日立アプライアンスが10年ぶりにフルモデルチェンジした、11月19日発売のドラム式洗濯乾燥機「ビッグドラム BD-NX120A」。日立製作所 研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ 製品デザイン部CDP3ユニット 主任デザイナーの大木雅之氏がデザイン担当責任者を務めた

日立アプライアンスが11月19日に発売した、ドラム式洗濯乾燥機「ビッグドラム BD-NX120A」。大容量のドラム槽を装備した洗濯乾燥機として同社が2006年に発売して以来、10年ぶりの大リニューアルが図られた新製品だ。

製品の機構・設計も含めて一から見直しが行われた結果、デザインも大幅に一新された。そこで今回は本製品のデザイン担当の責任者である、日立製作所 研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ 製品デザイン部CDP3ユニット 主任デザイナーの大木雅之氏にデザイン面を中心に話を伺った。

フォルムを一新、その目的は

まずは新製品のデザイン面で消費者の目を引くのが丸みを帯び、四角くまとまったフォルムだ。これまでの同社のドラム式洗濯機はもちろん、他社のラインナップと比較しても独特だ。そこで筆者は最初からデザイン性を意識して開発が進められたのかと尋ねてみたが、答えは「ノー」だった。

大木氏曰く、新製品の開発コンセプトのスタートはあくまでも"大容量化"にあったとのことだ。

旧製品(右)との比較。洗濯容量が11キロから12キロへ増量したが、縦横の設置面積は同じサイズだ

「洗濯機に対する消費者のニーズは、まとめ洗いや大物洗いといった大容量化にシフトしてきているんです。しかし、2006年の発売から10年経ち、これまでの筺体のままでは容量をアップするのに限界が見えてきたんです。そこで今回、洗濯容量12キロというスペックを目指し、フルモデルチェンジに踏み切りました」

旧製品と比べると、横から見た際にフラットで、空間にスッキリとなじむデザインとなっている

本体サイズは「変えなかった」理由

新製品は、洗濯容量が従来の11キロから12キロに増量された。しかし、従来の設置サイズを維持したまま、高さも1センチほど高くなっている程度で本体サイズはほぼ変わっていない。同社にとって新製品の一番の挑戦はこの点にある。設置サイズを変えないことにこだわった理由を大木氏は次のように説明する。

「日本家屋ではサニタリースペースというのは非常に限られている上に、搬入経路でも制約があります。つまりこれ以上設置床面積が大きくなってしまうと、設置が不可能なために購入できないケースが多く発生してしまうんです。そこでこれまでの設置床面積を死守した上で大容量化するというのが最大のテーマでした」

そこで同社では、内部構造を変えることでドラム槽の容量を増やしていくことが検討されたという。新設計のバランサー、サスペンション、減衰ラバーといった洗濯槽の振動を抑制する部品を採用することで、ドラム槽の角度や配置の最適化が図られた。

開発初期段階で制作されたというミニチュア模型。まずは小さな模型を作成して新製品のデザインの大まかな方向性が決められたという

実寸のペーパー模型で問題点を洗い出し

曲面を検討するために作られたという模型。どれくらい丸みを持たせるかを模型をもとに確認し、比較検討が重ねられた

大木氏によると、これらは開発の初期の段階から実物大のペーパー模型をいくつも作成し、工場の組み立て担当者なども交えて量産も見据えた問題点を洗い出しながら細部まで詰められていったとのことだ。

「3D CAD上でデザインする際には大きさまではわかりません。実際に作ってみた段階で『こんなに大きいんだ』と気付くケースも多々あります。そこで今回は必ず原寸大にして模型を作り、大きさの感じやボリューム感を立体状にして確認する作業を徹底してやりました」と大木氏は語った。

原寸のラフ模型。実際のサイズ感やボリューム感を確認するために、最終的にはすべて原寸大で模型が作成された

内部構造も模型を制作して再現。工場のスタッフが手に取り組み立て時の問題点などの検討に使用されたそうだ。紙製ながらその精巧さに驚く

次回は操作部などに込められたユニバーサルデザインについて語っていただいた。こうご期待。