「別荘」と聞くと、ごく一部の富裕層が持てるもの、普通の会社員には無縁なもの…というイメージを抱く人が多いのではないでしょうか。しかし近年では、20〜30代の若い世代の間に「2拠点生活」「複数拠点生活」が広まり、一般的な収入の会社員の中にも別荘を持つ人が増えているのだそうです。では、別荘を持つには実際どのくらいの年収が必要なのでしょうか。複数拠点生活を送る人のデータから、目安となる年収をご紹介します。

  • 別荘は、意外と手に届く存在?

■複数拠点生活を送る人の年収・年代は?

<年収>

休暇やレジャー、週末のセカンドハウスなどに使われることの多い別荘。メインの自宅とは別に不動産を持つことから、よほど資金に余裕のある人でないと所有は難しいと考えがちです。しかし、「複数拠点生活」に関するデータを見てみると、別荘を持つ人の年収は一般的な年収とかけ離れているわけではないことがわかります。

一般社団法人 不動産流通経営協会の「複数拠点生活に関する意向調査」(2022年3月)によると、現在複数拠点生活を行っている人(実施者)の平均世帯年収は約764万円、平均個人年収は約509万円でした。また、今後複数拠点生活を行いたい人(意向者)の平均世帯年収は約674万円、平均個人年収は約433万円となっています。

総務省統計局の「家計調査(2023年) 夫婦共働き世帯の収入(60歳未満)」によると、夫婦共働き世帯(子どもなし)の平均月収は71万2,740円、年収に換算すると855万2,880円です。また、国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均給与は458万円です。

これらと比較すると、複数拠点生活を行っている人の平均世帯年収は特別高いわけではなく、むしろ一般的な共働き家庭の平均年収よりも低くなっています。一方、給与所得者の平均年収とはさほど変わりありません。

ただし、複数拠点生活を行っている人の年収にはばらつきがあり、一概にボリュームゾーンと言える平均年収はなく分散傾向にあります。たとえば、複数拠点生活の実施者の平均世帯年収は、以下のように分布しています。

200万円未満 6.2%
200万円以上~300万円未満 7.0%
300万円以上~400万円未満 9.6%
400万円以上~500万円未満 9.3%
500万円以上~600万円未満 8.7%
600万円以上~800万円未満 15.1%
800万円以上~1,000万円未満 11.8%
1,000万円以上~2,000万円未満 16.7%
2,000万円以上 5.0%
わからない 10.6%

最も多い層は世帯年収1,000万円以上〜2,000万円未満の16.7%ですが、次いで多いのは世帯年収600万円以上〜800万円未満の15.1%です。また、その他の世帯年収にも広く分散しています。

なお、複数拠点生活を行っている人の職業(本人)で最も多いのは、実施者・意向者ともに「正社員・公務員」でした(実施者44.4%、意向者50.1%)。次いで、「専業主婦・主夫」(実施者14.5%、意向者12.5%)、「無職」(実施者9.0%、意向者8.2%)と続きます。

別荘を持っている人の職業としてまず挙がりそうな「会社経営者・役員」は実施者7.3%、意向者4.9%となっており、「パート・アルバイト」(実施者7.1%、意向者9.7%)と比べてさほど多くない数字となっています。

<年代>

次に、複数拠点生活を行っている人の年代を見てみましょう。同調査によると、複数拠点生活を行っている人の年代にはあまり偏りが見られません。実施者、意向者の年代分布は以下の通りです。

・実施者

20~30代 27.4%
40~50代 33.9%
60~70代 38.7%

・意向者

20~30代 29.6%
40~50代 42.5%
60~70代 27.9%

実施者のうち最も多いのは60〜70代ですが、若年層である20〜30代も約3割います。また、複数拠点生活を行っている人の平均個人年収を見ても実際の平均年収とさほど変わらないことから、ごく一般的な年収の人や若い世代の人も別荘を持ち、複数拠点生活を送っている現状がうかがえます。

■別荘の維持には1ヶ月あたりいくらかかる?

では、別荘を持ち複数拠点生活を行うには、月にどのくらいの費用が必要なのでしょうか。同じく「複数拠点生活に関する意向調査」を見てみると、サブ拠点(別荘)にかかる維持費(※)の月額は、平均約5万4,000円です。また、月額5万円未満と答えた人は62.8%にものぼります。

自宅の他に別荘の維持費が月5万円は安いとは言えませんが、一般的な収入の世帯でも手の届かない金額ではないでしょう。それに、維持費を月額5万円未満に抑えている人も多くみられます。

また、別荘を使用しない期間に何らかの形で運用を行い、維持費を補てんすることもできます。運用手法はさまざまですが、代表的なものとしては以下のようなものがあります。

・民泊として貸し出す
・賃貸物件やレンタルスペースとして貸し出す
・地域住民等に貸し出す
・知人や友人等に貸し出す

さらには、仲間と共同購入することで安く買う、所有ではなく賃貸することで月額費用を抑えるなどの方法もあります。

※賃貸の場合は家賃や管理費、所有の場合はローン返済、建物修繕費、管理費、固定資産税など

  • 複数拠点生活を実践する人の収入・サブ拠点の維持費

■別荘は、意外と手に届く身近な存在

「別荘」と聞くと、自分とは別世界のものに感じてしまいがちですが、複数拠点生活を行っている人の実態を見てみると、意外と身近な存在に思えてくるものです。使用しない期間の運用方法も検討しておくと、複数拠点生活の実現がさらに近づくでしょう。週末は地方で過ごしたい、普段とは違った環境でのんびりしたいという人は、別荘や複数拠点生活という選択肢を考えてみてはいかがでしょうか。