米Microsoftは2月7日(現地時間)、新しいBing検索エンジンを発表した。提携するOpenAIの技術を統合しており、「AIで検索を再発明」とアピールしている。検索、ブラウジング、AIチャットを一つにまとめ、目的の情報の入手、情報の活用やコンテンツ作成を支援する統合的な体験を提供する。7日からデスクトップ版でサンプル検索を体験できる限定プレビューの提供を開始。プレビュー版のウェイトリストへの登録受け付けも開始しており、モバイル版のプレビューも近々開始する予定だ。
Microsoftによると、ネットユーザーは毎日約100億の検索クエリを入力しているが、その半分でユーザーは検索の目的を満たせていない。その理由は複雑な質問の答えを探していたり、またはタスクの一部であることが多く、従来の検索はそのために設計されていないため「不十分な場合が多い」と指摘している。例えば、段ボール箱、紙、ペットボトル、ひもだけを使って4歳児でもできる工作を知りたい時に、従来の検索では「段ボール箱、紙、ペットボトル、ひも、4歳児、工作」といったキーワードを並べて検索し、結果にリストされたいくつかのWebページを訪れて必要な情報を探さなければならない。
下の画像は、新しいBingで「段ボール箱とペットボトル、紙とひもだけを使って4歳児でもできる工作を教えて」という検索例の結果である。
Web上にある様々なアイディアが画像付きのタイルで見やすくまとめられており、さらにチャットボットが11のWebサイトからの情報をまとめて、オススメのアイディアを分かりやすく紹介している。自然な言葉で質問し、Bingの結果のみで目的の情報を得られる。
タスクの例を紹介すると、下は「犬と海が大好きな8歳の息子に贈る俳句を考えています」という検索例の結果だ。
AIチャットボットが俳句のルールや作成のポイントを紹介しながら、作例として一句詠んでユーザーの俳句作りをサポートしている。
そして下は「Pythonでフィボナッチ数列を求めるプログラムを書いて」という検索例の結果だ。
プログラムに関するWebページを開いて探さなくても、求めているコードを結果ですぐに得られる。
AIが支援する情報収集やタスク処理をMicrosoftはAIコパイロット(副操縦士)と呼んでいる。AIコパイロットによる新しいBingの統合的な体験は以下のように構成されている。
- より優れた検索:スポーツの試合結果、株価、天気といったシンプルな検索に対してより関連性の高い結果を提供し、必要に応じてより包括的な回答を新しいサイドバーで提供。ユーザーが使い慣れている従来の検索体験を残しながら、さらに向上させた。
- 完全な回答:Web上の検索結果をBingが検証し、ユーザーが探している答えを見つけてまとめる。例えば、今作っているケーキの卵を別の材料に置き換える方法について、複数の結果を調べることなく、その場で詳しい説明を得ることが可能。
- 新しいチャット体験:詳細な旅行計画の立案や、自分の部屋の条件に合うTVを購入するためのリサーチなど、より複雑な検索にインタラクティブなチャットで対応。ユーザーは自然な会話を通じてより詳細な情報や明確な情報、アイデアを求め、目的の答えが得られるまで検索を絞り込める。
- 創造を支援:旅行の計画を進めている際の目的地の情報をまとめたメールの文章、トリビアクイズなど、コンテンツを生成してユーザーをサポート。
- 新しいMicrosoft Edgeの体験:新しいAI機能と対応するデザインをEdgeに導入。チャットとコンポーズの2つの新機能を追加する。例えば、Edge Sidebarで長文の財務報告書の要約を依頼してポイントを素早く把握。チャット機能を使って競合他社との比較を依頼し、自動的に表にしてもらうことも可能。
Microsoftは1月に、対話型AI「ChatGPT」が注目を集めている米OpenAIへの追加投資と提携拡大を発表した。新しいBingは、OpenAIの新世代の大規模言語モデルを採用して、ユーザーと目的の情報を効果的かつ効率的に結ぶ新たな体験を実現した。現在公開されているChatGPTに用いられている言語モデルよりも高速で精度が高く、機能性が豊かだという。OpenAIの言語モデルの能力をBingで最大限に引き出せるようにMicrosoftが最適化しており、その技術と独自の手法を同社はPrometheusモデルと呼んでいる。その組み合わせによって「関連性が高く、タイムリーで的を射た結果を安全性を向上させながら得ることができます」としている。また、Bingのコアとなる検索ランキングエンジンにもAIモデルを適用し、過去20年で最大の関連性の向上を実現した。
Web上には正しい情報だけが存在しているわけではなく、直接的に答えを提示するAIチャットボットの利用に対して、チャットボットがネット上の誤情報やフェイク情報などを伝える可能性への懸念も広がっている。MicrosoftはOpenAIとともに有害なコンテンツから保護するためのセーフガードを導入しており、MicrosoftのAIの原則に沿って、誤情報や偽情報、有害なコンテンツや差別的なコンテンツの拡散の防止、コンテンツのブロック、データの安全性の確保などに対処していくとしている。