各種周辺機器で知られるエレコムが「ナトリウムイオン電池」を使用した世界初のモバイルバッテリーを開発、発売を開始する。
27W(9,000mAh)のモバイルバッテリーで、最大45W出力のUSB Power DeliveryやそのオプションであるPPS規格に対応し、充電時の入力も30Wとなっている。スマホのみならず、ノートパソコンでも対応できそうだ。製品特設ページも開設され、この新世代バッテリーの普及を狙う。
モバイルバッテリーといえば、リチウムイオンバッテリーが多くの製品に使われている。だが、最近の発火事故、爆発、火災事故が多発している状況を鑑み、エレコムではより安全で高寿命なリン酸鉄リチウムイオンの採用に積極的だった。そして、その安全性をさらに追求したのがナトリウムイオンバッテリーの採用だ。
安全性が高く長寿命なナトリウムイオンバッテリー
ナトリウムイオン電池には4つの特長があるという。
安全性:バッテリーの耐性試験で知られる釘刺ししても発火しにくい。
少ない環境負荷と人への優しさ:ナトリウムは地球に多く存在し、入手も容易で環境負荷が少ない。
広い使用環境温度のレンジ:砂漠でも雪山でも使える50℃からマイナス35度の使用環境。
5000サイクルの長寿命:一般的なモバイルバッテリーが500サイクル程度で寿命を迎えるのに対して寿命が長い。
いいことばかりのように思えるが、デメリットもある。サイズが大きく携帯性が悪いのだ。そして価格もまだ高価だ。この製品の場合、重量は350gなので、同じ程度の容量を持つ一般的なモバイルバッテリーの倍近い重量だ。
モバイルバッテリーの安全性は重要な社会課題だ。年初には韓国で旅客機の火災事故が発生したが、原因はモバイルバッテリーだった。機内の荷物収納から炎があがったそうだが、こうした事故の発生から飛行機へのモバイルバッテリーの持ち込み規制がますます規制されるようになるかもしれない。
また、リチウムイオン電池が内蔵された電化製品が一般のゴミといっしょに捨てられて、ゴミ収集車で発火するような火災も発生している。
「危険」の認識広がる、バッテリーの発火リスク
バッテリーの発火は、バッテリーそのものの劣化による内部からの膨張に衝撃が加わることや、最初から品質の低いモバイルバッテリーの仕様、安全装置の機能不全、さらに外部からの衝撃や圧力、水漏れなどが原因になっていることが多い。
こうした事故を避けるためにPSEマークのついた製品を選ぶように業界は呼びかけている。また、ユーザー側も、熱対策を徹底することや強い衝撃を与えないように注意することが必要だ。あやまって落下させてしまったようなとき、外観には何の問題もなさそうに見えても、内部的な破損があって、最終的に発火につながる可能性もある。
日本の電気用品安全法に基づく安全規格を示すマークとして知られるPSEを取得した製品は安全の証でもあるが、この製品に使われているナトリウムイオンモバイルバッテリー使用時の法律が対応できていないため、PSEを取得していない。ただ、エレコムでは、PSEを取得するための同じ評価は実施しているとのことだ。
ポータブル電源などへの応用にも期待大
気になるのは廃棄時だが、エレコムが運営する実店舗の「エレコムデザインショップ」に持参すれば回収してもらえるほか、エレコムのサポートセンターでも回収する。ただ、現時点では地方自治体や量販店などの電池回収BOXでは対応していない。だが、この製品を廃棄しなければならないであろう10年以上先にはきっと対応しているはずだ。
個人的には5,000回という、これまでの10倍相当のサイクル数にも期待したい。今回の製品はモバイルバッテリーだが、同様の技術を使ったポータブル電源などへの応用にも期待したいところだ。日常的に使わない電源を非常時に使うだけではなく、これだけのサイクル数が確保できれば、日常利用しながら10年近く使える可能性もあるからだ。