楽天は9月6日、携帯キャリア事業(MNO)についての記者発表会を開催しました。楽天の携帯キャリア事業に関しては、かねてから「2019年10月にスタートする」と説明していたものの、総務省からは「基地局の整備の遅れ」について指導があり、直近では一部のメディアから「サービス開始は2020年春になるのでは?」「利用者を5,000人に絞った無料のサービスでスモールスタートするのでは?」などと報じられていました。実際のところはどうなるのでしょうか? 業界関係者の注目が集まりました。

  • 楽天は9月6日、携帯キャリア事業についての記者発表会を開催しました

"世界初"を強調したプレゼン

冒頭、登壇した楽天の三木谷浩史社長は「昨年の4月に総務省から電波の認可を受け、周波数を割り当てられた。1年半でここまでやってきました」と、これまでの取り組みを振り返ります。当初、楽天が目指していたのは従来型のネットワークをシンプルに作り、安価で使いやすいサービスを顧客に提供すること。しかし、プロジェクトを開始してから「やるからには新しいことをやりたい」という想いに変わったと説明します。

  • 楽天 代表取締役兼社長の三木谷浩史氏

「世界初の、完全仮想化によるクラウドネイティブの携帯ネットワークの構築を目指しました。ネットワークにおける革命を起こすぞ、という意気込み。フルクラウドで携帯電話のネットワークを構築するというのは、これまで世界の携帯キャリア、ネットワーク技術者が夢に見てきたこと。いわば、携帯業界におけるアポロ計画といってもよい。非常にチャレンジングなため、私のもとにはご丁寧にも『不可能だ』と指摘してくださる方もたくさんいました。これを、10月にいよいよ日本でスタートさせます。600以上あるネットワークの専用機器をフルソフトウェア化することで、その呪縛から解放される。通信はより安く、大容量に、高速に、低遅延で提供できます」と三木谷社長。次第に言葉に熱がこもってくるのが伝わります。

  • ネットワークの専用機の呪縛から解放される、と説明

三木谷社長は、楽天の通信事業のポイントについて矢継ぎ早に説明していきました。「世界に先駆けて、モバイルエッジコンピューティングを実用化します。ネットワークは、単純につながるだけでなく、人工知能(AI)の機能を付加させたり、大きな計算処理も行えるようになります」。

  • ネットワークを機能化させていく

新しいコミュニケーションを実現する「Link」と呼ばれるツールも紹介。通話、データ通信、キャリアサービスなどの垣根を壊して、すべてのサービスをLinkを中心に提供していく、としています。

  • 新しいコミュニケーションを実現する「Link」

もちろん、楽天グループとのシナジーは徹底的に追求していく方針です。三木谷社長は「私たちは、国内で1億人以上の会員を抱えています。楽天グループのすべてのサービスとつなげ、支払いをポイントで行えるようにすることで、顧客獲得コストは最小化できます」とアピールします。

  • 楽天グループとのシナジーは徹底的に追求していきます

そして、ストレスフリーなサインアップ体験として、SIMフリー端末に関してはAPN設定を不要にします。SIMカードを入れるだけで利用を開始できる環境を整えていくと説明しました。

いつ始まるの?

サービスの開始時期はどうなるのでしょうか? これについて、三木谷社長は「サービスインが半年遅れるのでは、という報道がありましたが、遅れてはいません。革命的な新しいネットワークですから、我々はもちろん安定して稼働することを確信していますが、まずはそれを確認します」と説明。確認方法として、2019年10月1日から2020年3月31日まで、5,000人前後の一般ユーザーに無料でサービスを使用してもらう「無料サポータープログラム」を開始する考えを明らかにしました。

  • 2019年10月1日から「無料サポータープログラム」を開始します。受付は10月1日から7日まで。多数の場合は抽選して、案内のメールを送るとしています

対象者は東京23区、大阪市、名古屋市、神戸市に在住の満18歳以上。新規契約およびMNPのユーザーが対象です。国内通話、データ通信、国際通話、国際ローミング(データ通信)、SMSを無制限で0円で利用できるという内容で、要件として「品質テスト」「品質アンケート」に回答すること、対応製品を利用すること、などが定められています。

  • 無料サポータープログラムの概要

「ネットワークの安定稼働が確認できたあと、そのタイミングは1か月後かもしれないし、3か月後かもしれませんが、可及的速やかに一般ユーザーのネット申し込みの受付を開始します。その後、リアル店舗でも順次展開していきます」と説明。

さらに「基地局の設置が遅れているのではないか、という報道もありました。世界初の革命的なネットワーク。技術ハードルがチャレンジングだったわけですが、不可能と言われていたものを世界で初めて実現しました。当初は基地局の建設が遅れていましたが、順調に回復しています」(三木谷社長)。基地局をネットワークにつなぐオペレーションで多少の課題はあるものの、現在すでに解決しており、9月中に当初の予定通りサービスエリアでローンチできる見込みと説明しました。

  • 2019年10月時点でのカバーエリア。都心部では楽天のネットワークを、地方ではKDDIのネットワークを利用します

料金プランはどうなる?

気になるのが料金プラン。質疑応答で記者団から聞かれると、「料金は他社さんとの競争の話。楽天のプランを見てから考える、と話しているキャリアさんもあります。しかし端的に言うと、我々のサービスは他社さんに真似できないほど安くなると思っています」と価格競争に自信を見せます。契約期間の縛りなし、最低利用期間なし、違約金なしのサービスになる見込みです。

  • 会場に展示されていた(左から)4G第1世代、4G第2世代、5G(28GHz、3.7GHz)のアンテナ

「携帯電話メーカーさんの電話を販売するだけでなく、独自の端末も作っています」と明かした三木谷社長。この日、片手で操作できるシンプルUIが目を引く「Rakuten Mini」を発表しました。10月から提供していきたい考えのようです。

  • 片手で操作できるシンプルUIの「Rakuten Mini」

  • 楽天Linkが使いやすいようにアレンジされています