シャープの沖津雅浩社長兼CEOは、2025年4月1日、社内イントラネットを通じて、社員を対象に、「新年度のスタートにあたって」と題したCEOメッセージを配信。2024年度の最終利益が黒字になる見通しを初めて明らかにした。
2024年度に掲げた必達目標、念願の黒字化へ
シャープでは、2022年度、2023年度と2年連続で最終赤字となっており、2024年6月に就任した沖津社長は、2024年度の必達目標として、3年ぶりの最終黒字を掲げていた。
沖津社長は、CEOメッセージのなかで、「詳細はこれから集計するが、全社一丸となって業績改善に取り組んだ結果、最終利益は黒字となる見通しである。また、本業の儲けを示す営業利益も、第3四半期決算で上方修正したように、順当な着地となると考えている」とコメント。さらに、「過去2年連続で公表値を大幅に下回るなど、管理力に大きな課題が残っていたが、今期は全社をあげてリスクや変化の早期把握、迅速な対応に努めた結果、月次の業績見通しと実績との差が着実に縮まりつつある。こうした日々の努力が今回の結果につながった」と、事業体質の改善が進んでいることを自ら評価してみせた。
また、「最重要経営課題」と位置づけていたアセットライト化については、「おおむね決着を迎えつつある」とし、「約1年にわたる交渉を経て、3月14日に、ソフトバンクとの間で、グリーンフロント堺の土地および建物の一部譲渡に関する契約を締結した。さらに、KDDIとの交渉や、SFL(シャープ福山レーザー)の譲渡に関する鴻海との交渉についても、契約が最終段階に入っている」と報告した。
その上で、「2024年度は、皆さんの懸命な努力のおかげで、期初に掲げた重点目標をしっかりと有言実行できた1年となった」と、事実上の目標達成宣言を行ってみせた。
2025年度は「再成長」に舵を切る
一方、4月1日からスタートした2025年度については、「構造改革の1年を乗り越え、2025年度から『再成長』に舵を切る」と位置づけた。
現在、中期経営計画の最終検討を進めているため、再成長に関する具体的方針については、改めて話をする機会を設けるとしたが、「収益の源泉であるブランド事業に重点的にリソースを投下し、成熟事業から持続的成長が実現できる事業体へと革新していく」との基本姿勢や、「技術や人への投資も拡大し、将来の飛躍に向けた確かな成長基盤を構築していく」との考えも示した。
また、これらの取り組みを早期に具体化するため、中期経営計画の公表に先立ち、事業推進体制の見直しを行い、その内容についても説明した。
新たな事業体制に関しては、3月19日に発表しており、従来のスマートライフ&エナジー、スマートオフィス、ユニバーサルネットワークの3つで構成していたブランド事業を、AIoTの世界観を早期に実現して、“暮らす”の領域で新たな価値創造を目指す「スマートライフビジネスグループ」と、AIやIT、通信技術を融合して、“働く”の領域で新たな価値創造を目指す「スマートワークプレイスビジネスグループ」の2つに再編。さらに、2つのビジネスグループ長が、それぞれのグループの成長戦略に専念できる体制を構築したという。
また、経営チームでは、グローバルでの新規販路開拓に責任を持つCBDO(Chief Business Development Officer)と、DXの推進に責任を持つCDO(Chief Digital Officer)を新たに配置。先に触れた2つのビジネスグループ長をCo-COO(共同Chief Operating Officer)に任命することで、それぞれの役割と責任を明確化する。加えて、Smart Appliances & Solutions事業本部、スマートビジネスソリューション事業本部、通信事業本部の事業本部長の若返りも図った。
沖津社長兼CEOは、「2025年度からのテーマは『再成長』であり、新たな体制のもと、シャープグループの総力を結集し、未来を切り拓いていこう」とアピール。「今日から新たなステージへと歩みを進める。決して容易な道のりではないが、昨年1年間を乗り越えてきた社員さんとともに、必ず再成長を成し遂げ、シャープを復活させることができると確信している」と強気の姿勢をみせた。
3年ぶりの最終黒字によって、ようやく「シャープ復活」に向けたスタートラインについたといえる。2025年5月にも発表される中期経営計画が、力強い再成長戦略を描くものになるのかどうかが注目される。
今年の新入社員へ、「シャープらしさ」訴える
一方、シャープは、4月1日、大阪府堺市のシャープ本社において、2025年度入社式を開催した。昨年までは、本社を主拠点とし、各事業所とオンラインで結んだ形で開催していが、今年は、6年ぶりに本社での対面参加を基本として開催した。
今年の新入社員は402人で、そのうち、シャープ本体は261人。技術系が156人(男性が134人、女性が22人)、ビジネス系が105人(男性が64人、女性が41人)となっている。また、関連会社の新入社員は141人となった。
祝辞を述べた沖津社長兼CEOは、「入社にあたり、伝えたいことが3つある」とし、「経営理念・経営信条」、「ブランド企業“SHARP”の方向性」、「皆さんに心がけてほしいこと」について説明した。
「経営理念・経営信条」は、シャープ創業者である早川徳次氏の創業の精神を明文化したものと位置づけ、経営理念には、「事業」、「社員」、「ステークホルダー」の3つの観点から、シャープの目指す姿や企業としての在り方を示しており、経営信条では、「誠意と創意」として、理念の実現に向けて、社員全員が堅持すべき心構えを記していることに触れた。
「経営理念と経営信条の2つを大切にしてこそ、真似される商品や、独自の目の付けどころを持った商品によって、数々の世界初、日本初、業界初を生み出してきた『シャープらしさ』を発揮することができる。こうした精神をしっかりと受け継ぎ、誠意と創意ある仕事をしてくれることを期待している」とした。
「ブランド企業“SHARP”の方向性」では、2024年5月に発表した中期経営方針において、ブランド事業を中心とした事業構造の確立に取り組んでいることを説明。「2025年度は、再成長に舵を切る」と宣言した。「2025年度からの3年間は、ブランド事業への投資を大幅に増やし、グローバル事業拡大やビジネスモデルの変革に取り組む。さらに、将来に向けて、技術や人への投資も強化する。スマートライフビジネスグループとスマートワークプレイスビジネスグループによる新たな事業推進体制により、成長ステージへと歩みを進めていく。今後配属されるそれぞれの職場で、自身の能力に磨きをかけ、一日も早くシャープの成長の原動力となってくれることを期待している」と語った。
3つめの「皆さんに心がけてほしいこと」としては、「お客様の目線を大切にすること」、「自社の商品に対する感度を高めること」、「現場、現物、現実の3現主義の実践」、「先輩から学び、先輩を超す仕事へのチャレンジ」、「失敗を恐れるな!」といった点に言及した。
「自分たちの商品を売りたくなりがちだが、お客様や取引先などの要望や実現したいことをよく観察し、それに合致した商品開発やソリューション提供をしていくことが大切である。どんな部門の社員であっても、日頃から商品や機能を意識し、実際に経験することで自社製品に愛着をもって欲しい。改善すべき点や新たなアイデアがあれば、遠慮せず、開発部門や関連部門に積極的に提案してもらいたい。また、インターネットの普及によって机上で色々な情報が入ってくるが、実際に自分の目で見て確認することが大切である。店舗で来店客の声を聞くことで、シャープの製品が選ばれる理由や選ばれない理由がわかる」としたほか、「これから仕事のやり方や基本を学ぶことになるが、これまでのやり方が、今後も最善であるとは限らない。新入社員には、まっさらな状態で仕事を学ぶという強みがある。先輩からの教えは大切だが、それを単に実践するだけでなく、新しい手法を取り入れ、効率よく、うまくいく方法はないか、一度自ら考えてほしい。先輩を超す仕事にチャレンジするという気概を持って、業務に励んでもらいたい。世界をリードする米国大手IT企業や、成長著しい中国企業など、グローバルでの競争相手は、もの凄いスピードで、次々と新しいことに挑戦し続けている。何かに挑戦し、たとえ失敗したとしても、そのやり方では駄目という学びがあり、次の挑戦につなげることができる。挑戦せずに、じっとしていては何も得ることはできない。自分で考え、挑戦し、それが成果に結びついてこそ、仕事が面白くなる。まず、失敗を恐れず走り出してほしい」などと呼びかけた。