演における主要な内容だった。
Photo05:Concurrent RDRAMが2倍速、Direct RDRAMが4倍速、XDRが8倍速だから、32倍速というのはちょっとしたジャンプとなる。 |
Photo06:既にXDRの時点でDifferential Signalingは採用している訳で、ではFullとは何かというと、Data以外のラインも全てDifferentialになったという事だ。 |
Photo07:FlexLinkの元となるのは、XDRなどに使われるバスのスキューを吸収するFlexPhaseテクノロジー。詳細はこちらを参照の事。FlexLink C/Aとの関係は後述。 |
○プレスセッションより
まぁ幾らなんでもこれでは内容が薄すぎる訳で、プレス向けセッションではもう少し詳細な話が出てきた。TBIはまず、1TB/secの転送を行うために必要なSignalingの技術を確立するのが当初の目的とされる(Photo08)。RAMBUSでは"Initiative"とは、今後数年の間にここで確立した技術を使った製品を出す予定のものを指しており、これに向けての最初のステップという事になる。
さてそのTBIであるが、今回公開された要素技術は32X Data RateとFlexLink C/A、FDMAの3つである(Photo09)。まず32X Data Rate(Photo10)であるが、これはもう見ての通りBase Clockの32倍の転送速度での転送となる。これに関しての詳細は今のところ無く、とにかく32倍速で転送できるという話に終始するわけで、これを実現するためのイコライザーなりノイズキャンセラーなりといった話は、これから出てくるのであろう。