2017年5月17日に成立した「銀行法等の一部を改正する法律(通称: 改正銀行法)」の施行予定日が近づいている。金融庁は2018年6月1日を予定日としているが、同法の施行で注目すべきは、オープンAPI導入の努力義務だ。金融制度ワーキンググループは「金融機関におけるオープンイノベーションの推進にかかわる措置」の1つとして先の項目を掲げており、メガバンクはもちろん多くの地方銀行も対応済みである。

API(Application Programming Interface)はOSやサービスが保持・運用するデータや機能を、他のシステムから呼び出す際、簡潔なコード記述を可能にするインターフェースだが、オープンAPIはインターネットの普及に伴い、現在では標準的な機能として用いられるようになった。開発現場に詳しい方なら、2005年にJohn Musser氏が立ち上げたAPI情報サイトProgrammableWebもご承知だろう。

全国銀行協会は、改正銀行法の観点からオープンAPIを「銀行と外部の事業者との間の安全なデータ連携を可能にする取組み」と述べ、銀行などが保持するデータを事前に契約を結んだ外部事業者(電子決済等代行業者)にAPIとして公開することで、利用者に価値を提供する金融サービスを実現するものだと説明している。つまり、企業や政府機関が公開するAPIも広義の意味では"オープンなAPI"だが、今現在オープンAPIと称する場合は、改正銀行法で実現した金融機関が公開するAPIを指す。

このような仕組みを有識者や政府が後押しする理由は、銀行が法令上で固有業務や付随業務、周辺業務といった役割を定めており、民間企業のように自由な発想でビジネスを創出するのが難しい存在だからである。とある銀行マンは講演で、「我々は保守的な思考に陥りやすい。フィンテック的なアプローチを行うには、組織全体の改革が必要だ」と述べている。そのため、政府が枠組みを取り払い、方向性をうながす必要があるのだ。

だが、オープンAPIへの取り組みは始まったばかりである。オープンAPIには、顧客のために送金の指示の伝達まで行う1号業務の「更新系API」、顧客に対して口座情報を取得し提供する2号業務の「参照系API」を定義しているものの、前述した金融機関が対応するのは後者のみ。改正銀行法施行後、2年以内(2020年6月)にオープンAPI体制整備を努力義務として課しているものの、多くの金融機関は「検討中」「対応開始時期は未定」としている。つまり、現時点では銀行口座情報を取得して一括管理することは可能ながらも、送金振り替え指示は不可能なため、物品購入時はこれまでどおりクレジットカードなどを使わなければならない。ここが変われば経済流通は大きく様変わりするだろう。

阿久津良和(Cactus)