大会3日目(撮影2日目)の7月27日はまず午前10時、開会式が行われた東川町環境改善センターで1回目の公開審査会が行われました。撮影は3日間にわたって行われますが、例年であればその撮影のあとに計3回の公開審査会があります。1~2回目は夕方から始まり、終わるとすっかり夜、というスケジュールです。それが今回は1回目を2日目の撮影前に行い、公開審査会は計2回となりました。

  • 撮影2日目の7月27日、1回目の公開審査会が開かれた。公開審査会の様子はYouTubeで見られる

  • 目の前にずらりと写真家が並ぶなかでプレゼンテーションするのは、高校生にとって人生最高レベルに緊張する瞬間かも。審査員は右から鵜川真由子氏、中西敏貴氏、立木義浩氏、公文健太郎氏、須藤絢乃氏、浅田政志氏

初出場組など、大会に慣れていない高校は1回目はどうしても思い通りのパフォーマンスが発揮できないもの。スライドショーで8枚組を淡々と見せていくのは、展示や一般のフォトコンテストとは違った難しさがあります。順番が違っても印象は変わりますし、並びでおもしろさを感じさせるとか、大小で抑揚をつけるといったテクニックも使えません。それ以前に組写真が難しい、いやまず撮影自体が……という高校もあります。

  • 審査委員長の立木義浩氏は30回すべてでこの場に座り、これまで1,000人を超える高校生写真部員を褒めたり、辛口でコメントしたり、温かく励ましてきた

今回も、出場経験が豊富な高校は一枚一枚の完成度が高く、8枚の構成も安定感があります。一方で、タイトルやプレゼンテーションと写真がいまひとつ噛み合っていない高校も。ただし、一枚一枚のレベルはどの高校も高く、ちょっとしたコミュニケーションやセレクトの違いでガラッとよくなる雰囲気を感じました。そもそも、慣れない環境で注目を集めるなか、慣れないことをしているわけですから、うまくいかなくて当然なのです。

ただし、公開審査回が3回から2回に減ったことで、挽回するチャンスが減ってしまったのも事実。公開審査会で発表する写真が計24枚から計16枚に減ることで、質を高められるとポジティブに考えることもできますし、経験の浅い学校にもチャンスがあるかもしれません。すべてが分かるのは、7月28日晩の最終公開審査会の後。そのベースとなる7月27日午後の撮影は、まさに絶対に負けられない戦いでした。

選手たちは、まず美瑛町の白金温泉エリアへ。ここには、北海道を代表する観光地となった「青い池」があります。写真甲子園の撮影エリアに初めて組み込まれたときは、ほとんど観光客もおらず、車は広い更地へ適当に停めてくださいという状態でした。それが今やきれいな駐車場も整備され、観光客で大賑わい。

  • 北海道を代表する観光地となった「青い池」。日本人は少なめで、聞こえてくるのは中国語と韓国語ばかり

  • 「青い池」はこのアングル・構図で撮るしかなく、しかもビジュアルインパクトが強いため、誰が撮っても同じ写真になりがち

  • でも、なんとかモノにしようと、池にカメラを向ける選手もちらほら

  • そんな観光客に声を掛けてスナップやポートレートを撮る選手もいれば、反対側の森に目を向ける選手も

先に触れた通り、写真甲子園では1枚の傑作写真を撮ることよりも、他の7枚と組み合わせるピースを見つけることが重要。選手たちも、午前の公開審査会でそのことを痛感したのか、前日よりも行動に迷いがないように見えました。

その「青い池」からしばらく進むと「不動の滝」という立派な滝があります。観光客はほとんど立ち寄りませんが、写真甲子園では人気のスポット。いくつもの学校が足を踏み入れていましたが、ここでも滝の全景を撮ろうという選手は少なく、水の流れや周囲の草木、祠など、ミクロな視点で風景を切り取っていました。

  • 飛沫を望遠で切り取る。発表作品に水の流れがあると、審査員からシャッター速度の選択ミスを指摘されるのは“写真甲子園あるある”。でも、それはひとつの意見。写真に正解なんてないのだ!というくらいの開き直りも重要

  • 滝を撮っている人を撮る選手もいた

  • 1チーム3名という構成が生きてくるのは、演出して作り上げたいとき。演技、撮影、監督と役割分担してイメージ通りの1枚を狙う

  • 撮影した写真の確認や議論にも熱が入る

今回の使用機材ですが、大会期間中は選手ひとりひとりにキヤノンのフルサイズミラーレス「EOS RP」と標準ズームレンズ「RF24-105mmF4-7.1 IS STM」が貸与されます。さらに、各校に1本ずつ「RF35mmF1.8 MACRO IS STM」と「RF24-240mmF4-6.3 IS USM」も貸し出されます。この高倍率ズームの24-240mmが選手たちには大人気。「望遠貸して!」「やっぱ望遠だわ!」といった声を何度も耳にしました。広角側は標準ズームと同じで、望遠側が倍以上伸びるのですから、使い勝手はいいに決まっています。ちなみに筆者は、今回カメラは「EOS R6 Mark II」、レンズはおもに「RF24-105mmF4 L IS USM」を使って取材していますが、選手たちに影響されたのか、すっかり24-240mmが欲しくなりました(笑)。

白金温泉エリアを2時間ほど撮影したあとは、写真甲子園のメインステージである東川町へ。17時から2時間、夕暮れの町を撮るはずでしたが…それを見計らったかのように、撮影開始と同時に土砂降り。選手たちは落胆気味でしたが、夕立ちからの美しい夕焼けというのは夏の東川町でよくみられるもの。案の定、しばらくして雨が止み、低い角度から太陽が雨上がりの路面を照らしていました。

  • 中心街の文具屋さん。おそらく相当な回数モデルを務めてきたと思われ、プロのモデル並みに撮られ慣れている

  • そんな東川町の目抜き通りには、過去29回の作品や大会の様子をコラージュした展示も

  • 写真撮らせてください→ちょっと待ってて→袋いっぱいのお菓子、という筆者も予想しなかった展開

  • 写真とともにひまわりの花を持って帰ってきた選手も

7月27日は開始時刻は特に決められておらず、東川町内の宿舎を自由に出発。再び東川町の風景や人を切り取っていきます。といってもフィニッシュは午前10時なので、ほとんどの高校が早朝から始動(するはず)。15時からのファイナル公開審査会では、どんな作品の競演が見られるのでしょうか。そして、高校写真部日本一の座を獲得するのはどの高校でしょうか。