ASUSの最新スマートフォン「ASUS Zenfone 9」の国内向け発売が決まりました。コンパクトでありながらハイエンドのスマートフォンとして注目の製品です。6軸ジンバルを活用した動画撮影など、その性能をチェックしていきましょう。
コンパクトで使いやすいサイズ
「Zenfone 9」の最大の特徴は何といってもそのコンパクトさ。ハイエンドSoCを搭載しながら、本体サイズは約H146.5×W68.1×D9.1mm/約169gとなっていて、片手でも操作しやすいサイズ感です。
その分、ディスプレイサイズは5.9型と控えめ。とはいえ、コンパクトすぎないので、普段遣いとしては使い勝手の良いサイズです。前モデルの「Zenfone 8」が5.9型で約H148×W68.5×D8.9mm/約169gだったので、高さが1.5mm/幅で0.4mmほど小さくなっています。幅の違いは誤差ぐらいですし、画面サイズや重さは変わらず、厚みは0.2mmほど厚くなっているので、トータルではほぼ同等サイズといった感じでしょうか。
他メーカーのスマートフォンと比較すると、「iPhone 14」が6.1型/幅71.5mmなので「Zenfone 9」が少し小さく、「iPhone 13 mini」は5.4型/幅64.2mmなので少し「Zenfone 9」が大きいといった感じです。縦に細長い「Xperia 5 IV」だと幅が67mmなので少し「Zenfone 9」のほうが小さいですが、高さは156mmなので短く、重さは3gほど軽量です。
このサイズだと隅々まで指が届きやすく、普段のシーンだと快適に使えます。大画面のほうが使いやすい動画やゲーム、電子書籍などのエンターテインメント系の用途には少し物足りない画面サイズですが、日常的には使いやすいでしょう。
全体的にフラットなデザインで、背面は大型のレンズが2つ。ちょっと未来のメカ的なロゴなどがプリントされています。背面の素材は新素材でざらつきがあって、堅いのですが押し込むと反発するような柔らかさのようなものも感じる不思議な手触りです。全体的にデザインはかっこよくまとまっていると感じました。
高いパフォーマンスと使い勝手を高める工夫
ハイエンドにふさわしく、SoCはSnapdragon 8+ Gen 1を搭載。最新のハイエンドSoCであり、パフォーマンスは既存製品でも十分に発揮されています。
ベンチマークテストをしてみると、それぞれスペックはかなり高く、同じSoCを搭載しているGalaxy Z Flip4と比較しても同等クラス。3D性能を計測するGFXBenchの性能がかなり高いのですが、ASUSによると、冷却性能を高めるなどして他社よりもパフォーマンスが向上しているといいます。
ベンチマークテスト | Zenfone 9 | Galaxy Z Flip4 | |
---|---|---|---|
3Dmark | Wild Life Extreme | 2,811 | 2,848 |
GeekBench | Single-Core | 1,307 | 1,318 |
Multi-Core | 4,327 | 4,173 | |
GFXBench | マンハッタン3.1 | 7,117 | 5,568 |
マンハッタン3.1オフスクリーン | 9,200 | 6,042 | |
Aztec Ruins OpenGL High Tier | 4,263 | 2,107 | |
Aztec Ruins Vulkan High Tier | 3,396 | 2,356 | |
GeekBench ML | CPU | 573 | 514 |
GPU | 2,282 | 2,125 | |
NNAPI | 3,274 | 2,821 |
使い勝手を高める機能としては、電源ボタン一体型の指紋センサーを使った「ZenTouch」が新たな機能として搭載されます。
これは指紋センサーを上下にスワイプするなどして特定の機能を実行するという機能です。画面オフから電源ボタン2回押しでカメラが起動する……というのは一般的なショートカットですが、「Zenfone 9」ではさらにカスタマイズが可能。
Googleアシスタントの起動や任意のアプリの起動、Wi-Fiなどの設定、スクリーンショットや懐中電灯、電卓といったシステム機能の利用など、かなり幅広い設定が可能です。加えて、電源ボタン長押しにも同様に割り当てが可能。個人的には長押しにカメラを割り当てています。
指紋センサーには、センサーに触れたら指紋認識をして解除するか、ボタンを押すと初めて認識をするという2つの方式も選択できます。触れただけの方が解除しやすいのですが、誤解除も多くなるので、選択できるというのはありがたいです。
2回押しも長押しも、指紋センサーに登録した指を使えば、同時に指紋センサーも動作してロック解除されます。「長押し(2回押し)でカメラを起動すると同時にロック解除」という動作になるので、とてもスムーズです。
スワイプに機能を登録できる点もメリット。登録できるのは、Androidの通知領域を表示する/Webページやアプリの更新操作をする/Webページの先頭・最後に移動する/メディアの早送り・早戻しや再生・一時停止をするといった操作で、いずれかひとつを選択する。複数を割り当てて切り替えられると良いのですが、いずれかを選ぶかはちょっと悩ましいところといえます。
画面の端から内側にスワイプすると表示される「エッジツール」も搭載。ランチャーとして動作し、任意のアプリを登録しておけばどの画面からもアプリを起動できます。よく使うアプリを登録しておくといいでしょう。
個人的には、電源ボタン2回押しに一番よく使うコード決済アプリ、長押しにカメラ、エッジツールにSNSやブラウザ、2番目以降に使うコード決済アプリを登録しておくというのがよさそうに感じています。
ジンバルでぬるっと動くカメラ
背面にある大型のカメラはデュアルカメラで、上がメインの広角カメラ、下が超広角カメラ。広角カメラは5,000万画素のソニーIMX766センサーを搭載。ピクセルビニングによって1,250万画素で記録されます。ピクセルピッチは2μm、レンズのF値はF1.9。
超広角カメラは1,200万画素のソニーIMX363センサーを搭載。ピクセルピッチは1.4μmで、レンズのF値はF2.2です。
描写は良好で、他社と比較しても問題ないレベル。やや線は太い印象ですが、適切なシャープネスと色再現で、見たままの描写。動作も機敏で、設定で2回押しや長押しからカメラを起動して撮影するという一連の流れも快適です。
「Zenfone 9」のカメラで最大の特徴となるのが「6軸ジンバル」を内蔵する点。ジンバルといえば、カメラやスマホに外付けして、主に動画撮影時のブレを抑える機器ですが、それと同等の機能をスマートフォンに内蔵しています。
もちろん、その効果は専用機には劣りますが、ブレを検出してカメラモジュール自体を動かすことでブレを抑えることができます。ピッチ/ヨー/ロールの6軸の手ブレに対応しています。
通常、カメラの手ブレ補正(OIS)はレンズユニット内の一部のレンズを動かす光学式かセンサー自体を動かすセンサーシフト式の2種類で、光学式の場合は2軸にしか対応しません。6軸ジンバルでは回転方向などのブレにも対応するのがメリットですが、カメラモジュール全体を動かすため、撮影時のライブビューの時点からぬるっとした表示で手ブレ補正が効いているのが分かります。
カメラモジュール自体を動かすため、静止画の細かい手ブレにはちょっと弱いのではないかという懸念もありますが、基本的にはモジュールがゆっくりと動くことで細かいブレがしづらくなっているようです。
撮影倍率は基本的にメインカメラの1倍と超広角カメラの0.6倍を切り替える形ですが、デジタルズーム2倍のみ、アイコンが用意されています。デジタルズームとして、2倍ぐらいであれば画質の劣化は最小限と言うことかもしれませんが、劣化しているのは確かです。デジタルズームは最大8倍まで対応します。
注意が必要なのは、ジンバルを内蔵しているのはメインの広角カメラだけという点。超広角カメラではジンバルによる手ブレ補正効果を得ることはできません。
ジンバル内蔵による動画撮影時の手ブレ補正はやはり魅力です。ただ、ジンバルを使った手ブレ補正でも電子式手ブレ補正(EIS)を併用しているのか、手ブレ補正オフの時よりも画角が狭くなります。さらにより強力な手ブレ補正「HyperSteady」をオンにするともっと画角が狭くなります。
ジンバルの補正効果もなかなか良好で、その場でパンをするといった動きであれば効果的ですし、歩くだけでも効果は分かります。走るようなシーンではHyperSteadyをオンにするといいでしょう。ただ、時折画面が急にガクッと動く補正ミスが発生するようでした。
とはいえ、ハードウェアによる補正なので、画質設定などを問わず最大8K24fpsの撮影まで対応できるというのは強みです。
また、この手ブレ補正を生かした機能として「ライトトレイル」機能が新搭載されています。これは、長時間露光による写真効果を疑似的に実現する機能で、車のテールランプなどを流して光の川のように表現したり、滝の流れをシルクのように表現したり、星の動きを線のように表現する、といった具合です。
基本的には数秒の撮影時間でコントロールしますが、実際のライトトレイルの働きとしては連写合成のようです。ジンバルでブレを補正して合成処理をしているのだろうと思われますが、それだけに手持ちでも数秒間の撮影ができるのが強みです。
「Zenfone 9」はPROモードを利用するとシャッタースピードをコントロールできるので、それを使えば長時間露光の撮影はできるのですが、さすがにジンバル内蔵でも数秒のシャッタースピードの手ブレを抑えることはできません。ライトトレイルなら手持ちもできますし、露出コントロールも簡単なので、手軽に撮影ができるのがメリットです。手軽で面白く、色々なシーンで活用できるいい機能です。
コンパクトでもハイエンドが嬉しい
「Zenfone 9」は、手軽に片手で扱えるコンパクトさながら、性能はハイエンドという点が魅力の端末です。大画面端末は使いやすいのですが、操作面では不便なところもあり、それに対して扱いやすいのがメリットです。個人的には(「Galaxy Z Fold」シリーズを持っているので)、大画面端末とセットで使うと便利だと思いました。
カメラはジンバル内臓が特徴で、ASUSらしいハードウェアの独自色を打ち出しています。コンパクトな分、望遠カメラがない、ワイヤレス充電機能がないなど一部のデメリットもありますが、防水防塵、FeliCaもサポートして隙のない製品になっています。