プライバシー重視の声の高まりを受けて、ここのところ増加しつつあるのが、オンラインでのユーザ登録時などに用いる匿名のメールアドレスサービスだ。元のメールアドレスとは異なる、一時利用のためだけの独自メールアドレスを発行し、それを用いてオンラインでのユーザ登録を行うことで、漏洩や不正利用が行われても、元のメールアドレスを保護できるというものだ。
よく似た機能としてはGmailのエイリアス機能があるが、@の手前に「+任意の文字列」を追加するだけの単純な仕組みゆえ、元アドレスの割り出しは容易だ。それに対して最近は、OutlookやiCloudが身元を隠せる専用アドレスを用意しているほか、パスワードマネージャ「1Password」が「Fastmail」との連携で独自の匿名メールサービスを開始するなど、急速に一般化しつつある。
これらは既存の使い捨てメールアドレスサービスも巻き込んで、今後は勢力図が激変する可能性もある。今回はそれらサービスの中から、現時点で選択肢として有用な4つのサービスもしくは方法を、それらの特徴とともに紹介する。
その1:Outlookのエイリアス機能を使う
Outlookには独自のエイリアス機能が搭載されている(Officeのサポートページ)。ドメインは「outlook.jp」または「outlook.com」で、@の手前は自由に指定できるため、元アドレスを容易に推測できるGmailと異なり、身元を隠したメールアドレスが作成できる。このアドレスはMicrosoftアカウントへのログインにも使用できるほか、こちらをプライマリに設定し、元のアドレスのようにふるまうこともできる。
利用にあたっては、事前設定なしでいきなり使えるGmailのエイリアスと異なり、事前にMicrosoftアカウントの管理画面から作成しておく必要がある。作成できるエイリアスは最大10件で、パスワードはすべて共通となる。またすでに取得済みの(outlookドメインでない)メールアドレスをエイリアスとして追加することも可能だ。
その2:iCloudの「メールを非公開」機能を使う
Appleが、iCloud+に付属するサービスとしてiOS 15から提供している「メールを非公開」を使えば、ウェブサイトへのユーザ登録時などに、「iCloud.com」のドメインを持ったランダムなメールアドレスが作成される。これらはiCloudに登録された任意のメールアドレスに転送されるため、発信元を明かさずにメールをやりとりするのに適している。
iCloud+のサブスクリプションに登録している状態で、Safariからオンラインフォームにアクセスすると、自動的に新しいメールアドレスの作成画面が表示される。またiCloudの管理画面「メールを非公開」からも作成でき、こちらではメールアドレスの有効・無効を切り替えられるほか、利用先などを識別するためのメモを書き込むことも可能。メールアドレスの数に制限はない。
その3:1PasswordとFastmailによる「Masked Email」機能を使う
パスワードマネージャ「1Password」が新たに提供を開始した「Masked Email」は、ウェブメールサービス「Fastmail」との連携により、オンラインフォームへの登録時にランダムなFastmailのメールアドレスを発行するサービス。利用にあたっては両者にユーザ登録を行ったのち、両者のアカウントを接続する処理を実行すればよい。
メールアドレスはオンラインフォームへのアクセス時に自動発行されるほか、Fastmailの画面から「New Masked Email Address」をクリックすることでも発行でき、有効と無効を自由に切り替えられる。パスワードマネージャと連携するため汎用性は高く使い勝手も良好だが、「1Password」「Fastmail」ともに有料サービスゆえ、それぞれを新規で使い始めるにはややハードルが高い。
その4:一般的な使い捨てメールアドレスサービスを使う
「ゲリラメール」に代表される既存の使い捨てメールアドレスサービスは、身元を隠してのやりとりを前提に設計されており、種類も豊富だ。気をつけたいのは、利用にあたって個人のメールアドレスを登録しなくてはいけないサービスがあること。それ自体が不正利用されかねないので、運営元がはっきりしている(もしくは著名なオープンソースプロジェクトなどの)サービスを選ぶのが大原則だ。
機能はサービスごとにまちまちで、利用可能な時間は分単位から、ブラウザを閉じない限り継続して使えるものまで存在する。また転送機能を備えていたり、受信のみ対応していたりと、機能はサービスごとに大きく異なり、スマホアプリが用意されているサービスもある。以前紹介した記事「スマホからも使えて便利! 使い捨てメールアドレスサービス5選」も参考にしてほしい。