原発の地の廃校にGPUデータセンター
株式会社ハイレゾは、2025年8月22日に玄海町データセンターを開設しました。
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ハイレゾ玄海町データセンターに生まれ変わった旧有徳小学校
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古くは玄海町有浦小学校として開校し、統廃合で有徳小学校となりましたが、平成27年に小中一貫校の玄海町立玄海みらい学園を設立したことに伴い廃校となりました
ハイレゾは創業時ゲームグラフィックのシステム開発を行っていた企業で、その関係でGPUを多く所有していました。ゲーム受託の収益率が落ちる中、他社からの「GPUを貸して欲しい」という声が多くなったため、主力事業をGPUサーバーの貸し出しに転換。埼玉県新座市にデータセンターを作ったのち、2019年に石川県志賀町に大規模拠点として移設しました。
その後、2024年に香川県高松市に遊休施設を利用した第二のデータセンターを設立(参考記事)、そして今回三番目の拠点として佐賀県玄海町に設立することになりました。
石川県志賀町のデータセンターは冷却設備を使うNVIDIA A100と空冷のA4000という異なるGPUを設置していましたが、香川県は冷却設備を使ったH200(A100の後継機)のみを設置。玄海町のデータセンターはA4000を格納したサーバーを120台設置しました。
佐賀県玄海町に開設した理由はいくつかあります。まず、玄海町には九州電力 玄海原子力発電所があり、地元に豊富な電力供給能力があります。電力料金の割引が得られる事から、データセンターの運営ランニングコストの中で比率の高い電気代が抑えられます。
また、約10年前に廃校となった小学校の校舎をそのまま利用することで建築費の削減も実現しています。一方、既存の建物をデータセンターに転用するには床に耐荷重の問題が発生します。専用に建設されたデータセンターではサーバーを格納するラックを高密度で並べることができますが、サーバーを満載したラックは非常に重く、一般的な建物では重量に耐えられません。
そこで、この問題を荷重を分散させることで解決。1つの教室に8つの小型ラックを設置し、ラックには5台のサーバーが格納されているので40台。これは一般的なデータセンターよりもかなり設置の密度が低く抑えられています。現在は3つの教室をサーバールームとして利用しているので、計120台のサーバーが設置されています。
また、サーバーは外気のみで冷却する点も特徴。北側の山側から取り込むため木陰の風を利用できるとしており、現地は取材時の残暑厳しい夏でも涼しめでした。サーバールームあたり8台のファンが設置され、通常は4台のファンを動かし、温度が高くなると8台すべて使うとのことでしたが、8月の見学時でも4台のファンしか動いていなかったので、通年外気のみで動作可能でしょう。NVIDIA A4000の消費電力は160Wと低めなので、このような構成が可能になっています。
校舎は三階建てですが、現在は二階のみを使用し今後の拡張にも対応します。
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現在の校舎は1966年に建てられたものですが、窓の手前に耐震補強がされているのがわかります。この画像は未使用の1Fの教室
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正面の入口はかっこよくリニューアル
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2Fのサーバールームは撮影禁止でした……
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校舎の裏が山になっており、木かげの空気を取り込みます
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今回見学できたのは第一サーバールームで、現在は3つサーバールームがあるので合計120台のサーバーが設置されています(画像はハイレゾ提供)
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サーバーから出た温かい空気は校庭側に抜ける仕組みとなっています。真夏でもファン全開となっていませんでした
雇用創出&計算資源特化で大手よりも大幅に安価で提供
開所式では玄海町長と玄海町議会議長が挨拶を行ったほか、玄海町議員全員が来賓として参加しており歓迎ムードでした。
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開所式は近くの体育館を使用。お祝いの花がたくさん!
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開所式はハイレゾ代表取締役社長の志倉義之氏のあいさつから。来賓として玄海町長の脇山伸太郎氏、玄海町議会議長の井上正旦氏、佐賀銀行の専務取締役 鵜池徹氏も登壇したほか、玄海町議会の全議員もいらっしゃいました
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テープカット、左から佐賀銀行 鵜池氏、ハイレゾ 志倉氏、玄海町長 脇山氏、玄海町議会議長 井上氏
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プレスの囲み取材を受けるハイレゾ 志倉氏、玄海町長 脇山氏
玄海町には2つずつの小学校、中学校がありましたが、平成29年に新設された玄海みらい学園という小中一貫の義務教育学校に統合しました。それに伴い玄海町は廃校になった校舎の有効活用を模索していました。
いくつかの企業が校舎利用に名乗りを挙げたそうですが、AIデータセンターというこれからの産業が玄海町にでき、新たな雇用創出と人口減少の歯止めをかけられる期待から、ハイレゾに決めたと玄海町長の脇山伸太郎氏は説明。若い人を引き付ける新産業として期待しているとのことで、現時点で現地雇用のスタッフは4名とまだ人数は少ないものの、1年後をめどに現地雇用者を10~20名に増やす計画です。
バッチ推論に特化してコストを抑制、学術利用にも好適
大手のデータセンターの場合24時間体制での人員配置でトラブルに対処しますが、ハイレゾのデータセンターは通常のオフィス勤務と同じ平日の9時~5時でしかオフィスに人はいません。深夜勤務がないのは、働きやすさの点でメリット大でしょう。加えて、ハイレゾのデータセンターには冗長電源やネットワーク回線のバックアップはありません。
どんなことがあっても止まらないというミッションクリティカルな用途には向きませんが、開所式では「(おそらく)日本では初のバッチ推論に特化した施設。玄海町の環境と協力がなければ実現し得なかった」と志倉社長がアピールした通り、リアルタイムな応答性ではなく、大量の演算をまとめて処理する用途を想定されています。計算資源にリソースを集中したことで、料金を大手のGPUサービスよりも大幅に安く設定できたとのこと。
このような低価格での提供により、企業だけでなく学術用としても多く使われています。この割り切りがハイレゾのGPUサーバーの最大の特徴と言えるでしょう。玄海町のデータセンターは、GPUを組み合わせたサーバーを遠隔で利用するリモートワークステーションサービスに加えて、現在開発中の「新規AIサービス」にも使われる予定となっています。






