持ち家や賃貸住宅の代わりに、ホテルに長期滞在する「ホテル暮らし」。ホテル暮らしには、好きな場所に住むことができる、通勤時間や家事の時間が節約できるなどさまざまメリットがあります。しかし、「宿泊費やデメリットが気になり、一歩を踏み出せない」という人も多いでしょう。そこで今回は、都内でホテル暮らしをする場合の宿泊費やその他の費用、ホテル暮らしのメリット・デメリットをまとめてみました。

■ホテル暮らしをする場合の1ヶ月の費用は?

近年、ホテル暮らしが注目を集めています。その背景には、無駄な物を持たずシンプルに生活する「ミニマリズム」の広がりや、リモートワークなど多様な働き方の浸透があります。職場近くのホテルに長期滞在するケースのほか、完全リモートワークの利点を生かし、都内と地方のホテルを拠点にした多拠点生活を送る人々も増えてきました。

住む場所に縛られたくない、なるべく物を持たず身軽に生活したいという人には理想的な暮らし方ですが、気になるのはその費用。たとえば、都内で1人でホテル暮らしをする場合、何にどのくらいのお金がかかるのでしょうか。

<宿泊費>

ホテル暮らしをする時にかかる主な費用は、ホテルに泊まるための宿泊費です。宿泊費は宿泊先のホテルのグレードやプランによって大きな差がありますが、一般的な都内のビジネスホテルに泊まる場合、1泊あたり8,000円〜1万円程度が目安です。1泊8,000円のホテルに1ヶ月(30日)宿泊した場合の総額は、24万円となります。

もちろん、グレードの高いホテルやサービスの充実したプランで宿泊する場合は、さらに費用がかかります。たとえば、1泊3万円で宿泊すると、1ヶ月では90万円という高額な費用がかかります。

1泊8,000円で宿泊するとしても、賃貸に住む場合の住居費と単純に比較すると、ホテル暮らしは高くつくと言えるでしょう。

ただし、ホテルによっては長期滞在者向けの月額プランが用意されています。たとえば、アパホテルの「マンスリープラン」では、30泊11万7,000円(税込)〜で宿泊が可能です。これなら1泊あたり3,900円〜で宿泊でき、コストを抑えることができます。

<食費、コインランドリー代、クリーニング代など>

ホテル暮らしをする場合、宿泊費以外に食費がかかります。食事つきの宿泊プランや手頃な価格の弁当、カフェ、ファミリーレストランなどを利用すると費用を抑えられるでしょう。朝食と昼食でそれぞれ1食500円、夕食で1食1,000円かかるとすると1日の食費は2,000円ですので、1ヶ月では6万円となります。

総務省統計局の「家計調査 家計収支編 単身世帯」によると、2023年の一人暮らしの食費は平均4万2,049円。ホテル暮らしでは基本的に自炊ができず、出来合いの食事や外食が多くなるため、一般的な一人暮らしより食費が約2万円弱高くなりそうです。

食費の他には、洗濯をするためのコインランドリー代がかかります。洗濯代に1回300円、乾燥代に1回100円、合計400円かかる洗濯を週2回行った場合のコインランドリー代は、1ヶ月あたり3,200円です(1ヶ月を4週として計算)。これ以外に、クリーニングを利用すればその費用がかかります。

たとえば、上記のアパホテルのマンスリープランを利用してホテル暮らしをした場合、1ヶ月にかかる費用は宿泊費(11万7,000円)、食費(6万円)、コインランドリー代(3,200円)を合わせて18万200円となります。

■ホテル暮らしのメリット・デメリット

ホテル暮らしを検討する場合、メリットだけでなくデメリットを把握しておくことも重要です。ホテル暮らしの主なメリット・デメリットは以下の通りです。

<メリット>

1.駅近など利便性の高い場所に住める

ホテルの多くは駅の近くなど利便性の高い場所に位置していますので、移動にストレスを感じることなく快適に過ごせるでしょう。また、職場近くのホテルであれば、通勤時間を大幅に減らせます。空いた時間は、趣味や仕事に打ち込むなど、自分の好きなように活用することができます。

さらに、気分によって住む場所を気軽に変えることも可能です。ホテル暮らしなら、賃貸に住んでいてはできない自由なライフスタイルが満喫できるでしょう。

2.掃除やゴミ出しなどの家事に手間がかからない

掃除や炊事、ゴミ出しなどの家事に時間をとられないのもホテル暮らしの大きなメリットです。ホテルなら、自分に代わって清掃スタッフが部屋の清掃やリネン類の交換、ゴミ出しなどを行ってくれますし、ホテルの食事や外食を利用すれば料理の手間もかかりません。週に数回、コインランドリーで洗濯をする程度で済みますので、家事にかかる時間を大幅に減らすことができます。

3.光熱費や引っ越しの際の初期費用などがかからない

賃貸に住む場合、引っ越し費用や敷金・礼金などの初期費用が数十万円程度かかりますが、ホテル暮らしの場合はこれらの費用をかけずに住み始めることができます。また、ホテル暮らしなら光熱費もかかりませんし、ほとんどのホテルでは通信環境が整備されていて無料でWi-Fiが使えます。

さらに、ホテルには基本的な生活に必要なものが揃っているため、家具や家電を購入する必要もありません。

4.ホテルの施設が利用できる

部屋の清掃などのサービスが受けられるほか、コンシェルジュのいるホテルならチケットや病院の手配など身の回りのサポートを任せることもできます。また、トレーニングジムやサウナ、ワーキングスペースなどが備わっているホテルなら、わざわざ出かけることなく施設が利用でき便利です。

<デメリット>

1.生活コストが高くつく場合がある

ホテル暮らしでは光熱費などの費用はかかりませんが、宿泊費によっては賃貸の住居費よりも高くつく場合があります。また、自炊ができないことから、食費もかさみがちになります。費用を抑えてホテル暮らしがしたい場合は、月額プランのあるホテルを選んだり、食費を抑えたりする工夫が必要です。

2.ホテルに住民票を置けないケースがある

住民票は居住を証明し、各種の行政サービスを受けるために欠かせないものです。長期にわたる滞在の場合、ホテルに住民票を置ける場合もありますが、置けるかどうかは各市区町村によって判断が分かれます。ホテルが居住地として認められないケースもありますので、実際にホテル暮らしを始める前に必ず確認しておきましょう。

3.私物を置いておく場所が必要

ホテル暮らしをする場合、ホテルの部屋に置いておけるのは必要最低限の私物だけです。季節外の洋服やその他の私物などは、ホテルの部屋以外の場所で管理する必要があります。実家や身内の家などに置くのが難しい場合は、レンタル倉庫や荷物預かりサービスなどを利用しましょう。

また、多くのホテルでは郵便物の預かりができないため、営業所やコンビニでの受け取り、私書箱の設置など、何かしらの対応が必要です。

4.知人や友人をホテルの部屋に呼べない

ホテルに宿泊できるのは、手続きを済ませた宿泊者のみです。また、ホテルを住まいのように使っていたとしても、原則として一時的にでも他の人を部屋に招いたり、宿泊させたりすることはできません。知人や友人をホテルに招きたい時は、ラウンジやロビーなどを利用しましょう。

■ホテル暮らしに興味があるなら、まずは短期滞在から試してみよう

ホテル暮らしは好きな場所に気ままに住めるだけでなく、家事のわずらわしさやストレスのかかる通勤時間などからも解放されるメリットがあります。その反面、住民票や私物の管理などの問題もあります。メリットとデメリットをよく比較したうえで、「ホテル暮らしを経験してみたい」と思った方は、まずは短期の滞在から試してみましょう。