14型ノートPCで世界最軽量を実現した「LIFEBOOK UH-X/H1」(富士通クライアントコンピューティング製)の開発ストーリー。前編では、14型で最軽量を目指した出発点を、中編では軽量化の工夫とこだわりを紹介しました。最終回の後編では、高性能モデルUH90も含めたシリーズの性能と熱対策、拡張性について聞いていきます。(全3回) |
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13世代Intel Coreでも基板サイズは12%減
今回発表された14型最軽量のLIFEBOOK UH-X/H1(以下、UH-X)および、高性能&長時間駆動のLIFEBOOK UH90/H1(以下、UH90)を含めた「UH」シリーズでは、高性能の実現にもこだわり、そこで新たな挑戦を行っている。
UH-X店頭モデルでは、CPUに第13世代Intel Core i7-1355U (10コア)を採用。16GBのLPDDR 5のメモリ、512GBのSSDを搭載した。さらに、高性能モデルと位置づけるUH90店頭モデルには、CPUに28Wの第13世代Intel Core i7-1360P (12コア)を採用。UH-X同様に、16GBのLPDDR 5メモリ、512GBのSSDも搭載した。
UH-Xでは最先端CPUを載せ、高性能を実現することにこだわったが、さらにUH90では、軽量ノートPCでありながら、初めてデュアルファンを装備。28Wでの動作にも対応できる設計としている点が見逃せない。
UH-X開発チームの河野晃伸シニアマネージャー(富士通クライアントコンピューティング プロダクトマネジメント本部PM統括部第一技術部シニアマネージャー)は、「UH90では、デュアルファンを搭載することになるため、基板にはファンを配置するための大きな穴を2つ空けた設計にしている。この基板はUH-Xにもそのまま採用しており、基板サイズは従来から12%小型化している」とした。
また、「UH90では、デュアルファンによって、CPUから発生する熱を強力に排出する仕組みを採用している。だが、ファンが2個載ると稼働音が大きくなる。CPUの温度をモニタリングしながら、騒音が抑えられるファンの回転数をチューニングにしていった。これにはかなりの時間を費やした」と振り返る。
2本のヒートパイプで熱輸送効率を6%アップ
また、松下真也マネージャー(富士通クライアントコンピューティング プロダクトマネジメント本部PM統括部第三技術部マネージャー)は、「2つのファンはそれぞれに異なるサイズのものとし、ひとつはメインファンとして、限られた筐体スペースのなかに配置できる最大サイズのものを採用。もうひとつは最小限のサイズで、放熱効果を発揮できるものを選択した」という。
熱設計の観点では大きなファンを2個搭載したいが、基板設計の観点からみると、それが不可能なため、与えられたスペースのなかで最適なファンの構成を実現。2つのファンの回転数は別々に制御し、それも放熱効果を最大化することにつながっている。
また、ヒートパイプにも工夫を凝らした。UH90では、CPUの上から、それぞれのファンに向けて2本のヒートパイプがされている。もちろん、ひとつのパイプで2つのファンをつなげる方が軽量化を図ることができ、筐体内のレイアウトにも余裕が生まれるが、UH90では、熱輸送効率を優先して、ヒートパイプを2本にした。これによって、約6%の熱効率アップになったという。
6%という数字は小さく見えるが、軽量化を追求する上で様々な制限が生まれる設計のなかでは大きな効果を生み出す。ここでは、軽量化よりも、安定稼働を優先する判断をしたのだ。
開発はコロナ禍、ハイブリッドワークを重視
これまでのUH-X/E3は、コロナ禍の2020年10月の発売ではあったものの、製品設計はコロナ禍以前から行われていた。それに対して、今回のUH-X/H1は、まさにコロナ禍で開発されたものである。従来モデル以上にハイブリッドワークを強く意識したものになっている点も大きなポイントだ。
「外に持ち運んで利用するだけでなく、家庭内やオフィス内での利用においても快適に利用できる工夫を凝らしている」(河野シニアマネージャー)とする。
中編で触れたように、従来のHDカメラからフルHDカメラへとアップグレードして、ビデオ会議での画質を高めたほか、スピーカーのボックス容積を増やすとともに、Dolby Atmosの採用によって音質を向上。オンライン会議の環境を向上させた。
また、プライバシーカメラシャッターもつまみを大きくして開閉しやすくしたり、ワンタッチマイクミュートの採用、独自アプリとなるAIメイクアップアプリ「Umore(ユーモア)」の標準搭載も、オンライン会議に最適化した機能だ。
「Umoreでは、自宅からバーチャルメイクで会議に参加したりできるほか、男性でも顔色を良くし、快活な雰囲気でオンライン会議に参加できるようになる」というメリットもある。
HDMIインターフェースなどの採用により、外部モニターとの接続を容易にし、在宅勤務や移動先での利用環境も高度化できる。指紋センサー兼用電源ボタンにしたのも、マスクをしたままでもログインできることに配慮したものだ。
UH-Xのバッテリー駆動時間は11時間としており、USB PD出力を持つモバイルバッテリーを携行すれば(最低でも30W出力は欲しい)、長時間の外出時でもモバイルバッテリーを使って駆動時間を伸せる。
フルサイズSD→microSDスロットで6g削減
豊富なインターフェースも、従来のUH-Xから継続している特徴のひとつだ。 有線LANポートは、「開発初期段階から、引き続き搭載することは決定していた」(河野シニアマネージャー)とし、従来モデル同様に、格納できるフリップ式を採用。USB Type-Cコネクタを2基、USB Type-Aコネクタも2基内蔵し、軽量化しながらも、拡張性は犠牲にしていない。
今回のUH-X/H1では、従来のフルサイズのSDスロットではなく、microSDスロットを搭載している。これは、開発当初から決定したことだという。microSDスロットにした理由は、筐体内のスペース確保や軽量化において、microSDの方がかなりの優位性を発揮できるためだ。
実際、部材を比べてみると、microSDスロットはフルサイズのSDスロットの3分の1から4分の1程度の大きさで済む。また、フルサイズSDスロットから、microSDスロットにしたことで、6gも軽量化できたという。
一方、キーボードは、英数文字だけを表記した仕様としたほか、天板へのロゴマークの表記も小さくし、「若年層が持ち運ぶことを考慮し、シンプルなデザインであることを重視した」(河野シニアマネージャー)という。
3つの柱は達成。次のブラッシュアップを考えたい
今回の新たなUH-Xの完成度について、河野シニアマネージャーは、「14.0型へのシフト、最小のフットプリント、高性能の追求という3つの柱は達成でき、満足ができるものが完成した」と自己評価しながらも、「14.0型のUH-Xとしては初代となる製品。これをどうブラッシュアップしていくのかを考えたい」と、次の挑戦にも意欲をみせる。
また、松下マネージャーは、「点数をつけるとすれば80点」と前置きしながら、「足りない20点には、UH-Xの世界最軽量への挑戦がこれからも続くという思いを込めている。14.0型で689gを達成したのならば、次の挑戦は、当然のことながら、14.0型でもムサシ(634g)が視野に入る。少しでも近づくことを目指したい」と語る。
今後のUH-Xは、14.0型のなかで、世界最軽量を維持しながら進化を図っていく。そして、世界軽量化を維持するだけでなく、高性能化や使い勝手の向上、堅牢性などの新たな切り口にも、引き続き挑戦を続けていく。
現時点で、最高の水準でバランスした世界最軽量モデルを実現したUH-Xだが、これからも、より高い水準を目指した世界最軽量への挑戦が続くことになる。