肩にかけて使う「ネックスピーカー」が人気です。耳をふさがないからヘッドホンのような圧迫感がなく、近所迷惑になるほどの大音量にはならず、ステレオシステムのように定位置に陣取る必要がないから気軽に聴ける――。パーソナルスピーカーという位置づけのデジタルガジェットです。

そのネックスピーカーでサラウンドを楽しみたい――というニーズは以前から存在しましたが、パナソニックがついに実現。バーチャルではなく4chのリアルサラウンド、しかもゲーム向けに“振り切った”仕様です。その「SC-GN01」の体験レポートをお届けします。SC-GN01は10月22日の発売予定、価格はオープン、推定市場価格は22,000円です。

  • パナソニックのゲーミングネックスピーカー「SC-GN01」

ネックスピーカーでリアルサラウンドを実現

現在、市場に存在するネックスピーカーは基本的にワイヤレス(Bluetooth接続)で、音楽再生を目的とした2ch・ステレオタイプがほとんど。だからリアルサラウンドは技術的に難しく、しかもBluetooth(A2DP接続)製品では、映像に比べて音声が遅れて届く遅延の問題が避けられませんでした。

しかし、このSC-GN01は着眼点が違います。ターゲットは「ゲーム」、しかもFPSを視野に入れたガチな仕様。接続はUSB Type-Aコネクタのワイヤードとなるものの、4ch(L+R+SL+SR)のサラウンドに対応、背後から迫りくる敵の足音を察知することができます。この4基のスピーカーでゲームフィールドに入り込んだような没入感を実現するゲーミングサラウンド環境「TRUE MAGESS」が、SC-GN01最大の特長です。

  • パソコンやゲーム機とUSBで接続し、肩にかけて使います

  • SC-GN01を体験するマイナビニュース・デジタルの林編集長。首にかけたSC-GN01の「収まり」はなかなかいい感じです。SC-GN01の本体サイズは約幅240×高さ46×奥行き209mm、重さは約244g

  • 本体底面にはゴム足を配置。ゲームプレイ中に体が揺れてもズレません

SC-GN01はUSBオーディオ機器であり、ゲーム機やパソコンからはUSB DACの一種として認識されます。内蔵のDACチップは非公開とのことですが、サポート機器として挙げられているWindows 10だけでなく、macOSでもドライバーを追加することなく動作するそうです(正式な対応OSはWindows 11のみ)。なお、3.5mmアナログステレオ端子も装備されているので、USBオーディオ非対応の製品でも楽しめます。

2chのオーディオ信号を4chにアップコンバートする機構も搭載。さらに、独自のデジタル処理とゲームに適したチューニングを施すことにより、一般的なステレオ音声を入力しても4ch・サラウンドならではの広がりと奥行き、敵キャラの位置や移動の様子を感じられるというわけです。

  • アナログ音声入力の場合、本体直付けのUSBケーブルは給電用として機能。計2本のケーブルを使うことになります(パナソニックのWebサイトから)

用意されたサウンドモードは、ゲーム系が3種(RPG・FPS・ボイス強調)と、ミュージック、シネマ、ステレオ・3chの計6種。ゲームプレイ中でも本体側面のボタンで切り替えることができ、モード切り替え後は音声ガイドで知らせてくれます。エコーキャンセルマイクを内蔵し、ゲーム効果音を気にせずボイスチャットできるところもゲーミングデバイスならではの配慮といえそうです。

なお、5.1chのオーディオ信号を入力した場合どうなるか訊ねたところ、フロント2基(L+R)とリア2基(SL+SR)はそのまま出力され、前方正面とサブウーファーの成分は4基のスピーカーへ適切に割り振られるとのこと。一般的に小型スピーカーで80Hz以下の低音を再生するのは困難ですが、欠落した(低域)信号の倍音を生成して音声信号に付加することで擬似的に知覚可能にする「H.BASS」技術により、迫力ある低音を体感できるとのこと。これはもう、実際に聴いてみるしかありません!

  • 本体右側面には、ボリュームボタンとミュートボタンが並びます

  • 本体右側面には、マイクミュートボタンとサウンドモード切替ボタン。外部入力端子も用意しています

ファイナルファンタジーXIV サウンドチームとガチコラボ

SC-GN01の開発背景には、ゲームサウンドの進化があるのだそう。5.1chどころか7.1chのゲームが珍しくない中、限られた住空間でも存分にゲームを楽しんでもらいたい、装着感の悩みや家族の呼び掛けが聞こえないなどの悩みを解決したい、そんな思いからプロジェクトがスタートしたといいます。

開発でタッグを組んだのは、ファイナルファンタジーシリーズで知られるスクウェア・エニックス。2018年発売のシアターバー「SC-HTB01」でコラボした過去があり、その流れで今回のプロジェクトにつながったそうです。

チームメンバーとして説明会に参加したのは、ファイナルファンタジーXIV サウンドディレクターの祖堅正慶さん、サウンドデザイナーの絹谷剛さん。完全にプレーヤー目線で取り組み、自分たちの情熱をサウンドモードに注ぎ込んだとのことで、FPSモードに関しては「対戦に勝ち、ランクを上げる」(絹谷さん)ことを目的に、定位をドライに、ソリッドにすることを追求したと話します。

【動画】パナソニックの公式動画(音声が流れます。ご注意ください)

彼らがゲーマーとして特に注力したのは「裏取り」とのこと。「2ch・ステレオでは自分で聞き取るしかありませんが、4ch・リアルサラウンドであれば現実に背後から聞こえます。実際に、ゲーム中で(敵が背後から接近して)首がヒヤリとするのを感じました。ホラーゲームをプレイしたら怖いだろうな……」(絹谷さん)といいますから、作り込みに対する温度感が伝わってきます。

試聴タイムでは、ファイナルファンタジーXIVの動画コンテンツ(Windows PCで再生、音源は5.1ch)を聴くことができました。ボスキャラが登場するシーン、周りから話しかけられるシーンなどなど、確かに、包み込まれるかのような音場を感じます。

  • リアルサラウンドの効果を感じたシーン。石像の動きにあわせて水の音が移動します

特にリアルサラウンドの効果を感じたのは、噴水のシーン。大量の水が流れ落ちる瓶を抱えた石像が手前に移動するのですが、遠くに聞こえていた音がしだいに近づき、最後には首の裏側に回り込むサウンドエフェクトを実感できました。確かにリアルサラウンド、得られる方向感・移動感はバーチャルサラウンドのそれとは別モノです。

爆発音の量感もなかなかのレベル。本体の幅からして、内蔵されているスピーカーユニットは小さなものですが、低音に存在感があります。今回は試せませんでしたが、PCのWEBブラウザで閲覧するNetflixなど動画ストリーミングサービスの映画も案外イケるのでは? と感じました。

ところで、SC-GN01をベースとした「ファイナルファンタジーXIV」とのコラボレーションモデルも発売されるとのこと。専用デザインの本体・パッケージが用意されるそうですから、FFファンは乞うご期待。ゲームの中のキーや素材以上のマストアイテムになるかもしれませんよ。

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