日本市場への参入は後発ながら、コストパフォーマンスの高さを武器に低価格帯を中心として市場開拓を進めてきた、中国のスマートフォンメーカー大手であるオッポとシャオミ。ですが、コロナ禍や記録的な円安などで市場環境が非常に厳しくなるなか、両社の日本市場戦略にはかなり大きな差が出てきているようです。

厳しい市場環境を経て2社の戦略に大きな変化が

2023年に国内のスマートフォンメーカーが撤退したことで、存在感を高めている海外メーカー。なかでも、日本への参入はかなりの後発ながら市場開拓を積極的に進めてきたのが、中国のスマートフォン大手であるオッポとシャオミです。

実際、両社が日本市場への参入を打ち出したのはオッポが2018年1月、シャオミが2019年12月と、ここ5、6年のこと。ですが、両社はともに世界のスマートフォン出荷台数シェアでトップ5に入る規模を持ち、そのスケールメリットを生かしたコストパフォーマンスの高い製品を相次いで投入。加えて、従来海外メーカーが消極的だったFeliCaへの対応を積極的に進めるなど、ローカライズにも力を入れたことで日本の消費者の支持を高めてきました。

  • オッポは2018年の参入ながら、FeliCaの搭載や高いコストパフォーマンスで人気となった「OPPO Reno A」の投入で急速に人気を高めてきた

とはいうものの、両社の参入以降、日本のスマートフォン市場は非常に厳しい環境となっており、国内メーカーの相次ぐ撤退もその環境変化が非常に大きく影響しています。コロナ禍による半導体不足、そして記録的な円安の長期化などによって、海外で生産するスマートフォンの価格は軒並み高騰。コロナ禍の前後で、スマートフォンの価格水準はミドルクラスで3万円台から5万~6万円台、ハイエンドで10万円台から20万円前後へと、大幅に上昇して購入しづらくなってしまいました。

加えて、2019年以降は政府によるスマートフォンの値引き規制が一層厳しいものとなっています。低価格帯の製品に強みを持つ2社にとって、この規制は当初プラスに働いたのですが、スマートフォン自体の価格高騰によって最近では規制がむしろデメリットに働くようになってきました。

そうしたことからここ数年の動向を見ていると、2社ともに一時は日本に投入する製品のラインアップが大幅に減少するなど、非常に厳しい状況にあった印象です。ですが、そうした状況を経た2024年、両社が投入する製品のラインアップを見ると、戦略にかなりの違いが出てきていることが分かります。

“攻め”のシャオミと“守り”のオッポ、功を奏するのは

厳しい市場環境にありながらも、あえて積極路線を打ち出しているのがシャオミです。2024年5月には、ミドルクラスのスマートフォン「Redmi Note 13 Pro 5G」「Redmi Note 13 Pro+ 5G」の2機種だけでなく、最上位のフラッグシップモデル「Xiaomi 14 Ultra」を高額ながらあえて日本のオープン市場に向けて投入しています。

  • シャオミは2024年5月に、スマートフォン新製品の1つとしてフラッグシップの最上位モデル「Xiaomi 14 Ultra」を日本市場に投入。ライカカメラと共同開発した非常に高い性能を誇るカメラが高く評価され、人気となっているようだ

さらに、2022年以降新機種の投入がなかったオンライン専用の「POCO」ブランドに関しても、海外で発表されたばかりの最新モデル「POCO F6 Pro」を日本市場に投入。積極的な製品投入を図っていることが分かります。

  • およそ2年ぶりに「POCO」ブランドの新機種「POCO F6 Pro」も投入する。こちらも、海外で発表してすぐに日本での発売を打ち出すなど、力の入れ具合が見て取れる

シャオミとしては、厳しい市場環境で競合が減少しているなか、あえてリスクを取って攻めの戦略を打ち出すことで、消費者の支持を高めてシェア向上につなげようとしているのでしょう。実際、Xiaomi 14 Ultraは非常に高いカメラ性能を備えながらも、海外よりもかなり安い価格で販売されていることもあって、高性能なフラッグシップを欲している人からかなり好評なようです。

一方で、オッポは新製品投入には慎重な姿勢を崩していないようです。実際、オッポが2024年に投入しているのは、記事執筆時点では2月に発売されたエントリークラスの「OPPO A79 5G」と、6月20日に発表したミドルクラスの「OPPO Reno11 A」の2機種のみとなっています。

  • オッポが2024年6月20日に発表した新機種「OPPO Reno11 A」。ミドルクラスの「Reno A」シリーズの最新モデルだが、単に性能向上が図られただけでなく、生成AIを活用した「AI消しゴム」も後日アップデートで提供されるという

オッポの「A」シリーズと「Reno A」シリーズは、ともにこれまで日本市場に向けて継続投入されてきたもの。加えて、先に触れた2機種はいずれもオープン市場だけでなく、楽天モバイルとソフトバンクの「ワイモバイル」ブランドでも販売がなされています。そうしたことを考えると、オッポは環境改善が進むまで、安定して販売できるモデルの確実な投入を重視する、慎重な戦略を継続して生き残りに重点を置いているのではないかと考えられます。

厳しい環境下でまったく異なる戦略を取る両社ですが、現在の市場環境がいつまで続くかは見通せず、それぞれの戦略の成否を見据えるのは非常に難しいといえます。短期間で終わるようであれば、攻めの姿勢を取るシャオミに優位に働くでしょうし、長く続くようであれば慎重姿勢を取るオッポに分があるようにも感じますが、それも今後の動向次第というのが正直なところではないでしょうか。