音楽ストリーミングサービスのTIDALは11月17日(米国時間)、 サービスプランを刷新して新たに無料プランを追加(米国のみ)。アーティストから不満の声が上がる音楽ストリーミングの収益分配問題に関して、ファンの支持をアーティストの収益につなげる"Direct-to-artist"ペイメントと"Fan-centered"ロイヤリティを発表した。

TIDALは2014年のサービス開始当初から高音質ストリーミングを提供していたが、AmazonやAppleが高音質配信を展開し、Spotifyも年内に開始する。TIDALの新しいプランは、それら後発の高音質配信に料金で競争するものになっている。

  • TIDAL Free (米国のみ):TIDALの全ての音楽カタログに無料でアクセス可能、最小限の広告が差し込まれる。
  • TIDAL HiFi: 9.99ドル/月。HiFiによる高音質配信。オフライン機能、対応するコネクテッド機器に直接音楽をストリーミングする「TIDAL Connect」、パーソナライズ機能の「My Activity」などを含む。
  • TIDAL HiFi Plus: 19.99ドル/月。TIDAL HiFiのサービスや機能に加えて、Dolby Atmos MusicやSony 360 Audioなどより没入感のあるオーディオ形式、スタジオ品質のMaster Quality Authenticated (MQA)へのアクセスを提供。"Direct-to-artist"ペイメントと"Fan-centered"ロイヤリティを通じて、加入者が好きなアーティストを支援できる。

CDやダウンロード配信では売れた枚数やダウンロード回数に応じてロイヤリティがアーティストに支払われるのに対して、音楽ストリーミングサービスの多くでは再生回数が直接ロイヤリティに反映されない。サービス全体の再生数におけるシェアに基づいたプロラタ方式が採用されており、大物アーティストや人気アーティストが占める割合が非常に大きくなる。そしてロイヤリティはレーベルなど音源の権利者に支払われ、そこから契約に応じてアーティストに分配される。不透明で公平性を欠き、多くのアーティストに正当な収益が届かない問題が指摘されていた。

"Direct-to-artist"ペイメントは、HiFi Plus加入者が支払っている料金の一部が、そのメンバーのストリーミング回数の多いアーティストに直接支払われる。加入者はアクティビティフィードを通じて、その支払いの流れを確認できる。これはストリーミングのロイヤリティとは別のアーティストへの支払いになる。

また、ロイヤリティについても、2022年からHiFi Plusサービスでは利用者のストリーミングアクティビティに基づいてロイヤリティを支払う("Fan-centered"ロイヤリティ)。それによって「ファンはお気に入りのアーティストの成功により大きな役割を果たすことができます」としている。

TIDALは起業家でもあるヒップホップアーティストのジェイ・Zが率いており、そのつながりでアリシア・キーズ、ビヨンセ、カニエ・ウエスト、ニッキー・ミナージュ、リアーナ、クリス・マーチン(コールドプレイ)といった数多くのアーティストが株主になって運営を支えている。他の音楽サービスに比べて、売り上げからのレーベルやアーティストへの分配率が高いと言われている。