2020年10月に発売されてすぐに買った「iPhone 12」から、iPhone 15 Proへと乗り換えました。今回の購入はiPhone 8、iPhone XS、iPhone 12に続いてのものなので、これで4世代目。この記事ではiPhone 12もいいデバイスだった……と述懐しつつ、それでもiPhone 15 Proを使って進歩を感じたところについてご紹介しようと思います。

なお、iPhone 15 Pro Maxについては下記のレビューがあります。

iPhone 15 Pro Maxレビュー 圧巻の5倍望遠カメラ、デジタルズームも使える存在に
https://news.mynavi.jp/article/20230919-2774582/

iPhone 15 Pro Maxを“小型スマホ好き”12 miniユーザーが買った理由
https://news.mynavi.jp/article/20230922-2776669/

iPhone 12はいい端末だった。快適に過ごせた3年間

iPhone 15 Pro以前に使っていたiPhone 12は、とてもいい端末でした。当時購入の決め手になったのは、iPhone XS世代までの丸みを帯びたシェイプから脱却し、スリムでコンパクトな外装を採用したところ。手に持つと小さくなったことをはっきり感じられてうれしく、アルミ外装の軽さも快適でした。128GBモデルも今ほど高価ではなく、iPhone 12の費用対効果はかなり高かったように思います。

  • iPhone 15(手前)とiPhone 12(奥)を並べたところ。カメラ部の威圧感はだいぶ増しました

また、純正アクセサリーとして「レザーケース」がラインナップされていた点もぜひ言及しておきたいところ。Appleは発表会であんなに再利用素材の採用を強調して環境へのコミットメントをアピールしているのに、本革素材のアクセサリーを用意するアンビバレントさが気に入っていました(皮革産業そのものはサステナブルだ、などの指摘もあります)。スマホケースとしてはだいぶ値が張りましたが、高い質感と耐久性を備えており、3年間通して使えたので妥当だったかなと思います。

なお、iPhone 15の発表にあわせてレザーケースが廃止され、「ファインウーブンケース」が登場しましたが、海外レビュー等を読む限り品質は微妙そう。残念ながら今世代で純正レザーケースを堪能することはできなかったので、今はmemumiのケースを使っています。安くて薄くてマットな質感で、カメラ周辺もカバーされているところが気に入りました。

  • 酷使されてボロボロになったレザーケース。コロナ禍においては衛生面が気になったこともあります

A14 Bionicを搭載する高性能も、発売から3年にわたる快適な使用をサポートしてくれました。筆者はスマートフォンゲームをかなり遊ぶため、高い性能はぜひ欲しかったところ。当時、iPhone 12 Proとは性能で差別化されなかったので、スタンダードモデルながら高い性能を備えていた点は素晴らしく思っていました。

そうこうするうちにiPhone 13、iPhone 14が出ましたが、購入を見送ってきました。あまり代わり映えのしない仕様が続いており、iPhone 14 ProのA16 Bionic搭載や、Dynamic Island採用が少し気になった程度。しかし、十数万の出費を決意する決定打にはなりえなかったというのが正直なところです。

ちなみに当時iPhone 12 Proを選ばなかったのは、外装に重いステンレススチールが採用されていたのが最大の理由。高級感のためかは知りませんが、上位モデルなのに下位モデルより重くて不便なのは納得できません。機能的な差別化も主だったところではカメラくらいにしかなく、重さのデメリットを打ち消すほどではありませんでした。

  • Apple比較ページから抜粋。25g差と侮ることはできません、割合でいうと約14%も違います

別にチタンでなくとも構わないが軽量化は大歓迎

快適に使えていたとはいえ、3年も経てば新しいiPhoneが欲しくなってくる頃合い。2023年モデルがどんな仕様でも買い換えようと思っていたので、折よく大幅な仕様変更が行われるタイミングだったのは僥倖でした。周知のとおり全モデルでUSB-Cコネクタの採用が行われ、Dynamic Islandを搭載してガラっと外観が変わっています。

  • USB-Cコネクタ

  • Dinamic Island。いずれもProに限らず、全モデルに適用されました

特に、iPhone 15 Proはさらに大きなアップグレードを受けました。外装に重かったステンレススチールではなく、業界でも珍しいチタンを採用。頭脳として「A17 Pro」なるこれまでの命名規則にないSoCを搭載し、GPU性能の大幅な向上も図られています。

  • スマートフォンにチタン素材。Appleとしてはひさびさにスマートフォン業界を出し抜く特徴になりました

  • 「A17 Pro」搭載。GPUは「Pro-class GPU」なる銘に

筆者としては、とにかく重視したかった高性能がA17 Proで達成されているだけではなく、新素材のおかげで軽量化も実現されているというビッグニュースでした。もしこの世代でもProシリーズの外装にステンレススチールが採用されていれば、性能向上の代価として重さを背負うことになり、苦渋の決断を迫られていたところです。軽くなって本当によかった……。

ちなみに性能をGeekbench 6でかんたんに計測したところ、iPhone 12比でCPU性能はシングル・マルチともに約1.5倍、GPU性能は約1.7倍も高まっていることがわかりました。さしものA14 Bionicとはいえ、隔世の感がある数字です。

  • いずれもiPhone 15 Proのスコア。iPhone 12はCPUがシングル2066、マルチ4786。GPUが16469でした

完全に余談ですが、もしiPhone 15に「A17 Bionic(仮称)」のような、“若干性能は低め”、でも“TSMC 3nmプロセス製造”のような最新チップが搭載されていればかなり悩んでいたはず。iPhone 15はiPhone 14 Proと同じA16 Bionicなので、今回大出血を覚悟してiPhone 15 Proを買ったのも、事実上1年型落ちになってしまうことを避ける意味合いが大きかったです。

使って感じたiPhone 12からの変化が意外と多くて嬉しい

そうはいってもフォームファクタが完成されているiPhone、買い換えたところでそんなに変わらないかなと思っていたのですが、使ってみると意外とたくさん変化があってびっくり。特に、ProMotionテクノロジーによって120Hzで描画されるスクロールはかなり滑らかで、使用感として一番わかりやすい変化点でした。

さらにベゼルは格段に細くなり、iPhone 15 Proを使った後だとiPhone 12はかなり野暮ったく感じるレベル。ディスプレイ技術が進歩したのか、画面表示がカバーガラスのすぐ下で行われているように見え、表示面に直接指が触れているようなスリムな印象になりました。

  • 常時点灯ディスプレイを生かした新機能も。筆者は充電器につなぎっぱなしにしないので使いませんが

A17 Proの性能にも感動。さすがにA14 Bionicでは荷が重かった『原神』や『崩壊:スターレイル』もPC級の高品質な描画で楽しめるようになり、どうしてもPCから離れて過ごさないといけない海外出張などでとても重宝しました。ゲーム以外でもアプリの起動が格段に速くなっており、基本的な使い勝手向上に高い性能が一役買っている点もナイスです。

  • 『原神』。水が大量に描写されていても平気です

  • 『崩壊:スターレイル』。3Dモデルがドアップになるシーンでも綺麗。発表会で動作イメージがアピールされるだけあります

さらに、カメラ性能にも明らかな進歩が感じられて好印象でした。iPhone 12は全体的にいいデバイスでしたが、カメラだけはやや力不足だと感じていたところ。コントラストがやや低かったり、オートホワイトバランスの制御が微妙だったり、特に夜景のような状況では、同世代のAndroidデバイスの後塵を拝している印象がありました。

それが、iPhone 15 Proではしっかり撮れるようになっていてびっくり。感じていた不満はだいたい解消され、さまざまなシチュエーションでちゃんと見栄えのする写真が撮れるようになっています。iPhoneの発表を見るたびカメラ性能の向上アピールを食傷気味に感じていましたが、3世代も経てば割と進化しているんだなあと思いました。

  • 明るい日中ならもうiPhoneでなんとなかりそう

  • 夕焼けのグラデーションもいい感じです

とはいえ、レンズの品質にまだ問題が残っている点はいただけません。暗いシーンで光源が映り込むと、点対称な位置にゴーストが出現します。“コンピューテーショナルフォトグラフィー”なるお題目でデジタル技術の進化を語るのもよいですが、レンズのようなアナログなところを疎かにするようでは合格点とはいきません。Androidにはライカやツァイス、ハッセルブラッドなどとコラボし、レンズの品質をアピールするブランドも散見されます。AppleもiPhoneのカメラ性能を過大評価することなく、次はレンズを改良してほしいところ。

  • 典型的なゴーストの様子。やや意地悪ですが画角のすぐ上に光源を入れたところ、フレアが発生している様子もわかります

ちなみにiPhone 15 Proには13mm、24mm、77mmの3つのカメラが搭載されていますが、アプリでは「0.5x」「1x」「2x」「3x」の4つから切り替えられるようになっており、どれかがクロップなんだろうな……というわかりにくい仕様(2xがメインカメラのセンサークロップ)。被写体に近寄ると自動でマクロモードになったり、少しせわしないカメラです。

  • センサー全域を使った画角で撮りたい場合は、「2x」以外を使うとよいでしょう

また、カメラといえばiPhone 15 Proに新搭載された「アクションボタン」がとても便利。いちいち画面操作することなく素早くカメラを起動できるので、取材中のようなクリティカルなシーンはもちろん、適当に写真を撮りたいときでもワンアクション減って楽。これはProシリーズだけでなく、全モデルに展開してもよかったのでは……と思います。

  • 設定画面が妙にリッチ

ちなみに、筆者的にはUSB-Cコネクタの搭載は決定打というわけではありませんでした。いつもAndroid端末を一緒に使っているので、端子が共通になっても同時充電用として運用するケーブルの本数は減りません。ほかにもiPhone 15 ProではUSB接続時のデータ転送が高速らしいですが、PCや周辺機器とケーブル接続したいと思ったことがないので無関係。個人的にはUSB PDでの充電がもう少し速ければ嬉しかったところです。

また、案外気に入らないな……と感じるのはディスプレイ上部に浮かぶDynamic Islandです。iPhone XからiPhone 14まで順調に小さくなってきた上部ノッチが、なんと大きくなって新登場。Dynamic Islandの間が表示領域としてあまり役に立たないことを考慮すると、明らかに専有面積としては大きくなっており、普通に邪魔です。端に寄っていない分、横画面で使える領域が減ったように感じます。

  • アプリがiPhoneの画面端に最適化すらされていない場合、かなり前時代的な見た目に

Face IDの解除やボリュームコントロール、メディア機能やSuica起動時など、目新しい画面表示も楽しめるので、一長一短という印象。とはいえパンチホールだとAndroid感が強すぎるので、この世代での正解がなんだったのかはわかりません。Face IDに用いられているのは赤外線センサーなので、ディスプレイ下に埋め込むのはかなり難しそう。いつか全画面iPhoneが実現するのでしょうか。

円安に泣かされるもギリ許せるレベル

ここまでiPhone 15 Proへの買い替えで感じたことについて紹介してきた本記事。筆者が買ったのはブラックチタニウム・256GBモデルなので、174,800円でした。進行し続ける円安の中、発表に際しては最悪198,800円くらいまであり得るかと思っていたので、何とか決心できるギリギリのラインです。

下取りサービス「Apple Trade In」でiPhone 12を手放したところ、3年前の端末が4万円になったのも後押ししました。iPhone 12は当時99,880円で購入したので、3年使用の残価設定クレジットだとすると月1,600円くらい。それにこの高かったiPhone 15 Proも、いつの日か買い換えるとき役に立ってくれるはずです。

  • 気付くとAppleデバイスが手元にたくさんあって不思議。いまはHomePod(第2世代)が欲しいです