東プレのREALFORCEといえば、本邦屈指のハイエンドキーボード。静電容量無接点方式による独特な打鍵感と耐久性は多くの“職人系ユーザー”に支持され、Mac向けモデルも発売されている。

そのMac向けモデル「REALFORCE for Mac」が、PFUダイレクト限定仕様「PFU Limited Edition」を発売したという。これは実際に試してみねばならない。

  • REALFORCE for Mac PFU Limited Editionの実機をPFUからお借りしたので、簡単なファーストインプレッションをお届け。LEDプレート部分は専用のカーボン調デザインになっている

「静電容量無接点スイッチ」をおさらい

REALFORCEは、業務用キーボードで知られる東プレが2001年に発売したコンシューマ向けキーボードシリーズ。コンシューマ向けとはいえ、業務用と同様に静電容量無接点方式を採用、さらに東プレ独自の機能を搭載することで孤高の座を確立している。

そのREALFORCEで使われている静電容量無接点方式スイッチには、物理的な接点が存在しない。円錐スプリング(コニックリング)を押し下げて変形するときの静電容量の変化を検出、一定値を超えたとき入力として認識されるしくみなのだ。耐久性・信頼性に優れるうえ、なめらかなキータッチ、一度押したつもりが複数回押した状態になる「チャタリング」が発生しないという利点もある。

製造コストなどの理由から本方式を採用するのはハイエンドキーボードのみ。最近は搭載製品もちょこちょこ増えてきたが、やはり東プレ「REALFORCE」とPFU「Happy Hacking Keyboard(HHKB)」が代表格といえるだろう。

REALFORCEには、東プレ独自の機構「アクチュエーションポイントチェンジャー(APC)」が用意される。キースイッチの反応位置を1.5 / 2.2 / 3.0mmの3段階から選択すれば、タイピングのクセに応じた押しやすさを追求できるし、反応位置を浅くすれば入力スピードを早く、深くすればタイプミスを軽減できる。

  • REALFORCE for Mac テンキーレス PFU Limited Edition(英語配列モデル)

  • 裏面にはチルト足と3方向のUSBケーブル取り出し口がある

英語・日本語配列あり。「for Mac」の機能は?

そんなREALFORCEのPFUダイレクト専用モデルが、「PFU Limited Edition」の名を冠した製品群だ。2018年の第1弾でWindows対応モデルが販売されたが、ここに紹介する「REALFORCE for Mac テンキーレス PFU Limited Edition」(英語配列モデル)は、2019年末に発売したMac向けREALFORCEテンキーレスモデル・REALFORCE TKL for Macをベースにしており、PFUだけの意匠がくわえられている。

ラインナップは4モデル、英語配列(87キー)と日本語配列(91キー)にそれぞれ白(スーパーホワイト+シルバー)と黒(ブラック+シルバー)のカラーバリエーションが用意される。サイズや重量、ステップスカルプチャーのキー構造といった仕様の大半は共通だが、キー荷重はHHKBと同じ45gのみ。ベースの「REALFORCE TKL for Mac」にはAPC省略モデルもラインナップされるが、今回PFUが発売する4モデルはいずれもAPCを採用している。

「for Mac」ならではの機能としては、macOSに最適化されたFunctionキー機能 / キートップと専用LEDプレート、画面の明るさ・音量などのマルチメディア機能をワンタッチで切り替えできる「Function機能切り替えキー」、CapsLockやCommandなど修飾キーの入れ替えなどカスタマイズができる専用アプリ「REALFORCEソフトウェア」が用意される。

  • キー各列に段差を設けた「ステップスカルプチャー」を採用

  • ボディデザインは全体的にスクエアな印象だ

絶妙なキータッチと高度なカスタマイズ性が魅力

箱から出していざMacBook Proに接続……と思いきや、あるアクセサリが不可欠なことに気付く。「USB Type-C→Type-A変換アダプタ」だ。

「REALFORCE for Mac テンキーレス PFU Limited Edition」からはPC接続用にUSB Type-A端子のケーブルが1本出るのみ。Type-Cポートしか装備しないMacBook / MacBook Proには直接接続できない(据え置きのiMacやMac Pro、Mac miniで使え、と言われたらそれまでだが……)。

いきなり出鼻をくじかれたが、Macに接続完了して「キーボード設定アシスタント」でキーボード種を選択すればセットアップ完了。あとは、静電容量無接点方式&APCで快適タイピング三昧だ。

  • MacBook Proに接続、Magic Trackpadと組み合わせて試用した

キータッチは適度に軽く、心地いい。硬すぎず柔らかすぎず、強めに押し込んでも指先への負担は少ない。タイプ音も穏やかで、カチャカチャというよりはスコスコ、派手めに叩いたときの音もターンではなくコツッ、という感じ。かといって糠に釘のような感触ではなく、控えめながら指先に確かな打鍵感が伝わる。

同じ静電容量無接点方式を採用する「HHKB HYBRID Type-S」と比較すると、キータッチはやや軽めな印象。キー荷重は45gと変わらないが、フィーリングが微妙に異なる。HHKBのほうがやや硬く、叩いたときの音も“パシッ”に近い。HHKBとよく似ているが、より静かでスムーズな味付けのキーボードというところだろうか。

  • 右Controlキー横には「Function機能切り替えキー」が配置される

  • ControlとCapsLockの入れ替えなどカスタマイズは「REALFORCEソフトェア」を使う

まったく異なるのがカスタマイズ性。ダウンロード提供されるアプリ「REALFORCEソフトウェア」を利用すると、APCによるキースイッチの反応位置を3段階に、しかもキー単位で調整できる。設定はプロファイルとして保存 / 読み取りできるので、左手に激しく手クセがある身としてはありがたい。CapsLockなどのLEDインジケータの色と輝度を変更できることも、ここまでやるかという感じだ。

  • APCによるキースイッチの反応位置を3段階に、しかもキー単位で調整できる

要望があるとすれば、Type-C対応だろうか。MacBook Proなどノート型の場合、スタンドに乗せることになるだろうから、変換アダプタは使いたくない。また、本体角度を変えられるチルト切り替え可能だが、3段階対応のHHKBのように細かく調整したいところ。

Macユーザーの場合、“職人向け”キーボードは同じPFUのHHKBとの二択になるのかもしれないが、それは個人の好みだ。どちらかといえば「剛」のHHKBと、どちらかといえば「柔」のREALFORCE、大いに迷って決めてほしい。

  • キーキャップの下に設置してストロークを浅くできるキースペーサーが2枚(2mm / 3mm)付属する