4K8Kテレビの国内普及台数が、東京オリンピック/パラリンピック開催期間中の2021年8月には、1,000万台に到達しそうだ。
一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)が発表した新4K8K衛星放送視聴可能機器台数によると、2021年4月までの累計出荷台数は860万5,000台となった。
2021年4月単月の出荷台数実績は32万2,000台。東京オリンピックが開催される7月までに1,000万台を出荷するには、月平均47万台の出荷が必要となり、達成はほぼ不可能とみられる。だが、開催期間中の8月までの4カ月間であれば、月平均35万台となり、1,000万台到達が視野に入る。
例えオリンピック中止でも… 1,000万台へ、いくつかの追い風
A-PABの木村政孝理事は、「一里塚である1,000万台の普及に向けて着々と進んでいる。東京オリンピック/パラリンピック開催期間中には、なんとか1,000万台を達成したい。オリンピックが開催されることが正式に決まればアクセラレートされる部分もあるが、開催されても、されなくても1,000万台に行きたい」と意気込む。
4K8Kテレビの普及に向けて追い風となる要因がくつかある。
2011年のアナログ放送終了にあわせて、2008年から2011年までに6,857万台のテレビが出荷されており、そこから10年を経過していることで、これらのテレビが買い替え時期に入っている。買い替え時にはより大きな画面で視聴したいというニーズや、これから先のことを考えると新4K8K衛星放送に対応したテレビが欲しいというニーズがある。新チューナー内蔵テレビへの参入メーカーも14社に増加し、ラインアップが増えており、「商品の多機能化により、バリエーションが豊富になった一方で、低価格化も進み、ユーザーの選択肢が格段に増えている。最近目立っているのは、有機ELテレビの好調ぶりであり、4月は新チューナー内蔵テレビの2割を占め、前年同月比2.7倍になっている」(木村理事)といった要素も追い風となる。
木村理事は、「1世帯に1台だと想定すると、新4K8K衛星放送視聴可能機器の世帯普及率は16.1%に達している。マーケティング理論では、イノベータは2.5%、アーリーアダプターが13.5%と言われており、合計すると16.0%であり、4K8Kテレビは、まさにこれからアーリーマジョリティのステップに踏み込む段階に入ってきたともいえる。今後は本格普及のためにどうするかといった議論を始めていく必要がある」とした。
なお、4月時点末までの860万5,000台の内訳は、新チューナー内蔵テレビが593万7,000台、外付け新チューナーは25万5,000台、新チューナー内蔵録画機器が95万4,000台、CATV受信用の新チューナー内蔵セットトップボックスが145万9,000台となった。
新チューナー内蔵録画機器(4Kレコーダー)が、2021年1月以降、出荷台数が減少傾向にあるが、「新チューナー内蔵テレビに外付けHDDを接続したり、4KテレビのなかにHDDが内蔵されたり、BDに焼くことができるテレビも増加している。4Kレコーダーでなくても、機能がカバーされる状況が生まれている。こうした動きが加速していることが4Kレコーダーの出荷台数に影響している」と説明。業界全体としては大きな課題としては捉えていない模様だ。
本格普及を見据えコンテンツの充実は進むのか?
一方、NHKおよびBS民放5社は、2021年6月を「新4K8K衛星放送で見ようよ!月間」とし、共同制作番組を放送する。ここでは、新4K8K衛星放送の何がすごいのか、新4K8K衛星放送はどうやって見られるのかといった素朴な疑問に答えるほか、6月に放映される各局の4K8K番組を紹介する。
BS編成担当者会議の荒井昭博主査(=BSフジ常務取締役)は、「新4K8K衛星放送は、2021年6月に開局2年半を迎える。放送局側も4K8Kコンテンツの作り方をかなり会得してきた。これまでの撮影現場では多くのライティングが使用されていたが、4Kでは、これが少なく撮影できており、この仕組みをうまく利用している。女優にもたくさんのライトを当てなくても美しさを伝えられる。これまでは作られたきれいさだったが、4K8Kでは自然なきれいさ、美しさを表現できるようになった。青の表現にも優れており、自然に近い映像をオンエアできる。また、黒の美しさにも優れている。昼間のサッカーの試合では、スタンドの影に隠れて、選手の動きやボールの動きが消えることがあったが、4Kではそれがしっかりと見ることができる。黒のなかの黒がしっかりと表現できる。作り手側もそれを引き立てて映像を作っている。さらに、フィルムのデジタル化においても、4K8Kは威力を発揮している。各局が映画に力を入れているのもそのためだ」などと説明した。
現在、民放におけるピュア4K比率は約20%であり、「新4K8K衛星放送で見ようよ!月間」となる6月は、この比率が高まるという。
なお、「新4K8K衛星放送で見ようよ!」キャンペーンで共同製作したエンドロールに表示される「せいさく」の文字は、放送局によって「製作」、「制作」にわかれるが、今回は製作現場における多数決により「製作」に統一して表記したという。ちなみに、「製作」と表記しているのは、BS日テレ、BSテレ東。「制作」としているのはBS朝日、BS-TBS、BSフジ、NHK。
A-PABの相子宏之理事長は、「2020年12月に実施した第1回目の『新4K8K衛星放送で見ようよ!キャンペーン』は、NHKと民放共通の番組やスポットを製作、放送するという、あまり例がない取り組みの効果もあり、12月単月の新4K8K衛星放送視聴可能機器台数は過去最高の実績となった。2021年に入っても、比較的順調に推移している。4K8K放送への満足度は高いものになっており、各局の努力で4K8Kコンテンツも増えている。3月にはWOWOWも4K放送を開始した。こうしたコンテンツを、視聴に向けてしっかりと周知、広報し、新4K8K衛星放送をより多くの人に楽しんでもらいたい」と語った。
なお、衛星放送用受信環境整備事業(電波漏洩対策助成金制度)についても説明。これまでに戸建住宅、集合住宅あわせて約7万9,000世帯に助成した実績があることを示した。
新4K8K衛星放送の左旋の電波は、Wi-Fi機器や電子レンジなどと同じ周波数を利用しており、同軸ケーブルが露出している増幅器や分配器などの箇所は、相互干渉が起こることになる。同制度では、電波法に規定された「技術基準」を守る対策を行うため、その改修経費の一部を国が助成する制度だ。
A-PAB 4K8K推進センター長の宇佐美雄司氏は、「電波漏洩対策助成金制度は、2018年度から実施しているが、2021年度が最終年度となっている。予算も限られており、早めに申請してほしい。詳しくはA-PABのホームページか、コールセンター(0570-048-068)に問い合わせてほしい」とした。