リコーイメージングが、新開発のGRレンズを搭載したコンパクトデジタルカメラ「RICOH GR IIIx」を発表しました。大きな特徴のひとつが、歴代のGRシリーズとは異なり、35mm判換算で40mm相当のレンズを採用した点。GRでは28mmレンズが定番となっていただけに、変更した狙いはどこにあるのでしょう? そして気になる使い心地は? 担当者と写真家がGR IIIxについて熱く語った9月8日開催のオンラインイベント「GR NIGHT 2021」の様子をリポートしたいと思います。
GR IIIxの価格はオープンで、予想実売価格は13万円前後となる見込み。10月上旬より販売します。
RICOH GR IIIxの概要
イベントでは冒頭、リコーイメージングの岩崎徹也氏が登壇して新製品の概要を説明しました。「GRといえば28mmのイメージが強く、フィルムカメラ時代のGR1(1996年発売)から、ほとんどの機種で35mm判換算で28mmのレンズを採用してきました。今回、40mmと聞いて驚いた人も多かったと思います」と岩崎氏。
2021年は、GR1誕生から25周年の節目。“最強のスナップシューター”にこだわり続け、高画質、携帯性、連写性、深化というGRのコンセプトは変えずに、しかし「スナップ写真の表現を拡大したいという思い」(岩崎氏)でGR IIIxを企画した、と説明します。
では、なぜ40mmだったのでしょう。「40mmという焦点距離は、被写体との位置関係を変えることで定番の焦点距離である35mmや50mmのように使える、汎用性の高い画角といわれます。28mmと比べると被写界深度が浅くなるので、大切なモノを引き立たせる撮り方もできます」と岩崎氏。GR IIIとの組み合わせで、スナップの表現や楽しみ方を広げられるとアピールしました。
そのうえで、「これまでGR DIGITAL、GR II、GR IIIを使ってきた人は、被写体に近づいて撮っていたかもしれません。40mmになったときに、ちょっと離れないといけない、と感じるでしょう。位置関係、アングル、構図などが変わってくる。だから、新しい視座をご自身で探してもらう、このあたりもGR IIIxの新たな楽しみ方になりそうです」(岩崎氏)。ちなみに、GR IIIxの「x」には、望遠側に焦点距離を伸ばしたという意味のExtendedに、表現の領域を拡大(Extended)したという思いも込めている、と説明しました。
ここでいくつかの作例を紹介した岩崎氏は、「平面の写真でも周辺まで解像度を高く表現できる。近距離のモノを撮っても背景のボケ味がなだらかで自然ですし、点光源の玉ボケもきれいに撮れます」と解説します。
続いて、カメラの特徴については「焦点距離26.1mm F2.8の新規GRレンズ、24.2メガのAPS-Cサイズイメージセンサー、GR ENGINE VI、アクセラレーターユニット、3軸・4段の手ぶれ補正機構が一体となって高画質を実現しています」と説明。連写性については、像面位相差検出とコントラスト検出のハイブリッド方式AF、電源オンから約0.8秒の高速起動といった側面を紹介し、「撮りたいと思ったときにすぐに撮れる秘訣です」としました。
深化については、いくつかの作例とともに紹介しました。はじめに「プログラムラインに深度優先(深い)の追加」について。従来のプログラムライン(開放優先)に追加する機能で、岩崎氏は「40mmになると深度が浅くなる。すると、どうしてもピントを気にしてしまいます。そこでパンフォーカス気味に、絞りを絞った状態で使える機能です」と紹介。実際、フォーカスをスナップにして、距離は2.5mに置きピン、シャッタースピードの低速限界を1/100で撮ったところ、起動してすぐに(AFせずに)サクサク撮れた、と報告しました。
このほかにも、再生メニューのトリミングに画像回転が追加されること、JPEG画像調整にモノトーン化が追加されること、RAW現像がしやすくなったこと、Image Syncがリサイズ転送に対応したこと、などを紹介。これらの新機能により「カメラが1台あれば、撮った場所で調整して、画像を作って、Image Syncに転送してスマートフォンでSNSに写真をアップする、という作業が簡単に行えるわけです」とまとめました。
最後はアクセサリーについて。GR IIIx専用のテレコンバージョンレンズ「GT-2」(別売)では、装着するとクロップ機能との併用により焦点距離が75mm相当になる仕掛けです。さらに2段クロップを利用すると107mm相当に。岩崎氏は「GR IIIには専用のワイドコンバージョンレンズGW-4があるので、GR IIIとGR IIIxの2モデルで21mmから107mmまで網羅できることになります」とアピールしました。
パッと見では、見分けがつきづらいほど似ているGR IIIとGR IIIx。2台持ちのユーザーに向けて、リングキャップ(ダークグレー、ブラック、ブロンズ)の購入をオススメするとともに、GR IIIxを購入して製品登録とアンケートに回答したユーザーに先着で提供される「オリジナルPURPLEリングキャップ」についても紹介しました。
写真家が気に入ったポイントは?
後半は、3名の写真家がゲストで登壇し、作例を交えながらGR IIIxの魅力を語りました。はじめに、モデレータを務めたインプレスの福島晃氏は「驚いたのは40mmの画角になったこと。GRといえば(GR21を除いて)すべて28mmだった。それがGRのアイデンティティであり、僕たちもそこを愛してきた。ちょっと衝撃的でしたね」と切り出しました。
赤城氏は「28mmではゆがまないように、余計なものが入らないように、と考えてしまう。また28mmだと『もっと寄ってやろう』と気張っちゃう。でも、40mmなら自然に撮れる。広すぎず、狭すぎずでちょうど良い画角なので、写真の収まりも良くなる。28mmに比べて、ボケ味も大きい。また、40mmはモノの部分を切り取りたくなる画角でもあります。全体像を撮るのではなく、どこが面白かったのか、人に紹介する写真を撮るのにちょうど良いのでは」と話します。
中藤氏は「北海道で撮影してきました。40mmは風景の一部を切り取るイメージですね。旅行先では荷物は軽くして、いっぱい歩きたいじゃないですか。今回はGR IIIとGR IIIxの2台を持ち歩きましたが、まったく負担にならなかった。手と目の延長で、バシバシ切り取れた。GR IIIxはストリートスナップのカメラであり、旅のカメラ。40mmの画角も3日で馴染みました」。
ハービー・山口氏は「どこを切り取るか、が問われるカメラです。28mmだと、踏み込みが足りないと散漫な写真になってしまうときがある。そういう面でも、40mmは使いやすいと感じました」。ポートレートでは、撮られることに気がついていない素の表情を撮れる、街中でも撮りたいときに片手ですぐ撮れる、と山口氏。
モデレータの福島氏も「私もポートレートを撮りたいと思って、過去に28mmのGR1を手にしました。でも、そこまで被写体に肉薄できなかった。28mmの良さは、被写体にどれだけ近づけるかにありますが、人物だと近づきにくいときもある。これが40mmになると、ちょうど良い距離感になる。実際、とても撮りやすかったです」と応じていました。