この連載では2011年に東日本大震災が発生した3月11日と、2001年に米国で同時多発テロ事件があった9月11日、半年に一度、身の回りの防災グッズの点検などを呼びかけ、天災、人災に備える意識を喚起することにしている。そして、今年(2025年)も3月11日がやってきた。
個人的には、手元にある2台の大容量ポータブル電源を満充電にするのがいちばん大きなミッションだ。
ポータブル電源、2年間の放置で残り容量がゼロに
実は、満充電状態で放置したバッテリがいったいどのくらいで自然放電してしまうのかを知りたくて、1台のバッテリをこの2年ほど何もせずにしまいこんでいた。
今回、気になってチェックしてみたら残り容量を表示する液晶バックライトが点灯しない。充電用のACアダプタを接続すると、実に残り容量が0%になっていた。危ないところだった。もちろん半日かけてフル充電状態に戻した。
もう1台は2024年の9月にソーラーパネルを試したときにフル充電していたAnkerの535 Portable Power Station(PowerHouse 512Wh)だったが、こちらは半年たっても100%をキープしていた。日常的に利用することがなくても油断せず、少なくとも1年に一度のチェックは重要だ。半年に一度の頻度でのチェックならより安心だ。
こうした据置型のバッテリは重量級なので、クルマなどの移動手段が使えない災害時に、自宅から持ち出すのは難しい。それを補完するのがモバイルバッテリだ。日常的に使っているモバイルバッテリでもいいのだが、今回は、Xiaomi 165W Power Bank 10000mAhを紹介したい。
30分でフル充電できるハイパワーモバイルバッテリ
この製品は、充電ケーブルが直付けされた超高速充電対応のバッテリだ。仕様を見ても現在の事実上の標準規格であるUSB Power Delivery対応とは記載されていないので、ちょっと不安になるのだが、同規格ではXiaomi ハイパーチャージ等、他の規格との共存が非推奨とされているからだと思われる。実際、USB PDでのネゴシエーションが優先され、対応機で正常に急速充電できる。
容量は36Whで重量は315gとなっている。一般に、この重量なら倍の容量を持つモバイルバッテリが手に入りそうだが、このバッテリの最たる特徴は入出力の対応電力だ。
内蔵ケーブルでの出力は120W、入力は90Wとなっている。もっとも100W超の充電に対応するノートパソコンやスマホ類はなかなかないのでその恩恵を得られることは少ない。それに36Whの容量では一般的なノートパソコンに実装されている50Wh前後のバッテリをフル充電するのは難しい。でも、スマホを2回弱程度はフル充電できるだけの実力はある。
バッテリ本体を充電するときに90W対応しているというのは心強い。つまり空になっても一気にフル充電に戻すことができる。スペックでは15分間で最大75%の充電が可能とされているが、実際に試してみたところ75%まで20分程度、フル充電までには30分超かかるようだ。
それでも十分に高速だ。スペック以上に時間がかかるのは、バッテリ側、充電器側双方が本体で発生している熱などを入念にチェックして安全側に制御している結果なのだろう。もちろん急速充電のためには100W対応のACアダプタを別途調達する必要がある。内蔵ケーブルは100W超に対応したケーブルなので、それを100W対応のアダプタに接続して電力供給を受ければいい。
災害現場などで日常的な電力供給が絶たれることを想定すると、避難所などで限定的にしか電力を使えない可能性を考える必要がある。ACコンセントが使えても一回30分までといった制限もあるかもしれない。そんなときに、ちょっとでも高速に充電ができて、手持ちの電力ストックを備蓄できるのは心強い。
マグネットでくるくるまとまるUSB-Cケーブル
一方、スマートガジェットメーカーとして知られるCheeroとMotteruから相次いでマグネットケーブルが発売された。cheero USB-C to USB-C Magnetic Cable(CHE-280)とマグネットケーブル PD240W対応 USB-C to USB-C (MOT-MGCC100)だ。
どちらもケーブルそのものが磁力を帯びていてケーブル同士がくっついて簡単にまとまるようになっている。ケーブル長は約1メートルだ。ケーブルバンドなどで束ねる必要もなく、収納時の手間がない。なんとなく手のひらの中でくるっとまとまる。絡まる心配もない。
また、Motteruの製品は240W対応で将来的なことを考えても心強い。どちらの製品もウェブでは丸まった状態でデスクサイドなどに貼り付けることができるとあるが、試したところ接面部分によっては自重でずり落ちてしまうこともあるようだ。
災害時などの現場はバタバタしていて移動も多く、撤収や設置を繰り返さなければならないときには、こうしたケーブルが役に立ちそうだ。日常的に使うにも便利だ。
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美しい巻き方は順巻き。だが、使いやすいのは逆層巻き。ケーブルをまとめるときの職人技で、両端をひっぱるとまっすぐになる。でも、巻き取った状態では美しくない……。詳しくは音と映像のプロ集団ヒビノ社のコーポレートブログで
ラッキーなことに、防災グッズの出番はまだない
ノートパソコンやこれらのグッズをまとめて持ち運ぶためのポーチ類も使いやすいものを選びたい。
新しいものではMotteruの「sofumo ノートパソコンバッグ 13.0~14.0インチ 裏起毛 インナーバッグ タブレットケース PC」がよくできている。クッション材と裏起毛の内装がリッチで、中に入れたノートパソコンを包み込んで入念に保護できる。14型ノートパソコンがラクに収納できるサイズで、ほぼ同サイズのモバイルディスプレイを入れるのにもいい。この造りで重量が150gしかないというのも魅力だ。
こうして、あれがあれば便利、これがあったらもっと便利とやっていると、いつのまにか防災グッズが増えすぎて持ち出すのに苦労するという本末転倒な状態にもなりかねない。常備しているグッズを使う機会がなかったのはラッキーだったと考えることにしたいが、何ごとも、やりすぎにはご注意を!