ソニーは、バーチャルプロダクション(VP)のクリエイターをサポートする業務用の新しいソフトウェア「Virtual Production Tool Set」(バーチャルプロダクションツールセット)を、2023年夏以降に提供開始する。

  • バーチャルプロダクションにおける映像撮影のイメージ

Virtual Production Tool Setの内容は以下の通り。価格は、Ver.1.0については無償で提供する。

  • Unreal Engine用プラグイン「Camera and Display Plugin」(カメラ・ディスプレイプラグイン)(Ver.1.0)
  • Windows用アプリケーション「Color Calibrator」(カラーキャリブレータ―)(Ver.1.0)

同ツールセットは、ソニーが持つデジタルシネマカメラ「VENICE」シリーズと大型ディスプレイCrystal LEDの知見に加え、ゲームエンジン「Unreal Engine」を手がける米Epic Gamesとのパートナーシップによって開発。カラー調整や、ディスプレイ撮影時に発生しやすいモアレ(干渉縞)の回避など、撮影前の準備作業(プリプロダクション)から撮影時までの設定・調整にかかっていた時間を削減し、インカメラVFXのバーチャルプロダクションワークフローを効率化。クリエイターの創造的な映像制作を支援する。

Camera and Display Plugin

Unreal Engine用プラグイン「Camera and Display Plugin」の主な機能は、「バーチャルVENICE」、「モアレアラート」、「設定パラメーターの転送」の3つ。

従来、インカメラVFXを用いたバーチャルプロダクションにおいては、プリプロダクションと本番の撮影時に、色味など最終イメージが異なるという課題があった。「バーチャルVENICE」機能を使うと、LEDディスプレイとVENICEカメラを連携させて、適切なカラー設定や画角で撮影前にプリビジュアライゼーションを実施可能。プリプロダクション段階で、本番撮影で用いるVENICEと同様のルックを事前にバーチャル空間上でシミュレーションできるようになるという。

VENICEカメラの露出やNDフィルターを組み合わせるなどのシミュレーションも撮影前に行え、プリプロダクション段階から具体的なレンズ選定や機材選定に生かせるという。バーチャルVENICEは、実際のVENICEと同様のビデオプロセスを実装しているため、インカメラVFX撮影時のルックを事前に確認可能。高品位なバーチャルプロダクション撮影とワークフローの効率化を実現する。

インカメラVFX撮影時にLEDディスプレイ上に発生するモアレを回避したいというニーズに応え、「モアレアラート」機能も実装。カメラアングルやカメラの動きの調整により、モアレが発生する可能性をプリプロダクション段階から事前に検知できるようにした。インカメラVFX撮影時にも使え、カメラやレンズのトラッキング情報をもとに、目視では確認できないモアレも検知し、ポストプロダクション段階での修正を回避できるようにする。

「設定パラメーターの転送」では、上記のUnreal Engine上でのプリビジュアライゼ―ジョン時に設定したバーチャルVENICEの設定値を保存し、実際に撮影で使用するVENICEカメラにデータを転送できる。

Color Calibrator

Color Calibratorは、LEDディスプレイのカラーキャリブレーションを行うためのWindows用アプリ。カメラ・ディスプレイプラグインにインストールされたカラーチャートをPQ/Rec.2020に対応したLEDディスプレイに表示し、実際に使うVENICEカメラで撮影し、アプリケーションでLUTを生成。このLUTをUnreal Engineに適用し、正しい色再現性に補正する。これまで撮影現場で補正に時間をかけていた工程を短縮することで、制作現場においてより創造的な制作に集中できるようにする。