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筆者は、タブレットや2in1を買う場合、13インチ未満ならできるだけペンの使えるものを買うようにしている。ペンでメモを取るようになると、もうやめられなくなる。キーボードとマウスのように使い分ける必要がなく、絵も文字も自由に書ける。テキスト化は、音声の認識機能にまかせておけば、自分のメモに専念できる。

Windowsは1990年台からペンに対応しており、タブレットや2in1の一部でペンが利用できる。AndroidでもVer.6(マシュマロ。2015年頃)から正式にペンがサポートされた(それ以前からメーカーの独自実装の機種は存在した)。現在でも、機種は多いわけではないが継続的に製品化されている。また、Androidアプリケーションを動作させる必要からChromebookでもペンはサポートされており、最近では対応機種も増えてきた。

ペン対応のコンピュータは液晶面を保護する必要がある。これはペン先という小さな点に重量が集中するため、ガラスでできた液晶を保護する構造にしなければならないからだ。このため、本体の厚さや重量に影響がある。これは、モバイルコンピューターとしてはちょっと致命的な欠点でもある。また、モバイルでペンを使うときには、必然的に片手で本体を持つ必要があるため、13インチの液晶だと、かなり重さを感じてしまう。気軽に使うなら10インチが限界、できれば7~8インチで使いたい。

ペンにはわかりにくい部分がある。というのは、ペンのハードウェアは複数あり、対応するタッチパネルやセンサーと組み合わせる必要があるため、ペンならば、なんでもいいわけではない。ペンに対応していないタッチパネルも多いが、それでも使えるペンが存在する。電気的には単なる金属の棒と同等のもの。大半のタッチパネルは指先による静電容量変化を検出しているため、導体でできた棒状のもの(ペン)を素手で持てば指先と同じになるからだ。これもペンであることには違いないため、スマホやパソコンなら全部ペンが利用できると理解している人もいる。メーカーによっては、「アクティブペン」と呼んでこうしたペンと区別することがある。

「アクティブペン」は、原則メーカーの提供する純正品だけが利用できる。というのは、タッチパネルや液晶側にあるセンサーとペンの通信方式(プロトコルとも呼ばれる)には、標準がなく、各メーカーが独自に開発しているからだ。タッチパネルの構造や仕様が各社で異なるため、それに合わせたペンしか使うことができない。しかし、ペンには、特に方式を区別するものがないため、パソコンやタブレットで使われるペンはみんな同じように見える(写真01)。

  • 写真01: 下からD-WAV Seientific、N-Trig(MPP)、Synaptics、Wacom AES、同EMR方式のペン。残念ながらUSI方式のペンがない

ペンのハードウェアには、筆者が知る限り6種類の方式がある(表01)。個人的な範囲での調査だが、USIは複数メーカーがペンを製造しており、MPPにはサードパーティ製品が存在する。ChromebookやAndroidではWacom方式が使われていることを確認したが、ChromebookはUSIにも対応しているようだ(USI方式は手元にないため資料による確認しかしていない)。

  • ■表1

Windows 10では、ペンの性能向上や機能向上が目標の1つだった。Windowsのペン対応は、これで4世代目(表02)になる。当初はペン対応専用のハードウェアと専用のWindowsの組み合わせだったが、Vistaで統合され、Windows 7、8でタッチ機能との統合が行われた。Windows 10のWindows Inkプラットフォームは、その上でペン機能を改良した。タッチ、キーボード、マウスなどの入力機能を統合した仕組みの一部となり、ようやくWindowsの標準的機能として定着した感じがある。

  • ■表2

とはいえ、ペンというハードウェアは未成熟だ。たとえば、バッテリは最近では充電式が大半だが、バッテリ寿命が短く、利用前にはチェックが欠かせない。ワコムのEMR方式のようにバッテリ不要のものもあるのだが、Windowsの推奨仕様であるBluetoothボタンにはどうしても電力を供給する必要がある。充電タイプでは、外出先で困らないようにケーブルを持ち歩かねばならない。本体にペンを内蔵して充電するタイプだとペンの充電状態を管理しなくていいので取り扱いがラクになる。

Windowsでペンを使うなら、OneNote(Office365版とWindows 10添付版がある)がとりあえずのペンアプリになる。Windows 11ではMicrosoftストアからダウンロードできる。ペンでの書き込みが可能なほか、PDFファイルをドラッグ&ドロップすれば、確認ダイアログが出て、ページイメージを挿入でき、これに書き込みするといった使い方ができる。

「切り取りとスケッチ」(Windows 10。Windows 11ではSnipping Tool)もペン対応しており、キャプチャした画面にペンで書き込みができる。画像ファイルでは扱いにくいので、OneNoteのような画像とテキストでページを作成できるアプリケーションに貼り付けると管理しやすい。筆者は、ペンで書き込み、クリップボードにコピーして、クラウドベースのScrapboxのページに貼り付けて保存している。

7月20日は人類が初めて月面に降り立った日。というわけでタイトルの元ネタは、1983年の映画「The Right Staff」(邦題ライトスタッフ)である。この映画では、米国の初期の宇宙計画であるマーキュリー計画の宇宙飛行士(マーキュリーセブン)と、世界で最初に音速を超えた男チャック・イエーガーが登場する。クリント・イーストウッドの「Space Cowboys」(2000年。邦題スペースカウボーイ)と混同しないように注意しよう。