2019年も東京ゲームショウ(TGS)の季節がやってきました。私は例年通り、9月12、13日のビジネスデイと9月14、15日の一般公開日、計4日間フル参戦。毎年、某メディアの依頼で取材をするのですが、今年は特定のブース担当を外れ、eスポーツを中心にイベントやカンファレンスなどを取材しました。

これまでTGSといえば「新作ゲームの見本市」という色合いが強かったのですが、近年、インディゲームや物販、声優ライブ、コスプレ、そしてeスポーツなど、「複合イベント」に姿を変えつつあります。なかでも昨年から圧倒的な存在感を見せるのがeスポーツ。TGSの会場である幕張メッセのホール9~11に設置されたステージ「e-Sports X RED / BLUE STAGE」では、終日eスポーツイベントが開催されており、とりわけ一般公開日の2日間は、『鉄拳7』『ぷよぷよ』『DEAD OR ALIVE 6』『ストリートファイターVAE(ストV)』などの大きなeスポーツイベントが行われました。

また、自社ブースでeスポーツイベントを開催する出展者も多く、TGS中は「幕張メッセのどこかしらでeスポーツイベントが行われている」状態。同じ時間にいくつものeスポーツイベントが重なり、どれを観るか悩んでしまうことも。

  • 9月14日にe-Sports X BLUE STAGEで行われた「鉄拳プロチャンピオンシップ 日本代表決定戦 2019」

  • 9月15日にe-Sports X BLUE STAGEで行われた「ぷよぷよチャンピオンシップ SEASON2 TGS特別大会」

  • 9月14日にe-Sports X RED STAGEで行われた「DEAD OR ALIVE 6 World Championship The Fatel Match in Japan」

年々規模が拡大するTGSのeスポーツイベント

TGSで行われていたeスポーツイベントはどれも大きな盛り上がりを見せていましたが、なかでも注目度の高かったイベントは格闘ゲーム『ストV』の「CAPCOM Pro Tour 2019 アジアプレミア」ではないでしょうか。これは、1年を通して世界中で開催されるストVのプロツアー大会の1つ。しかも、年末に行われる「カプコンカップ」に出場するために必要なポイントを最も多く稼げる「スーパー」の位置づけです。

優勝賞金は500万円で、獲得できるポイントは1,000ポイント。予選を14日にまる1日かけて行い、勝ち抜いた8人が15日の決勝ステージに立ちます。誰でも出場できる「オープン大会」ということもあり、参加人数は1,000人オーバー。かくいう筆者も予選に参加しており、大会の雰囲気を肌で感じてきました。

  • 取材の合間に参加してきました。記念参加的に出場できるのはオープン大会ならでは

  • プロゲーマーのジャスティン・ウォン選手(写真左)と、まちゃぼー選手(写真右)。プロ選手の試合を間近で観られるのも魅力

決勝トーナメントが行われるe-Sports X BLUE STAGEでは、入場前から長蛇の列ができるほど大盛況。座席はすぐ埋まってしまい、予備スペースや立ち見スペースまでぎっしりです。2018年も盛り上がっていましたが、今年はeスポーツやプロゲーマーの知名度がアップしたからか、熱狂度合いは段違い。選手のプレイ一つひとつに観客が反応し、特に手に汗握る展開の多かった人気プロゲーマー、マゴ選手の試合では、スタンディングオベーションが起きるほどでした。

  • 『ストV』の「CAPCOM Pro Tour 2019 アジアプレミア」に詰めかける観戦者。あっという間に満席になり、会場は立ち見が出るほど

また、プロゲーミングチーム「父ノ背中」によるエキシビジョンマッチは、ビジネスデイに行われたにも関わらず満席。これまで興味本位でeスポーツを観ていた人が多かった状態から、好きなチームの試合を観にくる状態に変わってきたことを実感しました。

  • eスポーツチーム「父ノ背中」によるエキシビションマッチ。人気の高いチームだけあり、こちらも満席に近い状態でした

ゲームメーカー以外のブースも拡大傾向に

カプコンのブースでは、アクションゲーム『モンスターハンターワールド:アイスボーン』の試遊などを実施。アイスボーン自体はTGS直前にリリースされましたが、次回アップデートで追加される予定の新モンスターを試遊できたため、ビジネスデイ、一般公開日ともに多くの人が押し寄せました。また、ブースにはその新モンスター「ラージャン」のオブジェが展示されていて、こちらもフォトスポットとして注目を集めていました。

  • 『モンスターハンターワールド:アイスボーン』に登場予定の「ラージャン」のオブジェ

また、『龍が如く7』や『新サクラ大戦』など、ビッグタイトルが目白押しだったセガブースも人、人、人! そして、スクウェア・エニックスブースも大盛況。一押しのタイトルは2020年3月に発売される予定の『ファイナルファンタジーVII リメイク』でしょう。最新トレーラー映像も流れており、多くの人が足を止めて見入っていました。

  • セガブースに展示されていた『ペルソナ5R』のアルセーヌ。撮影するだけでも楽しいのがTGSです

  • 『ファイナルファンタジーVIIリメイク』が人気だったスクウェア・エニックスブース

そのほか、2018年まではフードコートとして使われていた「イベントホール」では「ファミリーゲームパーク」を開催。人混みが激しいTGSですが、ファミリーゲームパークは比較的空いていたので、子ども連れのファミリー層も安心できたのではないでしょうか。運営としてもいささか持て余していた感じのあったフードコートだけのスペースよりも、うまく活用できていた印象です。

  • 今年からイベントホールはファミリーゲームパークに。子ども連れが楽しめるイベントやゲームの試遊台を用意。本会場より比較的空いているので、お父さんやお母さんも安心です

  • 2018年までホール内にあったフードコートは、ホールの外に移動

  • 東京ゲームショウといえば、Monster Energy。今年も無料配布していました

さて、2019年も大盛況だったTGS。大手ゲームメーカー以外の出展では、その年のムーブメントを確認できる機会でもありますが、今年もやはりeスポーツが色濃く出ていると感じました。

その象徴ともいえる1つが、ゲーミングチェアを販売するメーカーのブースです。AKRacingやDXRacer、Bauhutteなどゲーミングチェアでお馴染みのメーカーが例年以上のブースサイズで出展していました。ほかにもPC周辺機器メーカーやゲーミングPCメーカーも多く、PCメーカーでは、デル、マウスコンピューターレノボ・ジャパン、日本HPなどがブース出展。比較的コンシューマ機が中心だったTGSで、PCを多く見かけるようになったのは日本でもゲーミングPCが普及してきた証拠でしょう。

また、ドコモブースでは『ストV』のプロゲーマーを招き、香港、マレーシア、シンガポール、韓国の4つの国と地域の代表が戦う「Asia Invitational 2019」を開催するなど、ゲームと親和性の高い5Gをアピールしていました。

  • ゲームと関連が強い5GをアピールするNTTドコモブース

ほかにも、会場を彩るコスプレイヤーの周囲には相変わらず多くの人が集まっていましたし、物販ブースはオープン早々に売り切れるアイテムが出るほど。インディゲームコーナーも独特の熱量があるうえに、ゲームのクオリティはメジャーと変わらないレベルまで達しています。初めてインディコーナーに立ち寄った人は、そのレベルの高さに驚くでしょう。

冒頭で述べたように、いまやTGSはゲームに関わるありとあらゆる体験ができる複合イベント。そのため、いままで知らなかった楽しみに出会える場になっているともいえるのです。たとえば、「コスプレ」や「物販」を目的に来場した人が、たまたま通りかかったeスポーツイベントに触れて、その魅力に気づくこともあるでしょう。

2019年のTGSは入場者数が26万2076人でした。2018年の29万人を下回る結果となりましたが、直前に千葉を襲った台風の影響や入場料の値上げなどが影響したのかもしれません。ただし、会場の規模を考えると、来場者数はほぼ飽和状態です。今後は分散化を検討する必要があるのではないでしょうか。

個人的には「eスポーツイベント」や「ライブイベント」を別枠で扱うのがベストだと考えます。なぜなら、eスポーツ単体でもかなりの集客を稼げるところまで成長しているためです。もちろん、複合イベントの魅力は残す必要はありますが、eスポーツやライブをTGSのスピンオフイベントとして別開催することで、入場者の分散がはかれるだけでなく、ユーザーの楽しみも増えるというものです。