3月16日に米Microsoftが、次世代AIのビジネス活用に関するイベント「The future of work with Al」を開催した。それに合わせて同社の最高コミュニケーション責任者であるFrank X. Shaw氏が公式ブログで、AI搭載「新しいBing」のチャット機能をビジネスコミュニケーションに役立てるためのプロンプト(AIに指示するための言葉)を紹介する「Prompts for communicators using the new AI-powered Bing」を公開した。実際に同氏のチームで活用しているプロンプトであり、ビジネスだけではなく、学生や一般のユーザーにも役立つ対話型AI活用法なので、その内容を紹介しよう(注:日本語のプロンプト例は筆者が作成)。

予備知識として、Bingのチャットではユーザーが「独創性」(クリエイティビティに富んだ回答を得られる)、「厳密」(事実に基づいた応答)、「バランス」の3つの会話スタイルを選択できる。またユーザーが求め続ける限りBingは回答の改善に努めるので、例えばアイディア出しに利用してBingの提案に満足できなくても、「Give me a few more」(もう少し提案して下さい)というように対話(要求)を続けるとより求めている回答に近づける。

プレゼンテーションや会議の準備に

The Wall Street JournalのJoanna Stern氏が、MicrosoftのSatya Nadella氏(CEO)にインタビューした際に、同氏は準備段階でBingに以下のように入力した。

  • 「In the voice of Joanna Stern, generate a list of 10 interview questions for Satya Nadella about AI and the new Bing」(Joanna Stern風に、AIと新しいBingに関するSatya Nadellaへの10のインタビュー質問リストを作成して下さい)
  • 「Answer Question 5 in the voice of [person]」(質問5に<人>風に答えて下さい)

これを参考にShaw氏は、Kara Swisher氏のポッドキャスト番組に出演する際に、同じようなプロンプトを使って、Swisher氏の最近の著作やポッドキャストから予想される10の質問をBingに作成してもらったという。これは会議やプレゼンテーションの準備に活用できる。

実際に「独創性」設定で、「ジョアンナ・スターン風に、対話型AIに関するイーロン・マスクへの10のインタビュー質問リストを作成してください」とBingに頼んでみた。下はその回答だ。ユーモアを交えながら批判的に鋭く対象に切り込むStern氏の特徴をよく捉えた質問になっている。

  • 「独創性」スタイル時のBingの回答

    「ジョアンナ・スターン風に、対話型AIに関するイーロン・マスクへの10のインタビュー質問リストを作成してください」に対するBingの提案(独創性スタイル)

続けて「1番目の質問をひろゆき風に答えてください」と頼んだ回答が以下(質問は「対話型AIが人間と同等かそれ以上に知能的になる可能性があると考えていますか?」)。

  • 独創性スタイルbによるひろゆき風の回答

    Bingが提案した10の質問の1つめについて、ひろゆき風の回答例を作成してもらった(独創性スタイル)

「対話型AIが人間より賢くなったとしても、それを自分から公表する必要はありせんよね」など、ひろゆき風を巧みに作成している。

これらは「独創性」設定なのでBingの創造を楽しめる。しかし、インタビューの準備としては変化球的な質問・回答には有効だが、突飛な内容も目立つ。下は「バランス」設定にした場合のインタビュー質問リストだ。

  • 「バランス」スタイル時のBingの回答

    「ジョアンナ・スターン風に、対話型AIに関するイーロン・マスクへの10のインタビュー質問リストを作成してください」に対するBingの提案(「バランス」スタイル)

Stern氏風の演出は薄れるが、代わりにより根本的な質問例を提案してくれる。会話スタイルの違いを利用することで、基本的な質問からトピックを広げた質問まで幅広く準備できる。

評判や注目度を素早く確認

新しいBingの発表以来、忙しい毎日を過ごす中で、メディアの注目度や反応を知るためにShaw氏は以下のようにBingを利用している。

  • 「What’s the latest news about [X] today?」(例:対話型AIについて今日の最新ニュースは?)
  • 「What’s the overall tone of these stories?」(それらのニュースの全体的な論調は?)
  • 「How does this compare with news about [Y] in the same time period?」(例:同じ時期のGoogleのAIに関するニュースと比べて違いは?)

ブレインストーミングに利用

1人でアイディアを練る時でも、Bingのチャットを使うことで誰かとアイディアを出し合うブレインストーム方式のような効果を得られる。特に創造的な「独創性」設定はひらめきに効果的だという。例えば、Shaw氏のチームはソーシャルメディアの投稿作成で以下のようなアイディア提案を試した。

  • 「Generate a few tweets that include [X] information and uses a [Y] tone」(例:ChatGPTの最新ニュースを含む、軽快な口調のツイートをいくつか作成してください)
  • ツイートの提案の例

    「ChatGPTの最新ニュースを含む、軽快な口調のツイートをいくつか作成してください」に対するBingの回答(独創性スタイル)

  • 「Generate a few tweet ideas for [company] about [product feature]」(例:Microsoftの新しいBingに関するツイートのアイデアをいくつか提案して)
  • ツイートのアイディア提案の例

    「Microsoftの新しいBingに関するツイートのアイデアをいくつか提案して(独創性スタイル)

  • 「Take the following information and turn it into a [X] character tweet post: [copy and paste text]」(次の情報を [X]文字のツイートに変えてください:[情報のテキストを貼り付け])

他にも、ブログを書いて見出しに悩んだ時に「Suggest a few variations of headlines for the following」(次の文章の見出しのバリエーションを提案してください: <ブログ本文を貼り付け>)とBingに見出しのアイディアを求めたり、「Suggest five FAQs for [text or link]」([テキストまたはリンク]のFAQを5つ提案して)でFAQとして用意しておくべき質問と回答をまとめるなど、様々に活用している。