パーツをケースへ取り付ける
さて、今回はケースへ各パーツを取り付けていく作業を紹介していきたい。ここでは、ドライバーを使ってネジを締める作業が頻発するが、基礎知識としてPCの組み立てにおいては2種類のネジが使われることを覚えておきたい。
具体的には、ネジの間隔が広いインチネジと呼ばれるものと、間隔が狭いミリネジと呼ばれるものだ。取り付けるパーツによって、どちらを使うかが異なるので、文中で紹介していく。
ケースと電源の準備
まずは、ケースの準備であるが、これは一般的なミドルタワーケースであれば側面パネルを外すだけである。多くのパーツは正面から向かって左側だけのパネルを開ければ作業は行えるようになっているが、ドライブ類の固定では右側のパネルを外す必要がある場合もあるが、このあたりはケースによっても異なるところ。
そして、電源が付属していないケースを利用する場合は、まず最初に電源ユニットの取り付けを行っておこう。取り付けの向きは、電源ユニットのファンを塞がない向きを前提として、電源ケーブル類の取り回しがしやすい向きにするといいだろう。ただし、ちょっと古いケースだと電源ユニットを固定する背面のネジ穴の向きが制限されている場合もある。電源ユニットは重いうえに最上部に設置されるパーツであるため、この場合は固定を最優先してネジ穴の位置を合わせて取り付けるようにしよう。なお、電源の取り付けはインチネジを利用する。
まずはケースの側面カバーを外すところからスタート。写真ではドライバーを用いてケースを外しているが、手で回せるローレットスクリューを用いたケースも珍しくない |
側面カバーを外したケース内部。ここにすべてのパーツを取り付けていくことになる |
ドライブ類の取り付け
次に、ケースへドライブ類を取り付けておく。光学ドライブは前面から、HDDは背面から取り付けるケースが一般的。ちなみに、今回利用しているASUSTeKの「TA-211」の場合、フロントパネルを外さないと光学ドライブが取り付けられない仕様になっている。これは、光学ドライブの前面部をケース自体で化粧カバーとして覆ってしまうからだが、こうしたケースは少なくない。
フロントパネルの外し方はケースのマニュアルを参考にしてほしいが、一般的には前面カバーの一部がケースシャシーに差し込まれる格好で固定されているだけで、ドライバーなどを用いずに外せることが多い。また、ケース自体が化粧カバーを兼ねるケースの場合は、ドライブの位置もうまく調整する必要がある。これはイジェクトボタンが正しく押されなくなることを防ぐためで、ネジ穴とフロントパネルの位置の両方を見て、適切な位置を測ってほしい。
それに比べるとHDDの取り付けは楽で、裏面側から差し込んでネジ穴の位置を合わせて留めるだけである。注意する点があるとすれば、HDDに差し込むコネクタがマザーボード上に被さる位置になることが珍しくない点で、マザーボード上のコネクタ類の邪魔にならない位置をイメージして複数あるHDDベイから取り付ける場所を選ぶとベターだ。ちなみに、光学ドライブにはミリネジ、HDDにはインチネジが利用されるので間違えないように注意したい。
光学ドライブは前面側から挿入する。このケースではフロントカバーを外す必要があったが、すべてのケースでこの作業が必要とは限らない |
光学ドライブの前面部を覆うようにケース自体が化粧カバーとして機能する場合は、光学ドライブのネジ穴の位置と前面のせり出し位置を細かく調整しよう |
マザーボードの取り付け
さて、いよいよ前回用意したマザーボードをケースに取り付ける作業だ。とはいえ、マザーボードを取り付ける前にもやるべきことがある。それがスペーサーとIOリアパネルカバーの取り付けだ。
まず、スペーサーとはマザーボードとケースの間に挟み込むパーツである。マザーボード上の電気のショートを防いだり、ケースとの間に隙間を設けることで冷却に生かすなどの役割がある。このスペーサーはケースによっていくつかの種類があり、付属しているものを取り付けることになる。なお、ケースにはマザーボードのサイズに合わせて非常に多くのネジ穴が用意されているので、使用するマザーボードのネジ穴に合った位置へスペーサーを取り付けておこう。
ここで一つ確認しておきたいポイントがある。それは、ネジの種類の確認だ。というのも、スペーサーによってミリネジを使うものとインチネジを使うものがあるからである。マザーボードを実際に取り付ける前に、軽くネジを当ててみることで、どちらのネジが適合するか判別できるだろう。
次のIOリアパネルカバーであるが、これはマザーボードによって搭載されているインタフェースに違いがあるため、適合するものがマザーボードに付属している、これを単にはめ込むだけである。上下の向きに注意すれば、それほど気を遣う作業ではない。
そして、いよいよマザーボードの装着となるが、これはネジ穴の数が多いので面倒ではあるが、決して難しい作業ではない。IOリアパネルのインタフェースがすべて顔を覗かせているか確認し、先ほど確認した種類のネジを留めていくだけだ。
ケースとマザーボード間にはさむスペーサー。中央のものはケースのシャシーそのものが加工されたもので、右側にある金色のものが自分で取り付ける必要があるもの。多くのケースでは、この金色のスペーサーをマザーボードのネジ穴の位置に合わせて取り付ける必要がある |
マザーボードを置き、ネジで留めていく。ケーブル脱着時などに起こるマザーボードの"しなり"を防ぐために、面倒でもすべてのネジを取り付けたほうがいい |
ビデオカードの取り付け
このあたりから、さらに組み立ての順番はまったく問われないといってもいいほどで、とりあえずビデオカードの取り付けを紹介するが、ケーブルを引き回すさいにビデオカードが邪魔になりそうであれば、先にケーブル類の接続を行ってしまっても問題はない。作業しやすい順序で進めてほしい。
なお、今回はビデオカード以外の拡張カードを取り付けないが、ここでTVキャプチャーなどの拡張カードを一緒に取り付けてもかまわない。ビデオカードや拡張カードのインタフェースが並ぶ背面部をブラケット部などと表現するが、このブラケット部が差し込まれるケースのスペースが開けられていないことがある。これはネジで金属パーツを外せばOKなものや、その部分の金属を切り取る必要があるものなどケースによって違いはある。どちらにせよ、ビデオカードや拡張カードが取り付けられる個所のスペースを空けなければならない点に違いはない。
この点を解消したならば、あとはカードを取り付けてネジ留めするだけである。このネジは一般にインチネジが使われるが、ケースによっては稀にミリネジの場合もあるので、無理な力をかけずにスムースにネジ留めできるネジを選択してほしい。なお、ネジ留め後にカードがスロットに正しく装着されているか、念のため目視しておこう。
フロントインタフェースのケーブル接続
続いては、フロントインタフェースのケーブルを接続していく。フロントインタフェースとは、ケースの前面に設けられた電源スイッチやLED類。そして、USBやオーディオ入出力、IEEE1394端子のことを指している。これらのインタフェースはマザーボード上のヘッダピンへケーブルを接続することで利用できるようになる。
この作業は非常に注意を要する作業で、電源スイッチやLED類はプラス・マイナスの属性を判別して、ヘッダピンへ正しいレイアウトで取り付けていく必要がある。USBやIEEE1394、サウンドなどは、電源や信号ピンなどの配置がさらに複雑になる。マザーボード上の印刷やマニュアルを見ながら正しい位置で接続する必要があるのだ。ここではラジオペンチを利用すると便利だろう。
さらに、第3回でも紹介したASUSTeKのQ-Connecterは、ここで活躍する。ケースの最深部へ手を伸ばすことなく、Q-Connecterへフロントインタフェース類のコネクタへ取り付けておき、マザーボード上へはまとめて取り付けができるのだ。最近では他社でも似たようなコネクタを付属する例が見られるが、作業の簡便化はミスを防ぐことにもつながり、非常に意義のある独自機能といえる。
ケースフロント部にある電源スイッチや電源LED、各種インタフェースなどを利用するには、マザーボードのヘッダピンへケーブルを接続する必要がある |
フロントインタフェース用のケーブル。ケース前面部からケーブルが延びている |
電源スイッチやLED類はプラス・マイナスの属性に注意。このケースでは三角のマーキングでプラスを判別するが、黒いケーブルをGNDとして判別するなどケーブルの色で分けられていることも多い |
ASUSTeKのQ-Connecterを利用すると、マザーボードに取り付ける前にスイッチなどのコネクタを取り付けられて便利 |
残ったケーブルの接続
最後に残ったケーブルを順番に取り付けていく。取り付けるべきケーブルは、
- メイン電源
- ATX12V電源
- PCI Expressビデオカード電源(※)
- ケースファン電源
- 光学ドライブの電源およびインタフェースケーブル
- HDDの電源およびインタフェースケーブル
といったところ。PCI Expressビデオカード電源は、ビデオカードにコネクタを備えている場合のみ接続する必要がある。ここは、形状の合うものを確実に接続していく点に心がければいいだけだ。
そして、最後に簡単でもいいのでケーブルを束ねておこう。これは、CPUクーラーやケースのファンに当たってしまうことを防ぐことが大きな目的だ。また、ケース内の空気の流れをできるだけ遮らないという目的もある。ケーブルの固さや太さ、そしてある種の芸術的センスに左右される作業ではあるが、ケーブルを断線させないという点に注意しつつ、きれいに束ねるようにしよう。
24ピンのメイン電源コネクタ。電源ユニット側のコネクタは20ピン+4ピンで分離するものが多いが、4ピン側が浮いてしまうことがあるので、ちゃんと接続されているか確認しておきたい |
ATX12V電源と呼ばれるコネクタ。デュアルコアCPUで使用する場合は、とりあえず4ピンでOK。クアッドコアCPUを利用する場合は8ピンとなる |
最後に側面パネルを元通りに戻せばハードウェアとしてのPCは完成である。次は完成したPCの動作確認とWindows Vistaのインストールについて紹介していく予定だ。
(機材協力 : ASUSTeK Computer)