ここ数回、自宅のテレビをスマートテレビにしてみてはいかがでしょう?という方向のテーマを取り扱っている。そして、その結論は「宅配DVDレンタルと『TSUTAYA TV』を利用する」というスマートとは対極的なアナログチックなところに落ち着いた。
しかし、もし自宅のテレビがネットに対応していてTSUTAYA TVを利用できるのであれば、これが現時点での最強のスマートテレビになることは間違いないと思う。さらに、これにHDDレコーダーでもあれば、地上波やBSなどのテレビ番組、ドラマ、映画なども録画できるわけで、見る時間が足りないほどのコンテンツがそろうことになるだろう。そして、現在使っているテレビが数年後に故障してから、本格的なスマートテレビに買い替えるというのが現実的だ。
「スマートテレビ」は何が「スマート」なのか?
では、どんなテレビだったら「スマートテレビ」と呼べるのだろうか。最近は、ネットに接続できて、「アクトビラ」などのレンタル映像サービスが利用できれば「スマートテレビ」と呼ばれることもあるようだが、これは単なる「ネット接続対応テレビ」で、"スマート"というほどのことはない。そこで、今回は、スマートテレビがどんなものになるのかを予測してみよう。
まず重要なのが、インターネットにWi-Fi(無線LAN)経由で接続できるという点だ。大型テレビの場合、有線LAN接続でもいいような気がするが、このコラムで何度も指摘しているように、インターネットのコンセントは電話系、テレビのコンセントはテレビ系と、離れた場所に設置されているケースが多い。電話系コンセントはドアの近くに、テレビ系コンセントは部屋の奥に設置するのが従来の常識だったからだ。もちろん、最近ではすべてをまとめたマルチメディアコンセントが登場しているが、まだまだ普及しているとはいえない。都市部の新築マンションで採用されている程度だ。そのため、有線接続をしようとすると部屋の中にケーブルを走らせなければならない。
ネット接続できるだけのテレビは既にかなり普及している
すでにデスクトップパソコンでも、Wi-Fi接続が標準機能になってきている。テレビもWi-Fi接続を標準にしないと、なかなかネット機能を利用してもらえないのだ。事実、ネット機能があっても実際に使っている人はそう多くない。電子情報産業技術協会(JEITA)の統計によると、IPTV(インターネットに接続できて動画サービスが利用できるテレビ)の出荷台数は、JEITAが統計をとり始めた2009年4月から累計台数を発表した2011年4月までの間に、約2,368万台(累計)が出荷されている。これは薄型テレビ全体の57%にあたる。その後、アナログ停波のあった7月までにテレビは爆発的に売れているので、現在のところIPTVは約3,000万台程度とみなしていいだろう。
一方で、動画サービスの利用状況はなかなか伸びていない。ほとんどのIPTVに内蔵されているアクトビラの利用者数はようやく400万人を越えたにすぎない。アクトビラは入会金、利用料ともに無料で、しかもテレビからなら会員登録をしなくても利用ができ、無料で利用できる情報や動画もある程度そろっている。テレビをインターネットに接続したら、ほとんどの人が利用したことがあると思われるるサービスだ。つまりアクトビラの利用者数(厳密には累計接続台数)は、ほぼそのままテレビをネット接続している人数と考えていいはずだ。
しかも、アクトビラはテレビだけでなく、レコーダーやチューナーなどからも接続できる。つまり、3,000万台のIPTVがあって、アクトビラの利用者が400万人だから、せっかくIPTVをもっていても1割強の人しかネット接続をしてない計算になる。これは明らかに接続の面倒さが原因だ。スマートテレビというからには、Wi-Fiでネット接続できなければならない。
Wi-Fi接続こそが「スマートテレビ」の条件?
Wi-Fi接続できるということは、単にケーブルを使わなくていいというだけのことではない。マルチスクリーン化への道が開けるのだ。例えば、スマートフォンやタブレット端末はWi-Fi接続にほぼ100%対応している。テレビ放送やレコーダーに保存されている番組をスマートフォンやタブレットで見ることも、著作権的な問題を別とすれば、技術的には難しいことではない。逆に、スマートフォンやタブレットで再生している動画をテレビに出力するということも簡単にできる。
さらに、インターネットを利用した視聴もできるだろう。外にいても、海外にいても、スマートフォンなどからアクセスして、録画した番組を見られるようになる。こういったマルチスクリーン化が簡単にできるようになるのだ。
このようなマルチスクリーン化をほぼ実現しているのが「Hulu」だ。Huluはパソコンで視聴する海外ドラマ、映画などが月額1,480円で見放題のサービスだが、対応しているテレビもあり(まだ機種は多くないが)、iPhoneやAndroidケータイなどのスマートフォン、タブレットなどにも対応している。3G回線でも十分に番組が楽しめるので、自宅にいても外出先でも楽しめる(国外にいた場合は、著作権の問題から視聴できない)。もし視聴を途中でやめて自宅に戻ってきても、今度はテレビでその続きから見ることができるのだ。
もちろん、自宅にいるときは、家族全員でテレビで見てもいいし、ベッドでスマートフォンを使って見てもいい。
Wi-Fi接続が可能にするレコーダーいらずのテレビライフ
このようなWi-Fi接続、マルチスクリーン化が簡単にできるテレビであれば、将来的にはHDDレコーダーは不要になるだろう。インターネットの見逃し系サービス(「NHKオンデマンド」や「もっとTV」など)やアーカイブ系(「Hulu」「TSUTAYA TV」「AppleTV」など)が、テレビからでもスマホからでもタブレットからでもパソコンからでも自由に利用できるようになれば、わざわざ自分でHDDに録画する手間も必要なくなるからだ。
もし今後、テレビを買い替える時期になって、スマートテレビを選ぶのであれば、Wi-Fiネット接続は必須の機能だ。個人的には、有線のケーブル接続でネット対応するテレビには「スマートテレビ」を名乗ってほしくない。ただ、ネット機能を利用できるだけでは意味がない。ネットの良さを活かして、より便利な使い方ができるテレビでなければ"スマート"とはいえないからだ。
ところでもうひとつ、スマートテレビに重要な機能がある。それはCCD(カメラ)を搭載することだ。「なんでそんなものがスマート?」といぶかる方もたくさんいるだろう。しかし、カメラ機能を搭載することが、スマートテレビのスマートたる由縁になる。次回は、このカメラ機能の機能についてご紹介したい。
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