時間をかけてつくった書類、重要な個人情報、思い出の写真など、Macを長く使うにつれ大切なデータは増えていきます。もし、そのデータに突然アクセスできなくなったとしたら……困りますよね。今回は、バックアップとあわせて利用したいMacの自己診断機能について解説します。
突然のデータ消失を防ぐために
内蔵ディスクの故障でデータ消失……経験はありますか? 忘れはしません、私は2度経験しています。最初は7年前、MacBook(White)の内蔵HDDに保存していた単行本の原稿が吹き飛びました。1冊まるごと消失することはありませんでしたが、テキストのみならず資料、画像など一式が失われたため、その本はお蔵入りです。
2回目は昨年、現役を引退した家族共用のMacBook Proで起こりました。ある日突然、システムが起動しなくなったのです。電源を投入しても、画面はずっと白いまま……換装したSSDの故障でした。仕事では使わないマシンで経済的ダメージはなかったものの、バックアップは1カ月に1度程度だったため、その間に保存した家族旅行の写真やビデオが消えてなくなりました。これは、原稿消失よりショックでしたよ。
このような悲劇を招かないためには、まめなバックアップあるのみです。幸いMacには「Time Machine」がありますから、外付けディスクをつないでしばらく放置するだけで、内蔵ディスクをシステムごとバックアップできます。マメささえあれば、これでファイル消失の憂き目にあうことはないでしょう。
それにしても、"内蔵ディスクの突然死"は事前にわからないものでしょうか? 浸水させてしまった、落下させてしまったといったわかりやすい判断材料があるのならともかく、HDDが異常音を発しても意外に気付きにくいものです。ましてやSSDはほぼ無音ですから、対策しようもありません。
ひとつあるとすれば、「S.M.A.R.T情報」の監視でしょう。この情報をまめにチェックしていれば、内蔵ディスクの異常を早めに察知できるかもしれません。今回は、その方法をお教えしましょう。
「S.M.A.R.T.」を確認しよう
現在販売されているHDD/SSDの多くは、自己診断機能「S.M.A.R.T.」(Self-Monitoring, Analysis And Reporting Technology)に対応しています。電源投入回数や使用時間、読み書きのエラー率などの最新情報が出力され、噛み砕いていえば"内蔵ディスクのおよその寿命"がわかります。
現在販売されているMacは、すべてS.M.A.R.T.に対応していますから、システムの隅々を注意深く見るとその情報が表示されています。アプリケーションの「ユーティリティ」フォルダにある「ディスクユーティリティ」を起動し、サイドバーで内蔵ディスク(通常はいちばん上の行)を選択してみましょう。画面右下の「S.M.A.R.T状況」欄に「検証済み」と表示されていれば、差し当たっての問題はありません。
「エラー」と表示された場合は、すぐに内蔵ディスクをバックアップしましょう。内蔵ディスクになんらかの問題が発生しているため、近いうちに物理的な障害が発生する可能性大です。Time Machineでディスク全体をバックアップしている時間的余裕すらないので、取り急ぎ重要な書類をメモリカードなどにコピーすることをお勧めします。Time Machineの実行は後回しです。
もっとも、「エラー」などの警告を受けるのはラッキーなほうで、現実は障害発生によってディスクの寿命を知るケースが大半なようです。それに「ディスクユーティリティ」では、S.M.A.R.T.が持つ情報がほとんどわかりません。
そこでお勧めしたいのが、オンラインソフト「SMARTReporter」です。最新バージョンは有償(4.99$)ですが、旧バージョンであれば無料で利用できます。有償版より機能が少なくサポートはありませんが、「ディスクユーティリティ」をはるかに超える情報を得られます。
使い方はかんたん、アプリケーションフォルダへ「SMARTReporter」をコピーし、起動するだけです。問題が確認されていないときには、メニューエクストラ上のHDDアイコンが緑色に点灯して安全を知らせます。クリックして「環境設定」を開き、controlキーを押しながら内蔵ディスクをクリックしてみましょう。「S.M.A.R.T.属性」を選ぶと、詳細情報を確認できます。
ところで、MacBook AirなどのMacに採用されているSSDは、必ずしもS.M.A.R.T.に詳細な情報を出力するとはかぎりません。筆者のMacBook Air(Mid 2013)では、問題があるかどうかは判定できたものの、SSDにおける重要な情報「書き込み回数」を確認できませんでした。MacBook Airに採用されているSSD(MLC型)の書き込み上限は1万回と言われていますから、よほど高頻度に書き込みを繰り返さないかぎり当面心配はないものの、このツールでは寿命が近いかどうかはわかりません。やはり、まめなバックアップがデータ消失を防ぐ鉄則のようです。