全国シニアeスポーツ大会実行委員会は、シニア向けeスポーツ全国大会「LEGEND CUP」の決勝大会を3月27日に富山県高岡市にあるTakaoka eParkにて開催します。JeSUの全国支部の協力により、15地域が参加予定。すでに予選大会は開催されており、3月中旬には決勝大会への出場選手が決まります。
LEGEND CUPは参加条件が60歳以上の高齢者向け大会。『SPACE INVADERS INVICIBLE COLLECTION(スペースインベーダー)』と『太鼓の達人 NintedoSwitchば~じょん!(太鼓の達人)』の2タイトルを採用します。
eスポーツは、体力に依存しないことから、老若男女、身体的障害の有無による有利不利が少ないと言われています。また、オンラインで日本全国どこからでも参加できる手軽さもあります。不要不急の移動や多くの人が集まることが難しいコロナ禍においても、その利点は大きく発揮されるでしょう。
高齢者にとって、大きく体力を使うこともなく、地元に居ながらにして全国大会に参加できるeスポーツは、まさにうってつけ。ゲームは健康促進やフレイル予防にも使われており、プロや学生のeスポーツ以上に、今後発展する可能性があると言っても過言ではありません。
3月17日には、決勝大会に先駆け、LEGEND CUP エキシビションマッチの開催が行われました。エキシビションマッチでは、大会プロデューサーである富山県eスポーツ連合の堺谷陽平会長、富山県新田八郎知事、NTT西日本 富山支店 宮崎俊之支店長の3人による鼎談も行われました。
エキシビションマッチは、富山県のTakaoka eParkと兵庫県のeSPARKLe KOBEからリモートによるオンラインで行われました。『スペースインベーダー』と『太鼓の達人』でそれぞれ1名ずつの代表者が対戦。『スペースインベーダー』は残機6の状態で3分間プレイし、スコアの高い方が勝利となります。『太鼓の達人』は「夏祭り」「おどるポンポコリン」「さんぽ」の3曲をかんたんモードでプレイ。勝敗はスコアで争われ、3曲中2曲の勝利した選手の勝ちとなります。
まずは『太鼓の達人』で勝負。奇しくも女性同士の対決となり、「おどるポンポコリン」は富山県県代表の八坂瑞子さん(70歳)が、「夏祭り」は兵庫県代表の藤原桂子さん(60代)が勝利。最終戦である「さんぽ」では見事富山県代表八坂さんが勝利しました。
『スペースインベーダー』対決は、富山県代表の山谷智春さん(65歳)が2連勝で勝利しました。トーチカを利用し、相手の攻撃を避けつつインベーダーを倒すスキルはみごと。UFOも的確に撃墜しており、インベーダーブーム当時にかなりやり込んだのではないでしょうか。惜しくも敗れた兵庫県代表の浜田幸一さん(60代)も、2試合目は1面で1000点を超える高得点をたたき出し、見せ場を作っていました。まさに「LEGEND CUP」に相応しいレジェンドプレイヤーたちのハイレベルの対戦だったと言えるでしょう。今回エキシビションマッチに出場した選手は、本戦にも出場する予定なので、さらなる活躍に期待したいところです。
イベント終了後には、新田県知事、宮崎氏、堺谷氏にエキシビションの感想やLEGEND CUPの意気込みを聞きました。
「富山県は、これまで各市町村でさまざまなeスポーツイベントを開催しています。今回のエキシビションマッチを手始めに高齢者向けの大会は順次開催していきたいですね。若者向け、特に高校生向けの大会も県の主催でやってみたいとも思っています。あとは、実証実験として今行っているのですが、観光関連でeスポーツのプロ選手と一緒に何かやれないかと模索中です」
そう話すのは、富山県の新田知事。富山県はeスポーツにかなり力を入れており、実際、今回のエキシビションマッチで使用した高岡市にあるTakaoka eParkでは、eスポーツイベントを頻繁に開催しています。また、高校のeスポーツ活動も活発で、全国大会への出場経験もあるそう。観光×eスポーツの取り組みとしては、九州のeスポーツチームのSengoku Gamingに協力してもらい、バーチャル観光を実施したことがあります。
「エキシビションマッチは大いに盛り上がったと思います。今回は富山と兵庫の2県でしたが、本戦は15県集まるので、今回の比ではないくらい盛り上がるでしょう。応援や参加者に地域性も出てくると思いますし、楽しみですね。みなさんゲームがうまくて、eスポーツに年齢が関係ないことを実感しました。エキシビションマッチでは男性2名女性2名と、性別も気にせず参加してもらえたのはうれしかったですね」
高齢者の新たな生きがいとしてeスポーツに取り組んでもらえるよう、高齢者の健康管理や地域振興などにもeスポーツを役立てたいと、意気込みを語ります。
次にNTT西日本 富山支店 宮崎俊之支店長にNTT西日本が参加する意義について聞きました。
「NTT西日本では、eスポーツ選手のバイタルデータを可視化するサービス、ココロの視える化を推進しています。今回のLEGEND CUPはNTT西日本が目指す方向性とあっていると感じたため、協賛として参加しました」
NTT西日本では、ゲームの対戦結果だけでなく、対戦しているときの選手の状態や感情を可視化することで、選手に寄り添った応援ができるような取り組みを実施しています。そこでは、応援する声や数なども対戦する画面に反映し、どちらが応援されているか反映できるようにしているとのことでした。
「今回のエキシビションマッチを見て、自分以外がゲームをプレイしている姿に一喜一憂できました。正直、ここまでの感情移入ができると思っていなかったので驚いています。観るコンテンツとしての魅力は十分にあるでしょう」
より多くの人に観てもらいたいと、宮崎俊之支店長は自信をのぞかせます。
最後に、富山県のeスポーツ業界を牽引してきたJeSU富山支部堺谷陽平会長に高齢者向けの大会を企画した目的を聞きました。
「富山県ではeスポーツを活用したさまざまな取り組みを行っています。高齢者向け自体も2年前から開始していますが、eスポーツはいろいろな方に楽しんでもらるので、今回、全国規模の大会を開催することにしました。ただ、ことさら高齢者、シニアであることを押し出したくなかったので、タイトルはLEGEND CUPとさせていただきました」
これまで高齢者向けに開催したeスポーツイベントは、ゲームに慣れ親しんでもらうためのものが多く、対戦は珍しい取り組みと言えます。
「イベント後のアンケートでは、『イベントで若い人と話せた』という声を多くいただきました。スタッフの大学生との交流も楽しんでもらえたようです。コロナ禍でも、ゲームに慣れ親しんでいる層はオンラインで対応しています。しかし、高齢者や子どもはオンライン環境を使いこなすことが難しく、そこをフォローするイベントを開催していきたいと思っています」
eスポーツは老若男女の区別なくプレイできるところが魅力と言えますが、経験の差からまだまだ若者文化である側面は拭いきれていません。
まずは高齢者同士で楽しむことで、ゲームやeスポーツに親しみを持てるようになるのではないでしょうか。一度ハマってしまえば、時間的余裕と人生経験の豊かさで、あっという間に若者に追いついてしまうかもしれません。若者とベテランがガチで対戦する将来を夢見て、まずはプレイ層を広げるLEGEND CUPの成功に期待します。