アップルが、iPad用のプログラミングアプリ「Swift Playgrounds」をアップデートし、内容を大幅に強化した「Swift Playgrounds 4」を公開しました。これまでは「楽しく学べる子ども向けのプログラミング学習アプリ」といった入門者向けの内容でしたが、今回のバージョンではiPad上でiPhoneアプリを作り、さらにApp Storeで公開するための申請機能を新たに追加。iPadさえあればMacがなくてもアプリが作れるようになり、本格的なアプリ開発環境がグッと身近になりました。
テンプレートを書き換えて自分だけのアプリを作成できる
アップルのSwift Playgroundsは、Swiftのプログラミングが学べるiPad用の無料アプリとして、2016年に最初のバージョンが登場。フィールドにある宝石を手に入れるべく、Byteと呼ばれるゆるキャラを操るプログラムを作成する内容です。実際に自分でコードを書く必要はなく、画面に用意されたコードの一覧から正しいものを順番にタップしていくだけでよく、パズルのような感覚で子どもも楽しく学べる点で評価を得ました。
今回バージョンアップしたSwift Playgrounds 4では、実際にコードを書いてオリジナルのアプリを作成する実践的な機能を追加したのが特徴です。もちろん、いきなりゼロから作成するわけではなく、あらかじめ用意された「プロフィール」などアプリのテンプレートを基に、それをベースにソースコードの必要な部分を書き換えていくことでオリジナルアプリが作れるようにしています。テンプレートは「Appギャラリー」内に収められており、プロフィールのほかに「予定表」「水準器」「地震計」などが用意されています。
プロフィールは、自分の興味関心などをまとめて他人に伝えるのを目的としたアプリに仕上げる内容となっており、プロフィールの説明や自分の写真を追加したり、アイコンの絵柄や表記を変更するなどして仕上げていきます。左側にはソースコードのエディタが用意され、右側にはiPhoneで実行した際のプレビューが常時表示されます。ソースコードを修正すると、その内容がリアルタイムにプレビュー画面に反映されるので、「この部分をいじるとこう変わるんだな」と確認しながら進められるのが好ましいと感じました。
アプリが完成したら、画面上部の再生ボタンを押すとアプリがフル画面で起動します。iPhoneの画面を模したプレビューと比べると、iPad上ではレイアウトのスカスカ感が目立ってしまいますが、作成したアプリがiPadでしっかり動作するのを見るとうれしくなります。
作成したアプリをApp Storeで公開するための手続きも、Macを使わずiPad上でできるようになりました。ただし、アプリをApp Storeで公開するには、年間12,980円の登録料を支払ったうえでApple Developer Programに登録する必要があり、さらにアプリはアップルの厳しい審査を経て合格したものだけがApp Storeで公開されます。ハードルはかなり高めですが、それでも「iPadだけでiPhoneアプリの作成ができ、公開までの作業も進められる」というのは頼もしいと感じます。
いろいろ試してみて、作成したアプリをiPhoneに転送して実行する手段が用意されていないのが唯一残念に感じました。前述の通り、iPad上ならばフル画面で起動できますが、やはり「作ったアプリが自分のiPhoneで動いた!」という感動を味わいたいもの。また、作ったアプリをAirDropなどで友だちのiPhoneに転送し、試してもらって意見交換できるようになれば、さらによいアプリに磨き上げられるハズ。ぜひ、今後の改良に期待したいところです。
Swift Playgrounds 4は、iPadOS 15.2を導入したiPadすべてで利用できるので、現在店頭で購入できる現行モデルはもちろん、OSが対応していれば手持ちの旧世代iPadでも問題なく使えます。iPadは動画やWebブラウザー、ゲームなどコンテンツの消費に最適な端末として浸透していますが、これからはコンテンツを生み出すアプリ開発用の端末としても存在感が高まるかもしれません。iPadを持っている人は、一度試してみる価値はあります。