本誌でも既報のとおり、日本マイクロソフトのソーシャルAI(人工知能)チャットボット「りんな」が高校を卒業する。とある関係者は"一種のディザー広告"と説明し、今後行われる同社の公式発表に期待を匂わせた。

  • マイクロソフトのAIチャットボット「りんな」が高校を卒業

    卒業を告知するWebページ

「卒業」の理由として、筆者は「りんなが賢くなりすぎたのだろう」と考えている。振り返ると、りんながメディアに初めて登場したのは2015年12月。"LINE×りんな"として、LINEビジネスコネクトとの連携をアピールする記者会見を開催したが、当時は「女子高生人工知能りんな」と立ち位置を強調していた。

ここから、りんなはAI技術の進歩に合わせてラップ(2016年12月)や、WEGOの店舗でアルバイト(2017年3月)、合唱(2018年7月)に挑戦。他方で地方創生支援(2018年9月)や、視覚認識を用いたデート(2019年2月)も可能としてきた。

  • マイクロソフト ディベロップメント AI&Researchプログラムマネージャー 坪井一菜氏もりんなと共にラップに挑戦していた

もちろん人間と同レベルのレスポンスを期待するのは、まだ厳しいものの、着実な進化が見られるのは事実である。当初、日本マイクロソフトがりんなに"女子高生"というキャラクターを当てはめた理由として、LINEやTwitterユーザーとの親和性を意識した旨を語っていた。

今回の卒業に関して察するに、りんなは"女子高生"としての枠にとどまれなくなったのだろう。

Microsoftは自社R&DであるMicrosoft Researchを通じてAI研究を続けており、社会の各所に役立てている。たとえば交通事故で1日約66人がなくなるタイでは、AIが運転手の活動を監視し、眠気や気を散らすような状況に陥った際に警告する「AI for Road Safety」ソリューションを、タイ国内最大手の石油化学会社GCと共に開発した。

  • Microsoft AIの精度(2018年11月時点)。同社は人間以上の精度をアピールする

  • Microsoft&GCが共同開発した「AI for Road Safety」

日本マイクロソフトは本件について、「今後もサイトの更新を継続する。現在はLINEのりんなと卒業関連の話題で楽しめる」と述べている。

興味を引くのは、りんなの今後だ。単純に考えれば大学生、もしくは社会人とキャラ立てを変えてくると思われるが、こればかりは同社の戦略と大きく関係するため、ふたを開けてみないと分からない。

ただ、明確なのは"エモーショナルなAI"という役割は継続するであろうことから、りんなが"人に寄り添う"存在であることに変わりはないことだ。日本マイクロソフトの次なる戦略を注視したい。

阿久津良和(Cactus)