X(旧Twitter)がブラジルで最高裁判所から国内でのサービス停止を命じられた問題で、衛星インターネットサービスのStarlinkがブロック命令に従うことを表明した。StarlinkはXを所有するイーロン・マスク氏がCEOを務めるSpace Xが開発・運用しているサービスである。

ブラジルでは2023年に、ボルソナロ前大統領の支持者が議会と大統領府、最高裁判所を襲撃する事件が起こっている。その際にSNSを通じて偏った情報が拡散されたため、現政権はSNS管理を強化している。この背景から、ブラジルの司法当局がXに偽情報対策としてコンテンツやアカウントの削除を要請したが、マスク氏は表現の自由を脅かす制限であるとしてこれを拒否した。法定代理人の設置など最高裁からの命令に従わず、罰金支払いにも応じない状態が続いたため、8月30日に最高裁はXのサービス停止命令という強硬策を講じた。

最高裁はさらに、「同じ経済グループである」としてマスク氏が手がけるStarlinkの金融口座を凍結した。Sarlinkは直ちに資産凍結は違法な扱いであるとして解除を求める訴訟を起こし、凍結状態でもブラジルでのサービス提供を継続する姿勢を示した。そのため、StarlinkがXの提供も継続するとの見方があったが、9月3日にXを通じてアクセスブロック命令に従うことを明らかにした。

ブラジルではインターネットインフラが整備されていない地域でもブロードバンドを利用できる衛星インターネットの利用者が増加しており、Space XによるとブラジルのStarlink顧客数は約25万人である。ブラジル最高裁はXサービス停止命令において、インターネットサービスプロバイダーだけではなく、VPNを使用するなどしてXにアクセスする利用者にも罰金を科すとしていた。こうした政府と司法当局の厳しいSNS管理に対し、言論統制に行き過ぎているとの批判も広がっている。