AMDは4月13日、Professional向けGraphicsとして「Radeon Pro W7900」と「Radeon Pro W7800」を発表した。どちらの製品もRDNA 3というかNavi 31を利用した製品で、Radeon Pro W7900はほぼRadeon RX 7900 XTXと同スペック(Photo01)であるが、Radeon RX 7900 XTXはGDDR6 24GBなのに対し、こちらは容量48GBと倍増しており、8GBのGDDR6メモリチップを採用しているものと考えられる。

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    Photo01: ただしTBPは295WとRadeon RX 7900 XTXの355Wより60Wも低い。ただしPeak FP32は61TOPSと同じなので、Peak Frequencyは同じ2.3GHzで、Power Profileを変えて実効消費電力を下げているものと思われる。

一方Radeon Pro W7800はRadeon RX 7900 XTと比べても明らかに規模が小さい。メモリが256bitという事なので、Memory Busは4つに減らされている。また70CUということは、WGPは5つに減らされており(この時点で最大80CU)、更に1WGPあたりのCUも14基程度に減らされている(本来は16CU)ものと思われる。ちなみに動作周波数は明示されていないが、70CUで45TFlopsとされているから、Peak Frequencyは2.3GHzのままになっているものと思われる。TBTは260Wと結構低めに設定されている。気になるのはMCDがいくつあるのか(=Infinity Cacheがどの程度か?)である。もし4MCDのままだとMemory Busは256bitでこれは良いのだが、InfinityCacheのサイズは64MBになってしまい、ちょっと心もとない気がする。実際はMCDは5つ(=InfinityCacheは80MB)で、ただしGDDR6は256bit(つまりMCDのうち1つはGDDR6を繋がない)という可能性もあり得る気もするのだが、このあたりの詳細は現時点では不明である。

  • Photo02: 実質5WGPなので、NAVI 32ではなくNAVI 31ベースなのは間違いないと思う。

さてこのRadeon Pro W7900/W7800の特徴は、そんな訳で基本的にRadeon XT 7900シリーズと同じであり、Chiplet構成を取る事(Photo03)やAV1のEncode/Decodeが可能な事(Photo04)、DisplayPort 2.1に正式対応した事(Photo05)などが挙げられている。ただこのあたりはRadeon XT 7900シリーズと同じである。

  • Photo03: Stream Processorの性能も実質2倍で、かつRT性能も向上している。AI Acceleratorは、それこそXeSS位しか現状使われていないのが問題で、対応アプリケーションの拡充が必須であろう。

  • Photo04: こちらはまぁ今更説明も不要だろう。

  • Photo05: こちらも同様。問題は対応するモニターがまだ少ない(無い訳ではない)事だろうか。

肝心の性能であるが、SPECviewperfでの比較で言えばRadeon Pro W6800比で1.5倍となっている。TBPで言えばRadeon Pro W6800が250Wだったことを考えると、性能/消費電力比では27%アップといったあたりでもう少し差は縮まるが、それでも悪い数字ではない。

さて本来の競合製品はRadeon Pro W6800ではなく、NVIDIAのRTX A6000とかRTX 6000 Adaということになる(Photo07)。RTX A6000を基準とした時のSPECviewperfの性能比(Photo08)で言えば、確かにRTX 6000 Adaにはやや性能では及ばないが、RTX A6000比で言えば十分高速であり、しかも安い。RTX A5500比較でも、Radeon Pro W7800は十分競争力があり、しかも安価だとしている。

  • Photo06: MemoryとかDP 2.1のData Rateの比較は間違ってはいないが、それを比較してどうなる? という気はしなくもない。

  • Photo07: 性能で言えばRTX 6000 Adaにはやや及ばないが、価格は半分未満というのが最大のセールスポイントとなる。

  • Photo08: SPECviewperf 2020だから純粋に描画だけの比較ということになる。

ここからはもう少し個別のアプリケーション比較。After Effects(Photo09)では、実性能ではRTX A6000を100とするとRTX 6000 Adaは106.4程度、Radeon Pro W7900は99.6程度のスコアになる。ただし価格性能比で考えると、Radeon Pro W7900は圧倒的に高いという訳だ。次はAutodeskの3DX MAX&Mayaの実性能で、こちらは明確にRadeon Pro W7800/W7900にアドバンテージがある。そのMayaを、SPECapc 2023を利用して比較した場合の結果がこちら(Photo11)。同じようにPremier Proでの比較がこちら(Photo12)。Photo13はDavinch Resolveの結果だ。Photo14はCAD系で、これは絶対性能での比較である。Photo15はLumionでの比較となる。全体的にスライドの脚注を見て頂くと判るが、絶対性能そのものはあまり変わらない(ほぼRTX A6000と同等かちょっと良い程度)ながら、性能価格比で大幅に向上を見せた、というのがポイントになっている。逆に言えばアプリケーションのレンダリングなどの対応はまだこれからという感じで、今後の展開に期待と言う所だろうか。これはドライバの熟成も同じであり、例えばRadeon Pro W6800ではDriver VersionのUpdateで39%の性能改善が実現している。同じようにRadeon Pro W7900でも今後の向上が期待できるとしている(Photo16)。アプリケーションで言えば、MaxonのRedshiftは今年第2四半期に対応が行われる予定とされる(Photo17)他にも、色々水面下で対応を進めているようだ。

  • Photo09: PugetBenchを利用してのAfterEffectsの比較だそうだが、そもそもAfter EffectsにどこまでGPUが関係あったっけ? を考えると、これはちょっと言いがかりに近い気がする。実際このスライドから換算した実性能の推定値は大して変わらない結果になっている。

  • Photo10: 逆にViewperfでこれだけ性能差が出るのがちょっとビックリではある。

  • Photo11: この性能/価格比と価格からの換算した実スコアは、RTX A6000を100とするとRTX 6000 Adaは92.2、Radeon Pro W7900は101.2ほどになる計算だ。

  • Photo12: 同様に実性能はRTX A6000を100とするとRTX 6000 Adaは118.8、Radeon Pro W7900は99.6となる。

  • Photo13: 実性能はRTX A6000を100とするとRTX 6000 Adaは156.0、Radeon Pro W7900は98.8となる。

  • Photo14: これはどうもSPECviewperfからCAD系アプリケーションの結果(Catia-06/Creo-03/Snx-04/Solidworks-07)を抜き出したものに見える。

  • Photo15: 実性能はRTX A6000を100とするとRTX 6000 Adaは141.8、Radeon Pro W7900は107.0となる。これはLumion Benchmarkを利用して比較した模様。

  • Photo16: もっともRadeon Pro W7900でも現行バージョンと比較して39%の向上が実現するか? というとそのあたりは未知数だが。

  • Photo17: これでRDNA3のハードウェアRTが利用可能となる。

今回発表の2製品、出荷は今年第2四半期中となっている(Photo18)。ところでこれでRDNA3の7800グレードの製品が出て来たわけで、同じようにNAVI 31を利用したRadeon RX 7800グレードの製品も期待できそうな気がする。対抗馬は間違いなく発表されたばかりのGeForce RTX 4070であるが、さてどうだろう?

  • Photo18: モノがモノだけに、まずはOEMなどへの供給がメインで、リテール向けはあったとしてもちょっと後送りになりそうであるが。