カシオ計算機は8月3日、2024年3月期第1四半期(4~6月)の決算発表をライブ配信した。当期の実績は、売上高627億円、営業利益は43億円、利益率は6.9%となり、売上高は対前年同期比で102%と微増した。営業利益、営業利益率、当期純利益は減益となったが、インバウンド需要は確実に回復傾向にあり、期待がかかる。

G-SHOCKは販売個数減となるも、単価上昇により増収

時計事業は、中国における新型コロナウイルス感染症の影響によって苦戦した。一方、中国以外の地域に関しては、日本、北米、欧州、およびそのほかの地域では対前年で増収となっている。

  • 第1四半期の実績。前年同期比で売上高は伸びたが、利益はやや減。右側の表はセグメント(事業)別の実績

  • 時計事業の実績。地域別では利益率の高い国内と中国の割合が減少。インド・アセアン市場の開拓も急務に

  • 時計事業のエリア別概況。国内では自社ECとG-SHOCK STOREが好調。北米では時計売り場そのものの数が減少、時計全体の売り上げに影響

これは、別記事『G-SHOCKが6月1日から最大15%の値上げ - カシオのクロック製品も価格改定』でも紹介した通り、製品の価格改定(たとえばG-SHOCKの場合、5%~15%の値上げ幅)によって、5月に駆け込み需要が発生。販売数が伸びたことも影響したと見られる。

ただし、看板商品であるG-SHOCKは、全世界的には販売総数が減少した。たとえば前期1四半期が220万個(うちBABY-Gが30万個)であったのに対して、今期は190万個(うちBABY-Gが20万個)となった。これは先述の通り中国市場の影響が大きい。

  • G-SHOCKは販売個数減となるも、単価上昇により増収。40周年に加え、それぞれのジャンルでヒット作が牽引

ちなみに、中国の状況についてカシオ計算機 執行役員IR財務戦略担当 田村誠治氏は「回復基調にあるのは間違いなく、人の流れは戻りつつある」としながらも、「購買意欲自体はまだ低迷していて、先を見通すのは難しい状況」と見ている。

一方、日本国内について田村氏は「ほかの(海外)エリアと比べて、戻りが鈍いという印象」としつつ、インバウンドに関しては「ここから戻りが期待できます。特に今期の戻り方は期待していいのかなと考えています」と語った。

  • 時計事業の売り上げ推移はゆっくりと回復基調へ

G-SHOCK独自のブランディングと新規市場の開拓、インバウンド回復にも意欲

時計のジャンル別状況について、田村氏は「G-SHOCKはメタル、樹脂ともに人気の『2100』シリーズが大変好調に推移している。また、プレミアムの高額モデルが好調に推移している」と紹介。女性ジャンルも伸ばすことができたという。

  • 人気の「GA-2100」シリーズの最新モデル「GA-2100SB-1AJF」

  • ピンクゴールド×ピンクベージュのG-SHOCKレディースモデル「GM-S2100PG-4AJF」

スマートウオッチは、スクエアデザインのG-SHOCK G-SQUAD「DW-H5600」がヒット。田村氏は「スマートウオッチはすでに競争が激しい市場。カシオが取るべき戦略としては、あくまでG-SHOCKという土俵の上でスマート機能を展開することで、価格競争に巻き込まれないように、独自路線を貫くことと」とした。

  • スクエアデザインと使いやすさでヒット。心拍計とスマート機能が付いたG-SQUAD「DW-H5600」シリーズ

プレミアムG-SHOCKは「グローバルで大変好調に推移している」とし、「スマートウオッチとは見た目も価格帯も違い、いわゆるスマートウオッチに影響されないライン。このラインを伸ばすことで、G-SHOCKの中に新たな価値軸を創造するところを目指す」(田村氏)と語った。ファッションラインについても、より個性的な商品展開で話題性を高めていくという。

  • プレミアムG-SHOCKの代表作のひとつ「MTG-B3000PRB-1AJR」

田村氏はこれらの展開について「G-SHOCKは、その根幹をなすタフネスウオッチとしてのオリジン(DW-5000)を持つブランドであるがことが強み。この強みがあるからこそ、多方向へのライン展開が可能となっている」と語る。

  • 「DW-5000」の流れを汲むG-SHOCK40周年記念モデル「RECRYSTALLIZED SERIES(リクリスタライズドシリーズ)」

なおカシオは、今後もG-SHOCKプレミアムメタルを中心としたブランディング投資を進め、G-SHOCK 40周年を軸にグローバルでのブランド認知拡大を目指す。また「ユーザーとのダイレクトなコミュニケーションのために直営店、直商品比率の拡大を目指すことで、粗利率の向上を図る」(田村氏)という。

  • G-SHOCKの戦略として、プレミアムライン比率の拡大や若者向けファンマーケティングの鍵「SHOCK THE WORLD」の復活を推進。インバウンド回復にも注力

さらに、次の市場会開拓として、成長ポテンシャルの高いインドを挙げ、G-SHOCKのブランド認知と拡販を進めていくと語った。現地生産も考えているという。

  • 各国に合わせたエリア別施策。特に新規参入となるインド市場に注目だ

そして、2024年3月期通期の計画については、売上高2,650億円、営業利益160億円、営業利益率6.0%、経常利益150億円を見込む。そのため、今後3年にかけて、戦略的投資も積極的に行っていくとのことだ。

  • 2024年3月期通期の計画。右側の表はセグメント(事業)別の計画

  • 中期的(3年間)な戦略的投資も積極的に行っていくという