三菱電機が2024年3月に日本へ投入した新コンセプトの除湿機ブランド「美空感」。第1弾製品として、同社が得意とするパワフルな除湿機に、空気清浄機能と脱臭機能を加えた「空清脱臭除湿機」(型番:MJ-PHDV24WX)が3月1日に発売されました。

「梅雨の時期や、部屋干しする時にだけ使うイメージのある除湿機ですが、この『美空感』は1年365日24時間活躍する製品」と同社はアピール。

梅雨の時期や湿度が高い夏、結露が発生しがちな冬は除湿、春や秋など花粉が気になる季節は空気清浄機と、1年を通して使える相性の良い家電が組み合わさった3in1の新製品に込められた、こだわりの技術をのぞいてきました。

  • 美空感ブランド第1弾製品となる空清脱臭除湿機、MJ-PHDV24WX(左)。右は従来型除湿機のMJ-PV250WX

特徴は「自動で快適」「かんたん操作」「動作音が静か」

もともとMJ-PHDV24WXは、2023年から台湾で先行販売していた製品。熱帯~亜熱帯に属する台湾は1年中温暖で日本よりも湿度が高く、除湿機の需要も高いといいます。

そんな台湾の除湿機市場のうち、20L以上クラスでトップシェアを誇ったというMJ-PHDV24WXは、高温多湿の環境や住宅の高性能化(高気密/高断熱で湿気が逃げにくい)、ウイルスの脅威といった背景からニーズを見込まれ、今回日本で発売されました。

一般的に、部屋で快適に過ごすには40~60%の湿度がよいとされています。湿度が60%を上回るとカビやダニが発生しやすくなり、一方40%以下になるとウイルスが活発になりはじめるといいます。

  • 本体背面。上部にニオイセンサー、下部に高感度のダスト/ホコリセンサーを備える。中央のメッシュは空気清浄機用のHEPAフィルター部分

  • 上部に配置した操作パネルは、わかりやすさを重視したという。湿度が最も大きく表示され、その下にPM2.5(写真では緑)、ニオイ(写真では赤)、湿度(写真では緑)の快適具合を色で表示している

部屋の湿度を常に適切に保つため、MJ-PHDV24WXでは部屋の状況を検知して自動で除湿、空気清浄機、脱臭機能をコントロールする「おまかせオート」や使いやすい操作パネルを搭載しました。また、新設計による静音ファンで静かに運転し続けられることも特徴です。

製品の主な仕様は以下の通り。

  • 除湿能力:24L/日
  • センサー:湿度(+温度)、ニオイ、高感度ダスト/ホコリ
  • 衣類乾燥モード:強、弱
  • 空気清浄機フィルター:プレフィルター、高性能HEPAフィルター、活性炭フィルター
  • 除湿面積のめやす:一戸建(木造)で最大30畳、集合住宅(コンクリート)で最大61畳
  • 1時間あたりの電気代めやす:除湿12.9円、空清・脱臭1.5円
  • 連続排水:〇(市販の内径15mmホースを接続)
  • 排水タンク容量:約5.5L、自動停止
  • サイズ/重さ:幅410×奥行285×高さ650mm/19.7kg

独自の三列熱交換器で効率的に除湿

さて、MJ-PHDV24WXには1年を通じてリビングで活用するための技術が詰め込まれています。その1つが省エネ設計。蒸発器、コンデンサーに加え、もう1つ薄型のサブコンデンサーを加えた独自の三列熱交換器により、(二列構造と比べ)消費電力を低減します。

この三列熱交換器は従来の同社除湿機でも使われていますが、MJ-PHDV24WXではサブコンデンサーをさらに薄くし、一部銅製だった素材をより熱交換効率の高い全アルミ製とし、扁平管と呼ばれる平たい管に冷媒を通しています。

  • 本体の内部構造。中央にある銀色のエリアが熱交換器だ

  • 三列熱交換器(右から順に蒸発器、コンデンサー、サブコンデンサー)。上が従来のもの、下がMJ-PHDV24WXのもの。サブコンデンサーが新型になった

新型サブコンデンサーは熱交換率が高く、従来は25mmの厚みがあったサブコンデンサーと同じ性能を保ちながら、約12mmにまで薄型化し、本体のサイズを省スペース化することにも貢献。サイズに関しては(空気清浄用の)薄型HEPAフィルターを採用したこともあり、従来から高さが20mm増えたものの奥行は14mmとスリムになり、設置面積を少なくしました。

一方、アルミを採用した新型サブコンデンサーには、銅管と比べて腐食しやすいというデメリットも発生。蒸発器で発生した結露水の付着を防ぐべく、蒸発器には防食コーティングを施した上で、サブコンデンサーを水に触れにくい一番奥に配置しています。

  • 従来のサブコンデンサーは銅管とアルミフィンを使っていたが、新型サブコンデンサーではアルミの扁平管とアルミフィンを採用し、薄型化を実現した(うねうねしたアルミフィンの間を通っている薄い管が扁平管)

  • 従来のサブコンデンサー(上)と新型サブコンデンサー(下)

省エネ、低騒音で稼働させるスマートフラップ

省エネも意識したポイントの1つ。除湿機、空気清浄機、脱臭機能が搭載された1台3役のMJ-PHDV24WXでは、独自構造「スマートフラップ」により、除湿、空清、脱臭を自動で切り替えられ、効率のよい稼働と静音性を両立しました。

背面にあるHEPAフィルター。活性炭フィルターの左右2カ所に取り付けられたスマートフラップは、部屋の湿度が上がってきたらフラップを開き、フィルターを通さない風が取り込めるようになります。フィルターを通すと空気が通る抵抗が大きく、運転量が多くなってしまうため、フィルターを通す風・通さない風を半々ほどで内部に取り込み、除湿メインで運転します。

一方、部屋の空気が汚れてきたことを検知すると、フラップを閉じてフィルターからのみ吸気し、空清・脱臭メインの運転に切り替え。温度・ニオイ・ダスト/ホコリセンサーで部屋の状況を960ものパターンに分析し、最適な運転をオートで行えるというわけです。

  • 青いHEPAフィルターの左右に付いているのがスマートフラップ。写真は開いた状態

  • スマートフラップが閉じている状態

  • 空気清浄用のフィルターは厚み3cmの高性能HEPAフィルターと厚み1cmの活性炭フィルターを重ねて搭載している。フィルターを通すことで吸気に抵抗が生まれるため、除湿のみの運転ではフィルターを通さない空気を取り込むことで省エネ・低騒音につながる

ファンを大型化して静音化、より静かに稼働できるように

運転音を静音化するためファンも改良し、従来のシロッコファンにターボファンの形状を取り込んだターボインシロッコを新開発。回転翼を大型化し、形状を変更して、風速が低くても風をしっかり送れるようになったといいます。運転音は除湿強での運転で43dB、除湿弱での運転で32dBです。

  • 送風ファンは大型化し、形状も改善した。左が新しいファン、右が従来のファン

  • 従来ファンの回転翼

  • 新型ファンの回転翼

除湿はヒーターを使わないコンプレッサー式ですが、冬の寒い時期はコンプレッサーの回転数を上げてしまうと熱交換器の温度が下がり、霜が付きやすくなってしまいます。

三菱の除湿機では室温が15度以下になるとインバーター制御でコンプレッサーの回転数を(霜が付きすぎないよう)制御し、加えて通常より風量を増加させることで、一般的にコンプレッサー式が苦手とされる低温時の除湿量をアップさせる仕組みも搭載しました。また、冷媒経路を電磁弁で切り替えて、温度の高い冷媒を通すことで熱交換器の霜を溶かす「おまかせ霜取り」機能により、室温1度という低温環境でも除湿が可能。

MJ-PHDV24WXはこれから特に除湿機が活躍する梅雨の季節がやってくる中、まさに1年中活用できる除湿機といえそう。「美空感」シリーズとして続く製品にも期待したいです。