• ジャパンディスプレイ代表執行役社長 CEOの明間純氏

    ジャパンディスプレイ代表執行役社長 CEOの明間純氏

ジャパンディスプレイ(JDI)は、2025年度上期(2025年4月~9月)連結決算を発表。そのなかで構造改革の進捗状況について説明した。

同社では再建計画として、「BEYOND DISPLAY戦略」を推進する一方で、財務面では、債務超過からは抜け出せない厳しい状態が続いている。

2025年度上期末(2025年9月)時点での総資産は、マイナス41億円と、債務超過の状態が続いている。

  • 2025年度上期末(2025年9月)時点で、マイナス41億円の債務超過

    2025年度上期末(2025年9月)時点で、マイナス41億円の債務超過

人員半減で茂原も手放し、来期の黒字化に言及

ジャパンディスプレイ代表執行役社長 CEOの明間純氏は、「茂原工場の土地、建物の譲渡により、できるだけ早く債務超過の状況を脱したい」とコメント。ジャパンディスプレイ 執行役員 CFOの平林健氏は、「2025年度第1四半期末の129億円に比べると、改善が図られている。茂原工場の土地、建物は、年内の売却を進めたいと考えているが、仮に年度末までに売却益の計上ができなかった場合には、管理銘柄に指定され、債務超過が回復できない場合には上場廃止となる。年内での債務超過解消を目指す」とした。

  • ジャパンディスプレイ 執行役員 CFOの平林健氏

    ジャパンディスプレイ 執行役員 CFOの平林健氏

JDIでは、2025年5月15日に、茂原工場の土地および建物を、いちごに譲渡することで基本合意している。

実施していた希望退職プログラムについては、1500人程度の募集人員目標に対して、応募者数は国内で1483人となり、「おおむね目標を達成した。これにより、年間135億円の人件費削減を見込んでいる。退職日は2027年3月31日までであり、生産状況や設備撤去の状況に連動して実施していくことになる」と説明した。人員削減後は約1000人規模の体制になるという。

  • 希望退職プログラムはおおむね目標通りに進んだ

    希望退職プログラムはおおむね目標通りに進んだ

また、茂原工場は、2026年3月までにパネル生産を終了することを計画していたが、これを2025年11月に前倒しで終了することも発表した。

明間社長CEOは、「茂原工場では、計画的、効率的に生産を行い、顧客へのパネル供給を計画通りに実行し、要望をもらったすべての数量を生産して、供給責任を果たすことができた。また、生産終了を前倒ししたことで費用も削減できる。従業員、顧客、サプライヤーに感謝したい」とし、「茂原工場の転用については、複数社から意向表明を受けており、条件面を精査しているところである。AIデータセンターへの転用を早期に実現したい」と語った。

  • 茂原のパネル生産終了の時期は2025年11月に前倒し。AIデータセンターへの転用を急ぐ

    茂原のパネル生産終了の時期は2025年11月に前倒し。AIデータセンターへの転用を急ぐ

明間社長 CEOは、「2025年10月には、全社組織の再編を行い、固定費削減と再建に向けた取り組みが進んでいる。新体制はシンプルで、フラットな組織となり、、スピーディな意思決定ができる。今後は、茂原工場の資産譲渡に伴う利益計上により、財務健全性の回復を見込む。これらの施策を完遂することで、2026年度の黒字化を確実に達成する。BEYOND DISPLAY戦略を具現化し、コスト削減と収益向上施策の効果により、損益分岐点を大幅に低減して、持続的な成長基盤を構築する」と述べた。

JDIでは、2024年度には3085億円の損益分析点を、2026年度には630億円に引き下げる計画を打ち出している。

  • 黒字化の目安となる損益分析点売上高は2026年度に630億円まで下がる見通し

    黒字化の目安となる損益分析点売上高は2026年度に630億円まで下がる見通し

なお、2025年10月を予定していた車載事業を行うAutoTechの子会社化は、2026年4月に延期となったが、「AutoTechを子会社化したあとに向けて、複数の協業先と話を進めている。2025年10月に実施した組織再編では、AutoTechを社内カンパニーと、意思決定の迅速化を進めている」という。車載分野は、米国関税影響もあり市場環境は厳しいが、差別化が可能なプレミアム領域に注力していく考えを示した。

また、財務体質改善では、「知財子会社株式の譲渡や、在庫削減活動などにより、万全な運転資金の確保にも取り組んだ」と自己評価してみせた。

  • 10月1日からの新体制。スピーディな意思決定ができる体制を目指す

    10月1日からの新体制。スピーディな意思決定ができる体制を目指す

明間社長CEOは、2025年6月に社長に就任してからの約5カ月を振り返り、「構造改革に取り組み、半数以上の従業員に退職してもらうという辛いことから進めている。会社の雰囲気も決して良くない状況だった。だが、会社に残って、がんばって行こうという仲間とともに、話をしながら再建に取り組んでいるところである。夏過ぎからは、お客様と会い、先々への期待の声ももらっている。そうした声に応えるためにも、これからも事業再建に取り組んでいきたい」と語った。

「BEYOND DISPLAY戦略」の進捗は?

「BEYOND DISPLAY戦略」の中核となるディスプレイ、センサー、半導体パッケージの各分野の進捗状況についても説明した。

明間社長 CEOは、「3分野のうち、下支えをするのはディスプレイである。なかでも、産業分野での拡販に注力する。センサー、半導体パッケージも、複数の顧客からの受注、共同開発の話が進んでいる。少し時間はかかるが、将来の成長には欠かせない分野」と位置づけた。

ディスプレイ分野では、産機用途ディスプレイにおいて、石川工場の4.5世代の液晶パネル生産に適した少量多品種によるプレミアムモデルを提供。鉄道車両向けディスプレイでは、欧州規格のEN50155認証を取得し、欧州の鉄道各社や車両メーカーに対して、拡販を進めているという。新たにテレワーク用ブース向けという特定領域に向けても、カスタム製品を開発。さらに防衛用途を含む、多様な領域に販売を拡大していることも強調した。

透明インターフェイスの「Rælclear」は、CEATEC 2025でのブース展示や、大阪・関西万博のインフォメーションカウンターでの採用、東京2025デフリンピックでの活用を進めており、生成AIを組み合わせた対話により、利便性を高めているという。「東京2025デフリンピックでは、約100台のRælclearを設置し、ユニバーサルコミュニケーションに貢献する」という。

また、LEDディスプレイ用基板ビジネスでは、薄型軽量のLEDディスプレイ向けフレキシブル回路基板を新たに受注したほか、LTPS技術を活用した新製品ラインアップを増やしたという。「LEDディスプレイ用基板ビジネスは、顧客からの強い要望がある。新たなビジネスとして立ち上げたい」とした。

VR向けディスプレイについては、「受注があれば、石川工場で生産する。だが、石川工場の生産能力は、従前の茂原工場に比べると小さく、コンシューマ用途での大量生産は難しい。2500ppiの高精度なVR向けディスプレイにより、プレミアム分野に展開していきたい」と述べた。

  • ディスプレイ分野の進捗。やはり主力はここの分野となる

    ディスプレイ分野の進捗。やはり主力はここの分野となる

センサー分野では、様々な素材をタッチセンサーに変えることができる「ZINNSIA」に注目が集まっているという。

「基板の小型化や、インターフェイスの拡充などにより、ラインアップを拡大している。アミューズメント分野や住宅設備分野、ロボティクス分野でサンプル評価が進んでいる」という。大阪・関西万博では、この技術を活用して「しゃべる花壇」を出展した。

X線センサーでは、鳥取工場から石川工場に生産拠点を移動し、高感度X線センサーを開発。顧客へサンプル出荷を開始している。また、サーマルイメージングセンサーでは、Obsidian Sensorsとの協業により、映像素子の大型化で、安全性を向上。強い逆光や雨天などの過酷な条件下でも対象物を可視化することに貢献しており、サンプル提供を開始しているという。「開発は順調に進展し、2026年までには開発が完了する予定である」という。

  • センサー分野の進捗

    センサー分野の進捗

半導体パッケージング分野においては、様々なコア基板への高密度配線を可能にする「ユニバーサルRDL技術」を、複数の顧客と開発中であり、半導体の高集積化に伴う消費電力の増加や、発熱に伴う問題解決に貢献できるという。

「ディスプレイ開発によって蓄積した様々な経験や知見を活かしたものである。フレキシブルOLEDで磨いたガラス基板上へのポリイミドフィルム貼合技術とレーザーリフトオフ技術、石川工場のガラス大型基板の加工技術、パネル設計やモジュール/回路設計で蓄積した配線設計や伝送特性シミュレーション技術を採用。VRなどの超高精細ディスプレイのセル設計で培った高密度配線技術も応用している。さらに、無機膜や有機膜の多層化技術も先進半導体パッケージ分野に応用していく」と語った。

  • 半導体パッケージング分野の進捗。同社のディスプレイ開発の経験・知見が活かせる分野だとする

    半導体パッケージング分野の進捗。同社のディスプレイ開発の経験・知見が活かせる分野だとする

2025年度上期の連結業績、「大底」にできるか

一方、2025年度上期(2025年4月~9月)の連結業績は、売上高は前年同期比35.5%減の664億円、EBITDAはマイナス123億円の赤字。営業利益はマイナス144億円の赤字、当期純利益はマイナス113億円の赤字となった。

  • ジャパンディスプレイ 2025年度上期(2025年4月~9月) 連結業績

    ジャパンディスプレイ 2025年度上期(2025年4月~9月) 連結業績

  • ジャパンディスプレイ 2025年度第2四半期(2025年7月~9月) 連結業績

    ジャパンディスプレイ 2025年度第2四半期(2025年7月~9月) 連結業績

売上高は、茂原工場での生産終了に向けた生産縮小や、鳥取工場での生産終了などにより減収となった。一方で、工場経費や研究開発費、人件費の削減、稼働縮小に伴うコスト削減に取り組んだという。なお、茂原工場の生産終了に伴う事業改善費用を特別損失として127億円を計上している。

セグメント別では、民生・産業機器の売上高は同64.7%減の135億円、EBITDAは123億円の赤字。戦略的な縮小を進めてきたスマホ向けが減少。OLEDやスマートウォッチにおける出荷減少が影響した。車載の売上高は同18.1%減の529億円。鳥取工場の生産終了に伴う減少と、低採算機種からの撤退が影響した。

なお、JDIでは、2025年度通期業績予想については公表していない。財務状況の改善に向けて、様々な経営施策を展開、検討中であり、これらの実現時期や具体的内容によって、業績が大きく変動することが予想されることを理由にあげている。