あちこちから申し込んだオリンピックのチケット抽選が全滅で一枚も当たらなかったという嘆きがきこえてくる。少なくとも、身の回りの知人友人で当たって喜んでいる声はほんとうにわずかだ。

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判然としないチケットの行方

1年も先の予定などわからない。おそらく1年先の今頃は、日本全体、というよりも東京が丸ごとオリンピック一色で通勤通学もままならない状態なのだろう。だから、経済活動はほとんど休止に近い状態だろうから、いつ予定を入れても観戦とバッティングするようなことは起こらないかもしれない。とはいうものの、どの競技がどのように当たるかを考えつつ、あの複雑怪奇なオリンピックのチケット申し込みサイトを使って申し込みをするのは、どうにも納得するのが難しい。

そもそもオリンピックのチケットというのは、いったいどのくらいの席数があって、1次の抽選ではどのくらいが消化されたのか。そして、1次の抽選で1枚も当たらなかった人に対する敗者復活戦では、本当に売れなかったチケットだけが対象になるのか、それとも別途追加のチケットがあったのか。また、開幕までの間に、またさらに追加で発売されるのかどうかもわからない。当日券的なものがあるのかどうかも不明だ。

スポンサー各企業は、巨額の協賛金を支払った対価として、ある程度の座席を確保してもらい、それを商品のキャンペーンなどに使っている。そのチケット枠はいったいどのくらいあるのか、そして、そのチケットはすべて、割り当てられた企業が消化することになるのか。

いろいろとわからないことだらけのオリンピックチケットである。価格についても、“上”を見ると途方もない値段がついている。

開会式チケットが買えた長野五輪

個人的に、1998年の長野オリンピックのときには、開会式のチケットをなんとか入手して見物することができたが、東京オリンピックに比べれば価格はずっと低く抑えられていた。安くはなかったががんばって払って見たいと思えるくらいの額だった。長野の駅前はダフ屋が毎日のように出てきて、チケットをさばいていた。意外にリーズナブルな価格で当日のチケットを手にすることもできた。また、市街地で表彰式が行われたが、会場への入場は無料だった。でも、それほど混乱はしていなかった。

チケットの購入に際して、インターネットを使った電子的な販売をするというのは賛成だし、早いもの勝ちではなく抽選というのもいいと思う。そこは長野のときから大きく変わった時代を感じる。けれども、その手順があまりにも複雑だ。これでは、ある程度以上年配の方たちには、購入すること自体が難しいのではないだろうか。かといって、旅行代理店などが宿泊などとパックにして売っているチケットはべらぼうに高価で手を出すのも難しい。

ITは整備されても混沌は残る

だいたい、地方の個人が東京オリンピックを見たくてチケットを購入したとして、運良く当選したとしても、その日に東京に宿泊するためのホテルなどを見つけることができるのかどうか。百歩譲って東京都心に宿泊するのは無理でも、静岡や宇都宮くらいに宿を確保できればいいのだが、移動手段はどうすればいいのだろう。 オリンピック期間中の公共交通機関についても、終夜運転をするのかどうかといった情報は今なお明らかになっていない。とにかく、チケットが欲しいなら買え、あとのことは自分であとで考えろという印象しかない。

本当にこんなことでオリンピックを呼んだ価値が見出せるのか。東京都民にとっては自分たちの払った都税がたくさん使われているにもかかわらず、都民優先枠がなかったりするのも腹立たしく感じているかもしれない。

とにかく謎だらけのオリンピックチケット。こればかりは、どんなにITが整備されたところで解決されないのだろう。それに踊らされる日本という国。本当になさけない話だ。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)